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謎解きに誘われて  作者: 美雪
第三章 愛の謎

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41 ペア決め



 ミリアム、レイモンド、リチャードはビュッフェで食事を選んだが、モードはスイーツばかりだった。


「それでいいのか?」


 栄養的に偏りがあるのは明らかだけにレイモンドが尋ねるが、モードは平然としていた。


「一カ月に一度ぐらい、スイーツだらけの食事を取っても病気にはなりません」


 確かにと思うだけに、それ以上は誰も何も言わない。


 それぞれが取って来た食事をテーブル席で食べることに集中した。


「モードとミリアムは初参加だから、園遊会について簡単に説明する」


 食事が終わると、リチャードが話を切り出した。


「園遊会というのは庭園で行われるパーティーのことだ。参加者同士が交流したり、飲食物を楽しんだりする。でも、サウザンド公爵家の庭園はとても有名だ。庭園を自慢するための催しでもある。それで庭園を使ったオリエンテーリングがある」


 庭園の各所に設けられたチェックポイントへ行き、証明のチケットを集める。


 チェックポイントを順番に回るだけでもいいが、ちょっとした謎解きにも挑戦して正解すると、参加賞の内容が良くなる。


 参加賞目当てに参加する者が多いことをリチャードは説明した。


「二人はどうする? 参加する?」

「大変そうだわ」


 モードは乗り気ではなかった。


「ダートランダー伯爵夫人に歩きやすい靴で行くように言われたの。だけど、サウザンド公爵家の庭園は広いことで有名でしょう? かなり歩きそうよね。参加する人は多いの?」

「多いよ」


 リチャードが答えた。


「平民の参加率が高いらしい。チェックポイントを何カ所も歩くことになるからね」

「でしょうね。貴族はちょっとした散歩以上には歩きたがらないもの」

「貴族も参加するよ。全部のチェックポイントを回る必要はない」


 一カ所でもチェックポイントに行けば、参加賞がもらえる。


「他の参加者と協力して、証明チケットを集めることもできる」


 オリエンテーリングには抜け道がある。


 参加者は応募する時に参加用紙をもらうため、名前を書かなくてはいけない。


 しかし、各チェックポイントで参加者の本人確認はしない。


 複数の参加者が手分けしてチェックポイントを回り、証明のチケットと謎解きの答えを集める。


 それをまとめて一人が提出すれば、何カ所も回ったということで参加賞が良くなる。


 何がもらえるかはわからないが、協力者たちと話し合って分けるなり誰かがもらうなりすることもできるという方法が説明された。


「なるほどね。一カ所でもらえる参加賞なんて大したものではないから、他の参加者と協力して豪華な賞品を狙うわけね?」

「そういうこと」

「ミリアムはどうする?」


 モードが尋ねた。


「参加したい? それとも参加したくない?」

「参加したいです」


 ミリアムは迷わなかった。


「謎解きも参加賞も気になります」

「どんな感じなの?」


 モードがリチャードに尋ねた。


「毎年変わるらしい。僕は参加したことがないから、詳しくは知らない」


 リチャードが答えた。


「ペアで参加しないとだから」

「リチャード様ならいくらでもペアを組みたいって人がいるでしょう?」

「モードと一緒に参加したいと思った。だから、誘われても断った」


 リチャードが答えた。


「サウザンド公爵家の園遊会に参加できるのは十七歳以上の若者だ。モードが十七歳になったら誘ってみようと思っていた」


 リチャードは真っすぐな瞳でモードを見つめた。


「モード、僕の願いを叶えてくれないかな? 一カ所だけでいい。思い出にしたい」


 ミリアムは心が揺れるのを感じた。


 自分には関係がない。余計な口出しは無用だとわかっている。


 だが、リチャードの想いが込められた誘いだった。


 叶えたい願いは誰にでもある。


 一緒にオリエンテーリングに参加してチェックポイントの一カ所に行くだけという願いであれば、叶ってもいいのではないかと思った。


「わかったわ」


 モードは了承した。


「足が痛くならない程度ならね。歩けなくなって迷惑をかけるようなことはしたくないのよ」

「わかった。ありがとう」


 良かった。


 そう思ったミリアムにモードが顔を向けた。


「ごめんなさいね」


 ミリアムは首をかしげた。


「なぜ、謝るのでしょうか?」

「だって、ペアで参加しないといけないのよ? 私がリチャード様と参加したら、ミリアムが参加するには」


 モード、リチャード、ミリアムの視線がレイモンドに向けられた。


「兄上、僕のために頼めないかな?」

「わかった」


 レイモンドが頷く。


「ミリアムと参加する」

「ありがとう」

「エスコート役だ。普通だろう」

「そうだね」


 ミリアムはレイモンドとペアを組んで参加することになった。


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