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謎解きに誘われて  作者: 美雪
第三章 愛の謎
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42 オリエンテーリング



 オリエンテーリングのチェックポイントは庭園の各所に散らばっている。


 簡単な地図はもらえるが、どこにチェックポイントが設置されているかはわからない。


 初参加だけに、前回の場所を参考にすることもできない。


 ミリアム、モード、リチャード、レイモンドは手渡された地図を睨むことになった。


「ミリアムの出番よ!」


 モードは期待の眼差しをミリアムに向けた。


「チェックポイントの位置を推理して!」

「九カ所あるというだけでは……他の手がかりがほしいです」

「兄上、どうする?」

「庭園を九つのエリアに分ける」


 オリエンテーリングが行われている庭園を横三列、縦三列の九エリアに分割したあと、左上から順番に番号を振る。


 現在のエリアは八番と九番エリアの間、庭園の中央が五番エリアになる。


 チェックポイントは参加者で混み合わないように分散して配置されている。


 そこで、一エリアに一カ所あると仮定することをレイモンドが説明した。


「庭園の中央には愛の神殿と呼ばれる小さな建物があり、人気があると聞いたことがある。五番エリアにあるだろう」


 その情報を知っているペアは、愛の神殿に行こうと思う可能性が高い。


 向かう途中に一カ所ぐらいはチェックポイントがあってもおかしくない。


 そこで愛の神殿へ向かうルートを手分けして探し、愛の神殿で合流する。


 片方のペアが見つからなくても、もう片方のペアが見つけていれば、愛の神殿で合流した時に教え合うことができる。


 運が良ければ二カ所のチェックポイントがあり、賞品が良くなる。


 愛の神殿の付近にもチェックポイントがあれば、三カ所になる。


 謎解きにも挑戦して正解すれば、まずまずの賞品をもらえるだろうという予想が説明された。


「さすが兄上だ! この方法なら効率的にチェックポイントを探せそうだね!」

「一カ所は必ず見つかりそうだわ!」

「ミリアムもそれでいいか?」

「はい。ただ、モードの足が心配なので、移動距離が短くなりそうな八番エリアから愛の神殿を目指せばいいと思います。私とレイモンド様は九番エリア、庭園の様子を見ながら少し広めに探すのはどうでしょうか?」

「そうしよう。リチャードたちは無理をしないように心掛けろ。私とミリアムでチェックポイントを探すようにする」

「ありがとう、兄上」


 リチャードは嬉しそうな表情になった。


「いい思い出になりそうだよ」

「では、愛の神殿で待ち合わせだ。時計を見ろ。今から最長でも一時間だ。それ以上待っても愛の神殿で合流できなければ、戻ることにする。最終的な待ち合わせ場所は参加賞をもらうところだ」

「わかった」

「完璧ね!」


 ミリアムとレイモンド、モードとリチャードのペアで手分けしながらチェックポイントを探し、愛の神殿に向かうことになった。





 モードとリチャードのペアと別れたあと、ミリアムはレイモンドを見つめた。


「レイモンド様は策士です」


 リチャードはモードを園遊会に誘い、ペアで参加するオリエンテーリングに参加したかった。


 そして、できることなら二人で一緒に愛の神殿に行きたかった。


 だが、言えない。


 園遊会に誘っても断られそうで、レイモンドを呼ぶほど弱気になっていた。


 レイモンドから園遊会に誘ったが、案の定断られた。


 そこで同行していたミリアムを園遊会に誘い、衣装は母親に任せ、モードを衣装のアドバイザーにした。


 買い物に同行したモードは流行のドレスを見て心が揺れる。それを巧みに利用してダートランダー伯爵夫人から園遊会について話し、参加を了承させる作戦だった。


 園遊会に参加したあとは、状況を見てオリエンテーリングの話をする。


 食事のあとであれば、腹ごなしの散歩ということで了承しやすくなる。


 リチャードとモードが二人だけで過ごせるように、チェックポイントを効率的に探す方法を説明して一時的に別れる。


 合流場所を愛の神殿にすれば、リチャードがモードと一緒に行きたいと思っていた願いが叶う。


 オリエンテーリングの賞品はちょっとしたおまけ。うまくいけば、思い出の品にできる。


 二人で園遊会に参加、ペアでオリエンテーリングにも参加、愛の神殿に行ったという全フラグが回収され、一件落着。


「ということでは?」

「ミリアムも共犯だ」


 レイモンドは視線をミリアムに向けた。


「推理していながら、何も言わなかった」

「確証がありませんでした。リチャード様に思い出を作ってほしいと思ったのもあります。それはモードにとっても同じ、園遊会の思い出になるはずです」

「前々からチェスタット伯爵家との間にはそれとなく縁談の話が出ていた」

「そうでしたか」

「だが、双方で考えている縁談の組み合わせが違う」


 チェスタット伯爵家はモードとレイモンドの縁談にしたい。


 ダートランダー公爵家はリチャードとモードの縁談にしたい。


「以前、モードの父親を攻略した方がいいと言ったな?」

「言いました」

「わかっているが、難しい。貴族の常識において、爵位持ちになる長男とそうでない次男以降の差は歴然としている。受け継ぐ財産も圧倒的に違うため、長男がいいと思うのが普通だ」

「なるほど」

「リチャードは諦めかけている」


 両親からそれとなく話をしても、チェスタット伯爵はいい顔をしなかった。


 モードとの縁談が成立する見込みはない。


 万が一成立するとすれば、本人たちが強い意志で結ばれたいと願い、周囲を説得する方法だろうとレイモンドは話した。


「リチャードがアピールしても、モードの反応は薄い。その気はなさそうだ」


 ミリアムは隠されていた事情を知った。


「ミリアムはどう思う? 秘めたままにするか、告白して砕け散るかだ」

「なぜ、なんとしてでも恋を叶える、相手を攻略するという選択がないのでしょうか?」

「強制したくないからだ。モードの意志を尊重したい」


 レイモンドは答えた。


「相手の心を振り向かせるのは、強制することとは違うと思いますが?」

「それは人による。ダートランダー公爵家の力は強い。意図しない圧力や強制が発生する場合もある。本心としては嫌だが、家同士の関係を考えると断りにくい。強く言われれば受けるしかないと言うことになりかねない。慎重さがいる」

「なるほど」

「そろそろ行く。チェックポイントを探さなければならない」

「わかりました」


 二人は歩き出した。


 冷静沈着とも言える無表情とすまし顔。


 それぞれ別の方角を見て、チェックポイントを探す。


 男女のペアで参加しても、カップルではないのは明らかだった。


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