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謎解きに誘われて  作者: 美雪
第一章 招待状の謎
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03 解かれた謎



「遅かったわね」


 茶会場にはモードしかいなかった。


「他の人は?」

「侍従が来て、中央棟の客間を見たい者は案内してくれると言ったの。皆、行ってしまったわ。私たちも行きましょう!」

「お茶とお菓子を味わいたいです」


 ミリアムは席についた。


「ここでゆっくりしていたら、謎を解く時間がなくなってしまうわ! 中央棟の客間を見ることでヒントをもらえるかもしれないわよ?」

「謎はすでに解きました」


 モードは驚いた。


「なんですって!」

「受付で鍵をもらいました。部屋まで荷物を運ぶに時間がかかるそうなので、お茶とお菓子を味わうのに丁度良いと思います」

「どうして……ああ、わかったわ!」


 モードは閃いた。


「化粧室に案内させた侍女に聞いたのね?」

「教えてくれませんでした」

「まさか、受付で聞けばいいだけだったの?」

「棟の場所と何階の何番の部屋かを聞かれました。正解なら鍵をくれるようです」

「わけがわからないわ! どうして謎が解けたの? 私たちは屋敷に来たばかりで何も知らないはずよね?」

「荷物を管理する番号札をもらいました。あれが謎を解く手がかりになっています」


 お茶会の会場には二十のテーブル席があり、それぞれ二名ずつ座っていた。


 招待客が二十名。同行者が二十名。合計で四十名の女性がいる。


 全員が謎解きに成功した場合は、全員が屋敷に宿泊する。


 身分差を考慮すると、一人につき一部屋。四十の客室が必要になる。


 そうなると、部屋の番号は一から四十まであると仮定できることをミリアムは説明した。


「確かにそうね。でも、番号札は四桁だったわ」


 モードは番号札を取り出した。


「九千三百三番よ。四十以上の数だわ」

「この番号は一見すると九千三百三番です。ですが、本当は管理するための番号です」

「預かった荷物を管理する番号だと言っていたわね」

「宿泊する客の荷物を召使いが部屋に運ぶはずです。到着してすぐ部屋に案内し、それと同時に荷物を運ぶのであれば、番号札はいりません」

「そうね。だけど、謎を解けない客は帰ることになるわ。宿泊するかどうかはわからないから、到着してすぐに荷物を部屋に運ぶことはできないわ。だから番号札で管理するわけよね?」

「そうです。あとで荷物を部屋か馬車のどちらかに運ばなければなりません。運ぶ時に間違えないよう荷物の番号と部屋の番号を同じにしておけばいいのでは? 一番の荷物は一番の部屋に運ぶということです。わかりやすくなります」

「そうね!」

「私たちの番号札を見ると三番があります。右端だけの部分です」


 番号札は九千三百三番。


 確かに右端だけを見ると三番だとモードは思った。


「宿泊する部屋の番号は三番です。何階かということについても、番号札を見ればわかります」

「三階ね!」


 モードは叫んだ。


「このお屋敷は四階建てよ。でも、私たちの番号札には一も二も四もないわ!」

「その通りです。百の位が何階なのかを示しています」


 客の数は四十名。二人一組としても、二十までの番号は使用する。


 十の位と一の位は荷物兼部屋の番号を示す数字として使うため、階数を示すのは別の部分――百の位になる。


「客間は東棟と西棟にあるらしく、どちらか聞かれました」

「中央棟の客間を見せてくれると言っていたのに?」


 モードは眉をひそめた。


「東か西かなんて……番号札ではわからないわ!」

「わかるようになっています。私たちの番号札で残っているのは九ですね?」

「そうね」

「玄関ホールに巨大な時計が飾ってありました。邪魔では?」

「まあ、邪魔と言えば邪魔ね。避けて通らないといけないし」

「あれは時計を意識させるために置いたとしか思えません」

「ダートランダー公爵家は時計事業もしているからよ」

「私も最初はそう思いましたが、番号札を見て不思議に思いました。九千というのは非常に大きな数字です。なかなか使用しません。個人の屋敷で使用するには違和感がありました」

「そうね。確かに九千は多いわよね」

「実は九千ではなく、千の位が九というだけなのです」


 百の位も、階数を示す三という数字だった。三百ではない。


 千の位も同じ考え方。九の数字というだけで、九千ではない。


「千の位は方角をあらわしています。方角を考える時、通常は上を北にします。時計の文字盤に東西南北の方角を当てはめると、十二時の方向が北。三時の方向が東。六時の方向が南。九時の方向が西になります」


 ミリアムとモードの番号札にあるのは九。西の方向を示している。


「招待客に渡された番号札は、棟、階数、部屋番号をあらわす数字が並んでいるだけでした」


 九千三百三番は九三〇三。


 九・三・三。


 それを当てはめればいい。


「泊まる部屋は西棟にある三階の三番です。私たちは到着してすぐに泊まる部屋がどこかを番号札によって教えられていたのです」

「さすがミリアムね!」


 モードは感動した。


「同行してもらってよかったわ!」

「ダートランダー公爵家に一泊できます。お茶会に出席する以上の名誉だと思います」

「そうね!」

「成功報酬をお忘れなく。追加で十冊です」


 ミリアムはすました顔でお茶を飲んだ。


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