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謎解きに誘われて  作者: 美雪
第一章 招待状の謎
13/67

13 答え探し



「モードに聞きます。ビリヤード室を見てどう思いましたか?」

「狭いと思ったわ。豪華さが足りないとか」


 モードは正直に答えた。


「図書室を見てどう思いましたか?」

「小さいと思ったわ。衝撃的なまでにね」

「では、音楽室を見てどう思いましたか?」

「音楽室を見て?」


 モードは音楽室を見回した。


「……広いわね」

「どんなものが置いてありますか?」

「椅子が多くあるわ。女性がたくさん集まっても、全員座れるぐらいにね」

「ここは音楽室です。かなりの広さがあるのに、なぜピアノがないのでしょうか? 私は学校の音楽室のような場所だと思いましたが、全然違いました。椅子しかありません」


 全員がハッとした。


「音楽室という名称なら、音楽に関係する部屋のはずです。でも、音楽に関係しているようなものがありません。おかしいです。特別なスイーツもお酒もなく、レイモンド様やリチャード様もいません。がっかり。期待ハズレ。違いますか?」

「その通りだわ!」


 モードは叫んだ。


「わかったわ! 三つの部屋に共通しているのは、おかしい、がっかり、期待ハズレという印象だったのね!」

「そうです。違和感、全然違う、ここは男性用の部屋ではないなどといったことが手掛かりとも言えます」


 ミリアムは女性たちを見回した。


「ダートランダー公爵家はお金持ちです。広くて立派な屋敷だというのに、ビリヤード室は狭く、図書室は小さく、音楽室にはピアノなどの音楽に関係するものがありません。豪華なはず、大きいはず、ピアノなどの音楽に関係するものがあるはずだと思っていたのに違いました。おかしいです。がっかりです。期待ハズレです。でも、これには理由がありました。全部、謎解きのための部屋だからです。作られています」


 女性たちは仰天した。


「謎解きのための部屋?」

「作られているですって?」

「じゃあ、本当は違う部屋なの?」

「偽のビリヤード室、偽の図書室、偽の音楽室です。もしかすると本物なのかもしれませんが、おかしいと感じるように何かしら手が加えられています」

「そうね! わかるわ!」


 モードが頷いた。


「おしゃべりをしていたせいで、音楽室にピアノがないことに気づかなかったわ。でも、ビリヤード室や図書室はすぐに変だと思ったわ! あまりにもがっかりで期待ハズレだったから!」

「図書室の目立つ場所に恋愛小説の新刊がありました。わざと置かれたのだと思います。モードは意外だと言っていました」

「あれも変だと思わせるための工夫だったのね!」

「晩餐会のあと、貴族は男性と女性に分かれ、別々の部屋で過ごすという説明がありました」


 男性は男性用の部屋に集まり、男性だけで楽しむ。


 女性は女性用の部屋に集まり、女性だけで楽しむ。


「四種類の部屋の中で、最も男性用の部屋らしいのはビリヤード室です。そして、女性用の部屋だったのは応接室です。この二つはどちらも招待客に渡されたカードです。最初にそれを全員で確認しました」


 その通りだと部屋にいる全員が思った。


「ビリヤード室に特別なスイーツやお酒があり、レイモンド様たちがいればよかったのですが、そうではありませんでした。でも、当然です。偽のビリヤード室だからです」

「わかったわ!」


 マリアンヌが叫んだ。


「特別なスイーツは本物のビリヤード室にあるのね!」

「そうです」


 ミリアムは頷いた。


「では、本物のビリヤード室はどこにあるのでしょうか? この屋敷に詳しくなくても、貴族の感覚があれば推理できます。食堂からあまり遠くない場所です」

「そうね!」


 シェリーが叫んだ。


「晩餐会のあとに遠い部屋に移動するのは大変だわ。比較的近い場所にあとで使用する部屋を配置するのが常識よ!」

「実際、女性用の部屋である応接室は食堂の近くでした。ですので、食堂の近くにある部屋から探していく方法もあるのですが、すでに目星はつけています」


 ミリアムは音楽室を見回した。


「ここは広い部屋です。中央に柱がなくても広い空間を支えることができる構造になっています。こういう部屋の造りは上下の階にも影響を与えます。恐らく、この真下にある一階の部屋も広いです」


 音楽室内の雰囲気が変わった。


「ビリヤード台は重いです。二階や三階に運ぶのは大変でしょう。食堂は一階なので、食後に男性用の部屋として使うビリヤード室も一階に作った方がいいはずです。ダートランダー公爵家であれば、広くて立派で複数のビリヤード台が置けそうな部屋かもしれません。この部屋ぐらいあれば、二台でも余裕で置けます。でも、ここにビリヤード台はありません。広くても、二階だからです」

「そうね! 一階がいいわ!」


 モードの表情は明るく輝いていた。


「男性用の部屋がどこにあるのかわかったわ!」

「モードに友人としてお願いします。一緒に来てください。ここの真下にある一階の部屋を確認しに行きます。間違っていたらすみません」

「大丈夫よ! レイモンド様は自分の行きたい部屋に行けばいいと言っていたわ!」

「他の方も気になるのであればどうぞ。ですが、冷静に。急がないでください。まだ、続きがあるのです」

「続きですって?」


 マリアンヌが尋ねた。


「どういうこと?」

「恐らく、男性用の部屋を見つけただけでは中に入れません」


 女性たちが驚いた。


「そんな!」

「酷いわ!」

「見つけたら入れるはずよ! 謎を解いたもの!」

「そうよ!」

「いいえ」


 ミリアムは否定した。


「誰かが謎を解き、そのあとをついていけば、男性用の部屋の場所がわかります。ただついて行っただけの人は謎を解いたと言えるでしょうか? 便乗しただけでは? 褒美がもらえる資格があるのでしょうか?」


 褒美をもらえる資格はない。


 誰もがそう思った。


「見つけただけで中に入れる可能性もありますが、違う可能性に備えておきます。全員で協力して謎を解いておくのです。そうすれば、便乗ではありません。全員が謎を解いたと言えます。ですので、協力をお願いします」

「わかったわ」


 マリアンヌが頷いた。


「ミリアムに協力して、全員で謎を解くのよ。そうすれば、堂々と謎を解いたと言えるわ!」

「男性用の部屋に入る資格がもらえるはずよ。お酒も飲めるわ!」

「特別なスイーツも食べることもできるわ!」

「移動する時に階段を使います。位置もわかっています。怪我をしないよう慌てずに行きましょう。私とモードが先導役になります」


 全員が席を立つ。


 そして、音楽室の真下にある部屋に向かった。


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