第62話:雪人くん対策会議
完全に寝込んでしまった雪人。
三人がかりで部屋まで運び、布団に寝かしつける。
おそらくは。
母を真似て、自分からアカネに触れた事が。
雪人自身になんらかの負荷をかけた事は間違いない。
それにしては。
夢見心地の中で、アカネに触れ続けても、居た。
「いい傾向なのか、トラウマになっちゃうのか……」
「いい方向ぉ、なんじゃぁ、ない、かなぁ?」
「雪枝さんは楽観視しすぎですよ……。寝込んじゃう程なんだもん、結構キつかったんじゃないかなぁ……」
リビングに戻り、女性陣三人。アカネ、雪枝、美里。
原因と対策を考える。
いや、原因は、明らか。
「雪枝ママの手が……」
「つぃ、無意識にぃ、いつも通りにぃ、やっちゃったぁ」
てへ、ぺろ、雪枝。
「まあ、やっちゃったものは仕方ないとして、後、どうするか、どうなるか……」
先だって、プールで娘にイタズラした母とは思えない程の真面目さで、美里も考える。
「眠りから覚めた後、どうなるか、だよねぇ」
「一瞬、自分の事『あたし』って、完全に女子化してたよね」
「多分、言動も女の子になって負担を軽減したんだと思うわよ」
「次に目が覚めて、女子化してる可能性は?」
「無きにしも非ず、かなぁ?」
「そうなると、ちょっと重症?」
「かも……」
美里とアカネの母娘で議論。
雪枝は、黙って二人の会話を聞きながら、考え事を続ける。
「触った事だけを忘れる、とかもあり得るかな?」
「それもある意味重症だけど、その方が結果的には良いかもね」
いくら議論、推察、推測しても。
雪人の心の中を覗くことは、出来ず。
美里とアカネが議論を続ける。
「あのキスは出来てたのにね」
「うんうん。触るよりあのキスの方が難易度高いよね」
「まぁ、『キスをするぞ』って流れだったから、そっちの覚悟は出来てたって事かなぁ」
「そこにあの手の動きが入ったから?」
「雪人ちゃんとしては『いけない事をした』って思っちゃったかなぁ」
「あぁ、一応、あれって『B』になるか……」
「そうね、雪人くん的には『A』の筈がいきなり『B』に行って混乱したのかも」
「ともかくぅ、雪人が起きてからぁ、どぅなってるかでぇ、対応を考え、ましょぅ」
黙っていた雪枝が割り込んで指南。
「確かに、あれこれ推測しても答えは出ないでしょうし、後の事を考えましょう。先ず、今日の事を覚えているかどうか、それとなく確認ね」
雪枝の指南に、美里が続ける。
「覚えてなかったら一旦よしとして、覚えてたら?」
母の言葉を娘のアカネが引き継ぐ。
「覚えてたら……できるだけ、触れないようにして軽く流した方がいいかな?」
娘に答える、母・美里。
「女子化してたら?」
アカネもさらに状況を想定する。一番最悪のパターン。
「その場合は、話を合わせて一旦、様子を見るしかないかなぁ」
雪人の状態に応じて臨機応変に対応するしかなさそう。
「いずれにしてもぉ……雪人が、起きてから、ねぇ」
「ですね」
「だね」
結局。
その日、雪人が目を覚ます事はなく。
無理矢理起こすのも忍びなく、女性陣三人で夕食。
少し不安な夜を迎えることに。