第70話:雪人とアカネのバランス
母達のプチ夏休みが終わり。
日中の家には、雪人とアカネの二人だけ。
雪人も、結局、アルバイトは別にして、女装を解き、本来の姿へ戻り。
学校の宿題や家事をこなした後は、本当の意味で二人だけの、世界。
クーラー涼しいリビングでゲームも、あり。
食材や日用品の買い物に出かけることも、あり。
洋服やアクセサリなどのショッピングに出かけることも、あり。
雪人は、たまに、アルバイトに呼ばれる事もあるが。
しっかりと、夏休みを、満喫!
しつつも。
「お母さん達の宿題も、やらないとねっ!」
と、アカネに発破をかけられて。
「う、うん……」
『雪人くんオオカミさん化計画』も、地道に進める。
そして、解かった事もある。
母達が居ない事で。
アカネと二人きりになった事で。
余計な緊張感が薄まる事が、解かった。
見られている、視線を感じる、それが、圧迫感になり、緊張の元にもなっていた模様。
二人だけのリビングで。
自然に出来るように、練習を繰り返し、繰り返し。
少しづつ、ステップアップ。
アカネに触れる。
アカネに触れられる。
アカネにしても、雪人に触れられる、雪人に触れる。
その相互のやり取りを。
お互いのタイミングを合わせる流れを。
二人で。
試行錯誤。
していると。
「あらあらあらぁ、がんばってる、わねぇ!」
「おー! イチャラヴラヴぅっ!」
夢中になって、母達の帰宅に気付かず、母達に目撃される事も、有り。
だからなおさら。
見られるのが恥ずかしくて緊張する、と、言う事にも気付いた次第で。
少しづつでは、あるが。
そんな風に。
習うより慣れるを、文字通り。
だが、しかし。
潜在的な問題も、また、存在している。
雪人ではなく、アカネの側に。
アカネと、雪人の、バランス。
雪人のペースに合わせていると。
アカネに、ストレスが、溜まってしまう。
アカネとしては、もっと、先へ進みたい! のに。
雪人のペースだと、じりじりと、焦らされる
そのストレスを。
自らの手で解消するのも、限界があり。
雪人を急かす訳にも行かず。
母達に相談したいところでは、あるが。
仕事が始まった母達も、お疲れ気味な事もあり。
なかなか、相談もできずに居ると。
少しづつ、少しづつ。
蓄積される、それは。
今度は、アカネを……。