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エピローグ 今日も今日とて傘を振りたい

「何をやっているんだお前は!!」


 案の定怒られた。


 あの後私は駆け付けた教師たちに囲まれ、みっちりと説教と治療のダブルコンボを決められた。それはそれはみっちりと。絞りに絞られた。


 まぁ当然の話ではある。


 犯人の正体に気が付き、それを教師たちに知らせるでもなく、ひとりで相対して。その上で殺し合いまでしてしまったのだ。これで怒られないというのであったら、それは逆に教師としてどうなの? という感じだ。


 危険なことは大人に任せ、私ら生徒は大人しく寮で待機。それが正しい行動だしな。


 ただ後悔はない。それに反省もない。同じことになったら、またすると思う。


 そんなことを言ったら余計に怒られた。


 ……うん、当然の話だね。


 私はしばらくの謹慎、それと反省文を課せられた。学校の方は、私たちの戦い――主にライムが色々と重すぎて予想以上に破壊してしまったせいで、休校が延長となった。私はそこまで悪くはない、悪くはないと思うが、少しだけ他の生徒たちに申し訳なさみたいなものがあった。


 ちなみに私の身体はそこまで怪我を負ってはいなかったが、魔力をすっからかんにさせてしまったことで、なんとも言えない倦怠感に襲われた。身体の中にあったはずのモノ、それがごっそり抜けて、力が入らない、そんな感覚だ。


 おかげで反省文はろくに進まない。……全部で100枚くらいあるんだけど、謹慎期間中に書き終えられるか若干不安だ。まぁ、反省文は明日の私、もしくはそのまた明日の私が何とかしてくれるだろう。


 今は戦いの疲れを癒すためにベッド寝て、抱き傘をしていよう。



 ワカヅ先生はあれからしばらくして目を覚ました。頭が少し痛いそうだが、なんも後遺症はなし。そして目を覚ましたワカヅ先生に私は怒られた。他の先生たちによる説教以上に怒られた。あんなに怒られたのは初めてだった。


 しょうがない話ではある。


 だって一歩でも間違えていれば私は死んでいたかもしれないのだ。


 そんな目に自分の生徒が遭っていた、そんなもの怒らないはずがない。



 それから無事怪我が治ったイチヅにも怒られた。


 そういうことは二度としないでと泣きながら言われてしまった。そして自分が力になれなかったことを謝られた。私の力になりたい、そんな思いでこれまで努力して、力をつけて、生徒会長にまでなったというのに。肝心な時に動けないで、と。


 だけどそんなことはなかった。


 確かにあのときイチヅは動けなかった。


 だけどイチヅのおかげで私は色々学ぶことができていたし、イチヅとかがいるからこそ私は傘を振るった。そんなことを伝えたら余計に泣かれた。


 泣きに泣きすぎて宥めるのが少しだけ大変であった。



 なにはともあれ、そんなこんなでこの事件は終わった。


 ライムがなぜ魔法学校に入り込んで、古代魔法の知識を得ようとしていたのか。そういうものは判明していない。そのため以降の調査は騎士のほうで詳しく行っていくそうだ。


 ……。


 …………。


 ………………それはそれとして、だ。


 ライムと戦い、傘を振り回したせいで私の我慢の蓋が外れてしまった。タガが外れてしまった。そのせいで今も反省文を書く手が震え、足がガタガタと慣らしている。禁断症状がいつも以上。


 傘を振り回したい。


 ものすごく。とっても。思う存分に傘を振り回したい。そんな欲求が湧きに湧いて、思考を塗りつぶそうとしてくる。……だがしかし、今ここでその欲求に呑まれてしまえば、反省文を書き終えるのなんて夢のまた夢。


 それに魔力を枯らしたことでただでさえ倦怠感があるんだ。そんな状態で無理に動き回れば、それはもう、凄く疲れる。ちょっと振り回すだけと、やってしまえば、力尽きて倒れるまで振り回してしまう。


 ……。


 ……絶対にダメだ。


 ダメだとは分かっている。分かっているが、やっぱり――


「傘を振り回したーい!!」


 私の叫び声は部屋に響き渡る。


 心の中で、きっとこれを見た神様は笑ってんだろうななんて思いながら、私は傘を手にして部屋を飛び出していった。

ひとまず完結です。読んでくれた皆さまありがとうございました!!


読んでくれて面白かったら、感想等をしてくれると嬉しいです!

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