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謎解きに誘われて  作者: 美雪
第一章 招待状の謎
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02 一つ目の謎解き



 お茶会が始まった。


「ようこそ、ダートランダー公爵家へ」


 にこやかな笑顔を浮かべてそう言ったのは、レイモンドではなく弟のリチャードだった。


「兄上は大学の講義があって別邸に来るのは夕方だ。それまでに謎解きに挑戦してもらう」


 招待客とその同行者は二人で一組のペアになり、謎解きに参加しなければならない。


 そして、謎を解いたペアだけがこの屋敷に宿泊することができることが伝えられた。


「招待客は平民で役に立ちそうな友人を同行させている。自分だけで謎を解くのが難しければ、同行者を活用すればいい。自分とは違う身分だからこそ気づくことがあるはずだ。体力だってあるだろうしね?」


 招待客たちの予想通り。


 謎を解くために同行者を連れて来る条件にしたことがわかった。


「では、早速始めよう。これから自分が泊まる部屋を探し当ててほしい。見事探し当てることができれば宿泊できる。無理なら帰るしかない。制限時間は今から一時間だ」


 招待客たちは驚いた。


 別邸には初めて来た。巨大な屋敷だけに部屋が多くある。


 その中から自分が泊まる部屋を探すのは極めて難しいと感じた。


「そんな!」

「たった一時間で?」

「この屋敷の中を隈なく探せというの?」

「謎を解けなかったら日帰りだなんて!」


 すぐに招待された女性たちは口々に文句を言い出した。


「僕に言っても無駄だよ。君たちを招待したのも謎解きをさせるのも兄上だ。そもそも、謎解きがあることは事前に伝えていた。謎を解けなければ帰ることになるのもわかっていたはずだよ」


 不満を口にしていた女性たちは黙り込んだ。


「どの部屋かわかったら受付にいる者に言えばいい。無理だと思ったら、この部屋で一時間お茶をすればいいだけだ。ダートランダー公爵家のお茶会に出席できただけでも名誉なことだよ。じゃあ、健闘を祈る」


 リチャードは部屋を出て行った。


「どうすればいいの!」

「いきなり難問だわ!」

「このお屋敷のことなんか、全くわからないのに!」


 女性たちのほとんどは嘆きの声を上げた。


「ミリアム、どうする? 予想外の謎解きだわ!」


 モードも困っていた。


「初めて来たお屋敷で、どうして自分が泊まる部屋がわかるというの? そんなのわかるわけがないわよね? だって、泊まる部屋の場所はダートランダー公爵家の方で決めているはずでしょう?」

「そうですね」


 ミリアムは落ち着いた様子で周囲に視線を向けていた。


 茶会場にあるテーブルの数は二十で、各テーブルには二席ずつある。


 招待の条件を考えると、招待客が二十名、その同行者が二十名。


 全部で四十名の女性が屋敷に来ている。


「何か手がかりがあるとは思うのよ。でも、この謎解きを考えたのはレイモンド様だわ。レイモンド様はいないし、答えを聞いても教えてくれるわけがないものね?」

「取りあえず、お茶とお菓子を味わうのはどうでしょうか? 帰ることになったとしても、お茶会に出席できただけで名誉なようです」

「お茶も飲まずお菓子も食べないまま帰るのは避けられるわね」


 モードはため息をつくと、お茶の香りを確かめた。


「とてもいい香りだわ! さすがダートランダー公爵家で出されているお茶ね!」

「少し席を外します」


 ミリアムが席を立った。


「どこに行くの? 泊まる部屋を探しに行くの?」

「化粧室に」

「行ってらっしゃい。私はここで待っているわ」


 モードは一緒に行く気がなかった。


 席を立ったミリアムは、部屋の中にいる侍女に声をかけにいった。


「化粧室はどこでしょうか?」

「ご案内いたします」


 侍女はミリアムを化粧室に案内した。


「こちらでございます」

「ありがとうございます。質問があるのですが、少しだけいいでしょうか?」

「私にお答えできることであれば」

「私が今夜宿泊する部屋の場所を貴方に聞いた場合、失格になってしまうのでしょうか?」

「申し訳ございません。そのようなことにつきましてはお答えできません」

「屋敷の中を勝手に歩き回ってもいいのでしょうか?」

「基本的には注意されるようなこと、礼儀作法に反することはご遠慮ください。私のせいでお嬢様が失格になってしまったら大変ですので、これで失礼いたします」


 侍女は一礼すると足早に行ってしまった。


「ある程度は答えてくれそうですが、無難な対応だけのようですね」


 ミリアムは化粧室を出ると受付に向かった。


「このお屋敷の見取り図を見ることはできるのでしょうか? 自分が泊まる部屋を探すのに必要だと思うのですが?」

「申し訳ございません。警備の都合上、お見せすることはできません」

「泊まる部屋がわかったら受付に言うように言われました。部屋の配置さえわからないのに、泊まる部屋をどうやって伝えればいいのでしょうか?」

「こちらにご記入ください」


 招待客名と同行者名、何階の何番の部屋に宿泊するのかを記入する用紙が置かれた。


 ミリアムはモードと自分の名前、宿泊する部屋の階数と番号を記入した。


「客間は東棟と西棟にございます。どちらでしょうか?」

「西棟です」


 ミリアムは迷うことなく答えた。


「少々お待ちください」


 受付にいた者は名簿を見たあと、鍵を用意した。


「こちらをどうぞ。お荷物をお部屋まで運ぶよう指示を出します。少し時間がかかると思いますのでご了承ください」

「ありがとうございます」


 ミリアムは茶会場へ向かった。



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