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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

『 』は日常生活に溶け込んで、今日も人間を消している。

作者: 翠野とをの

ボクと夏と未来戦の方はただいま書き溜めしています。興味ありましたら是非。

今回は箸休め的な感じで書かせていただきました。

昼の屋上で。


「ーーやっぱ、レイカちゃんでしょ。可愛いし、いい匂いだし、上品で可愛いし、百合の花? 高嶺の花って感じ」


カズミが言った。


「はぁ。オマエ、ホントレイカちゃん好きな」


ミオが答えた。


「マジ好き。もうね、夜空みたいな黒髪とか、少しつり目気味な涼し気な目と、スッと通った鼻筋、薄いけど薄紅色の綺麗な唇、あと肌めっちゃ綺麗、白い」

「ここだけ国語力上がんのマジキモイんだけど」

「うっせーな。それぐらい愛してんの!」

「あーはいはい。付き合ってもないのに愛してるとか言う男はキモがられますよ」

「あー、告白したい。付き合いたい。で、出来たらゴールインしたい」

「へえ、すんだ。告白」

「いや、するって言うか……。てかそもそもレイカちゃん彼氏いんのかな」

「いないんじゃね。そんな話聞かないし」

「しゃっ! 可能性はゼロパーセントじゃないな! ワンチャンいけんじゃね?」

「いやあ、そのポジティブ思考羨ましいわ。彼氏いなくったってライバル多いのにいけるとか……。知ってるか、オマエ。2組の石井。あいつも狙っててアタックしてんだかんな」

「うぇっ!? そうなん! あのイケメンで勉強出来て、運動もできる、学生の三種の神器揃えましたっていう感じのヤツも!? ……どうりで最近レイカちゃんと一緒に居るのをよく見かける訳だわ」

「どう? これでもいけそうと思うか?」

「……ヤバい」

「だろ? だからヤメとけ。こっぴどく振られて心、傷つくよりはマシだろ」

「ぅぅ、そだけどさ。わかんないじゃん。やんなきゃ」

「今まで告白してOK貰ったやついたか?」

「……いない。ていうか告白したやつなんていたっけ?」

「あ、いやなんでもねえわ。……とりま、ああいう女は性格が悪いからヤメとけな」

「は? なんだよお前。レイカちゃんと話したことも無いくせに悪いとか言いやがって。このムッツリ陰キャ!」

「あぁ゛? 陰キャはお前もだろ。あと俺、お前がレイカちゃんと喋ってるの見たことないんだけど」

「ちゃんと喋りましたー! 始業式の時席が前後で『ヨロシクね』って。それからもうファンよ」

「一言だけかよ……」


キーンコーンカーンコーン


5時間目、5分前の予鈴がなった。


「やべ、早く戻んなきゃ」

「俺、まだデザート食べ終わってない」

「んなのどうでもいいだろ」

「やだ。デザート食べないと死ぬ」

「……早く食えよ」


階段を急いでおりてゆく。


「ホントにレイカちゃんはヤメロよ」

「え、なんでよ」


教室に帰ると、何故か教室が湧いていた。

今日、石井がレイカに告るそうだ。

カズミの顔は引きつっていた。


ミオ、自宅にて。

カズミとLINEをしていた。


『数学の課題終わった?』


『まだ』


『よかった』

『明日提出だから仲間いて良かったわ』


「イエーイ!」というスタンプが送られてきた。


「イエーイ。じゃないだろ」


『ところでさ、オマエの大好きなレイカちゃんに石井が告ったって聞いたけど』

『どうなったん?』

『知ってる?』


少し間かあって返信が返ってきた。


『何それ知らね』

()()()()()()()()()()w』


「……」

ミオは天井を仰いだ。


次の日。


「ーーよし、決めた。夏休みに入る前に告る」

「やるんだな、今日ここで! ……じゃなくて、俺ヤメロって言ったよな」

「ああ。だが断る。そして! 天才の俺はわかってしまった。お前が俺を止める理由が……」

「何だっていうんだよ」

「お前が本当はレイカちゃんが好きで俺と付き合ってしまうのが怖いと、そう言う事だな! 図星だろ!」

「はぁ」

「俺は止まんねえからな! 告って今年の夏休みは勝ち組だ!」


今の所、太陽より熱い男、カズミを見てミオは思った。


「……言わなきゃダメか……あのさ。最近レイカちゃんの周りで行方不明者が続出してるんだわ。……んで全員レイカちゃんに告った奴らばっかりなんだわ」

「……何言ってんの、オマエ。行方不明者なんてこの学校で出たことねぇよ」


ミオは気にせず話を続けた。


「そしてさ。これは噂ってか都市伝説みたいなもんだけど。世界では毎日、たくさんの人が殺されてます」

「……まあ、そりゃそうだろうよ」

「ただし、生き物じゃない何かによって」

「はあ?」

「しかし俺らはソイツらを捕まえることが出来ない」

「は、なんでよ」

「ソイツらが殺すのは生命の存在。例えば俺が殺されても殺された瞬間俺の存在がみんなから消えるから俺が殺されたなんて誰もわからない。人じゃないから殺されたなんて人間じゃわからない」

「最近暑いからおかしくなった?」

「……ソイツら化け物を存在し得ないモノ(バグ)……って言うらしいって言うウワサ」


最後まで言い切ったミオはカズミを見た。


「なんだよ……。まさかレイカちゃんがそんなバケモンだなんて言わないよな」

「お察しが良いようで」


カズミがダンッと立ち上がった。


「俺、性格悪いまでは我慢したけどレイカちゃんがそんな変なモノなんて言われたらさすがに怒るかんな!」


蟲を見下すような目で見下ろされミオは失敗したと思った。下手をしたら友達まで失う状況に謝ることしか出来なかった。


「ごめん」

「……許すけど。もう言わないでね」



カズミは一足先に教室に帰った。

その際に振り返って聞いた。


「それが本当だとして、なんでオマエが知ってんの」

「俺もバグだから」


くだらないというような顔をして屋上の扉をバタンと閉じた。


「どうすっかなー」


西日が怪しく校舎を写す、放課後。

カズミはレイカを探していた。


「あ、いたいた! おーい、レイカちゃーん」


レイカと呼ばれ、顔を向けた人物はカズミが称していたより美しい少女だった。


「あれ、どうしたの? カズミ君」

「……俺の名前覚えててくれたんだ……」

「もちろんだよ。それで、何か?」

「あぁ、えと。……今、時間ある?」


♢♢♢


「ーー俺っ! レイカちゃんのことが大好きです! 運動しか出来ないバカだけどぜったい、ぜっーたい大事にするんで付き合ってください!」


屋上では今まさに青春が展開されていた。

カズミは空に負けないぐらい赤く染まりながら手を差し出した。


「……私でいいのなら」


レイカが優しく手を包み込む。

カズミが嬉しさで顔を上げると可憐に微笑む女神が、いた。


「カズミくん、目、瞑って……」

「え、なんで?」

「……ちゅ。したいけど恥ずかしいから」


と上目遣いで言われれば黙って目を瞑るしか選択肢は無い。

カズミはドキドキしながら目を瞑った。

生暖かい吐息が近づく。

あともう少しで唇が触れることを気配で感じた時、何故か頭の中にミオが現れた。

『霊歌はバグだ。気をつけろ』

ああ、邪魔しないでくれ、親友よ。

そう思いつつ、やはり不安になり目をうっすらと開けた。


「ぎゃあああああああッ!!」


カズミはレイカを突き飛ばした。

そして、自分もへたり込んでしまった。

突き飛ばされたレイカは転び、ゆっくりと顔をあげた。


「……ったーい。ちょっと急二ぃ、な奈、ナニ素ン野ぉ」

「ヒイッ」


顔が変だった。

詳しく言うと砂嵐みたいな、色んな色のピクセルが動いているような、所々顔のパーツが入れ替わったり、喪失していて、まさに


「バグってるみたい……」

「ヒ、日、酷いな。あんなにかわいイって一手くれてタのに」


ゆっくりとカズミに近寄っていく。


「うわぁ!! キモッ! こっち来んな!」


腰を抜かして動けないのをいいことに距離をどんどん縮めていく。


「カ、ズミくーん。おいでぇ」

「嫌だ……。死にたくない!!」


近寄る。


「く、来るなあ……」


更に近寄る。


「やっ、やっ、やだ!!」

「カズミ組ん。レイカと一緒にな、ろヴ!」

「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


レイカの手がカズミの足を掴もうとした時、ミオが屋上の扉を開け、


「やぁめろォ!!!!」


と野球ボールを全力で投げた。

ボールは空気を揺るがしカズミしか見ていない殺人鬼にドゴッとクリーンヒットした。

レイカは「ヴっ」と呻き、動きを止めた。

固まっているカズミにミオの声が届く。


「早く帰っぞ!」


その声でやっと体が動き出し、ヨタヨタとミオへ向かう。

差し伸べられた手を握って無理やり足に力を込め、階段を雷鳴のごとく降りてゆく。


(死ぬまで関わりたくなかったのに)


「オマエが俺の親友じゃなかったら見捨ててたよ」


小さく呟いた。


「はぁ、はぁ、はぁっ。や、やっと、着いた、昇降口!」

「……良かった、無事に、着いて。早く出よう」

「……ミオ、ごめん。俺、お前のこと信じなくて。レイカちゃんは、バケモンだった」

「いいよ、伝え方が悪かった。……ま、どう伝えてもああはなったと思うけど!」


と言って扉を開け……られなかった。


「は? くそっ! なんで開かねぇんだよ。おい!」


ガタガタと揺らすも一向に開かない。


「鍵、閉まってねえよ……」

「な! くそっ! 閉じ込められた!」


遠くからぺたぺたと足音が聞こえてくる。


「ガ、ズズ、み実クーん、退こダア?」


レイカが動き始めたようだ。


「ダメだ。開けらんねえ。ひとまず隠れっぞ」


「蓋り、ともドコカな----??」


声が遠ざかって行った。


「はーっ。もう息していいよ」


涙と冷や汗で汚れているカズミにそう伝えるミオ。

ついでに、涙を拭けとティッシュも渡す。


「う、ありがとう……」

「別にいいよ」

「てかなんで扉開かなかったんだろうな」

「……これは俺の推測でしかないけど。ドア、鍵かかってないのに、壊れてもないのに開かなかった。普通なら開かないわけないじゃん。有り得ないことじゃん。普通が通らない、バグってる」

「つまり、あのバグのせいでバグってるってこと?」

「多分な」

「マジかよ。俺たち出れないじゃん。……巻き込んでほんとにゴメン、ミオ」

「そこは助けに来たんだから感謝しろよ」

「ありがとう、ございます」

「さてと、これからどうする? 逃げてる時わかったけど多分今この学校、俺たちとアイツしかいない」

「マジ? 他の人は?」

「いるよ、ちゃんと。元の世界に。逆に俺たちが、扉の件についてもそうだけど、おかしくなった世界に来ちゃったんだと思う」

「なるほど」

「で、肝心の脱出方法だけど、アイツを倒すしかないと思う」

「だよな。……じゃ俺がやっつけに行くわ。俺が戦犯だし」

「言うと思った。その考えは無しな。助けに来た俺が無駄になる」

「……わかった」

「見た感じ、物理攻撃は効くみたいだし。人間の形を取っている以上人間で死ぬダメージを与えれば死ぬと考えた」

「おお。ぽい」

「でもわかんない。予想だし」

「いい、やろう。どっちみち死ぬならやれることやってから死にたい」

「……じゃあ、一応作戦な」


外は暗くなっていた。


「かァい、伊、カずミくん、どドこ果ナ」


ふと外を見ると、反対側の校舎に光がチラッと見えてある教室に入っていった。


「みつけた」


ガラガラガラッ!

レイカは真っ暗な教室の扉を開けた。

一見すると誰も居なさそうだが、教卓の下で何かが蠢いた気がした。


「ふふ、ヘタ苦ソ」


足音が聞こえないように


「亞レェ、コこに吐いったトおも田ンだけド名」


1歩踏み出した瞬間、紐に引っかかり、転倒した。


「ギャっ!!」

「かかった!」


教卓の下から、ミオが、

後ろの掃除用具入れからカズミが飛び出した!


「オラアアアアアアア!!!!」

「死ねぇぇえ!!」


モップの柄やハサミ、カッターナイフ、包丁で容赦なく打ち、切りつける。


グチョ、ボキッ、ゴキッ。


「イ゛、いダィ世ぉ゛ぉ゛」


バキッ、ヌチョ、バキン!


「人間の姿してるからって油断すんなア!」


倒れた場所には画鋲が置いてあり、体を踏むとそれに合わせてぷちゅっと血が流れ出てきた。


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッ!!」


(ごめん、レイカちゃん、大好きだった!)


カズミがグン゛と頭に包丁を突き刺すとレイカの動きが止まった。

ーー2人の動きも、止まった。


「た、倒した?」

「う、うん?」


少し経ってもレイカは動かなかった。


死んだ。


「や、やったー!! 倒した! これで帰れる」


ヌチョ。


「え?」


驚くべきことに肉の残骸と化したレイカが、死んだはずのレイカが蠢いていた。

声帯が潰れて声が出せないのかゔーゔー呻いている。


「な、なんで……?」

「もしかして、死ぬって言う普通がバグった!?」


そんなカズミへレイカの腕がゴムのように伸びた。


「わっ!?」

「カズミっ!!」


ミオがカズミを突き飛ばした。


「ミオォッ!?」

「ウッ」


レイカがミオに触れた刹那、


「!ぉぉおおおおおおおおおおおおおおぉぉ!」


悲鳴にも似た怒鳴り声が2人の耳を(つんざ)いた。



♢♢♢



「ーーん。うーん。……はっ!」


カズミは起き上がり、橙に染まった辺りを見渡す。


「あっ!」


机に埋もれ、ミオが倒れていた。


「おい! 大丈夫かよ」

「……もうちょっとだけ、寝かせて……」

「よかった。生きてる。……おい、起きろ!」


頬をぺちぺちと叩くとやっと目を覚ました。


「うぅ。……はっ。こ、ここは?」


グラウンドから部活動中の人の声がする。


「元の世界に帰ってきたみたい」

「はーっ。良かったぁ」


ミオはもう一度ごろんと床に寝そべった。


「……なんで俺たちあの状況から逃げれたんだろうな」

「あれじゃね? マイナス×マイナスみたいな」

「え、どゆこと」

「普通な、バグのした事を認識できる人間っていないんだわ」

「確かに、俺もそうだわ」

「でも俺は覚えていられる。つまり俺もある意味存在し得ないモノ(バグ)なんだわ。それでお互いバグ同士、触れた瞬間に正しく修正されて、あっちが消滅した、みたいな? 知らんけど」

「あーね。それでマイナス×マイナスか。納得。ところでさ、石井たちどうなるんかな」

「あれ、オマエ、思い出したん?」

「なんかな。襲われたからじゃね?」

「んーどうだかわからんけど多分元に戻ってんじゃない? 元凶を倒したし」

「おお。やったー。なんか人救えて嬉しいわ」

「だな。まあ、俺はオマエと戻ってこれただけでも万々歳だわ」


寝転がっているミオに、差し出す。


「ほらよ。今回は本当にありがとうな」


ミオはその手を取って立ち上がる。


「さっさと帰っか!」

「うん!」


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「じゃーな!」

「おーう」


帰り道、カズミと別れた、ミオ。

ミオは先程述べた自らの説明の矛盾に気づいた。


「……もしマイナス×マイナスならプラスになるから、正しくなってアイツは消える。これは当たってる。けど俺は? 俺もバグなら訂正されて同じく消えるか能力が消えるはずじゃ? もしかして、俺って……うっ!?」


違和感を感じレイカに掴まれた部分に視線を落とす。

するとジジッとバグった画面のように、揺れた。


「うわ、だる……」


またいつかこの続きか別の人物視点で書きたいと思います。

伏線もありますしもうちょっと色んなバグを出したいので。

お読み下さりありがとうございました。

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