第55話:ぐるぐるスライダーに挑むカップル
『ぐるぐるスライダー』
アカネ、曰く。
大きいリゾートプールなので、数種類の、しかも大型のスライダーが各種取り揃え。
その中でもひときわ目立つ、巨大なスライダー。
アカネの言う通り、ぐるぐる回る、曲線が多い。
高さもそこそこあって、この施設の目玉。
夏休みに入った時期もあり、それなりに人出もあって並んではいるが、それでも平日なので多少マシ。
「アカネは友達と来たことあるんだっけ」
「うん、あるよー」
順番待ちの列で、カップルの会話。
「美里ぉ、高い所、大丈夫ぅ、だっけぇ?」
「ん? 平気よー?」
「そかぁ」
子供達の後ろでは、母カップルも。
やがて。
「さぁ、行くよお。しっかりつかまっててねー」
「お、おぅ……」
お腹はエッチじゃない、お腹はエッチじゃない。
雪人は念仏のように呪文を唱える。
少しでも上下にズレたら、まずい。
もちろん、アカネの方はそっちの方が、願ったり叶ったりではあるが。
「手、離しちゃだめだからね。危ないからね」
諭すように、念押し。
「わかってるってば」
言ってる内に。
ぐいっと係の人に押し出され。
ぎゅいーーーん。
滑り出す、二人。
「うほーーーっ!」
「ぐぉーーーっ!?」
右へ、左へ。
ぐるんぐるん。
「ひゃっほーーーぅ!」
右へ、右へ。
ぐるぐる。
「め、目がまわあああああっ」
左へ、左へ。
ぐるぐる。
「いぇーーーーーぃ!」
トンネルもくぐって。
どぼーん!
なんとか、アカネにしがみ付いたまま、雪人はアカネと一緒に、水中へ。
海パンのヒモもしっかり結んでいたこともあり、セーフ。
アカネの水着も、問題なく、ポロリも無しで。
「ぷはぁーーーっ」
「げほっげほっ」
後ろに居て、前が見えなかった雪人は、着水の瞬間、ちょこっと水を飲んでしまったらしい。
「あはは。だいじょぶ?」
「げほげほ……だ、大丈夫……げほげほ」
さあ、次の人……お母さんズが落ちて来る、はず。
その場に留まると危ない。
係の人にも誘導されて、離れる。
離れたところから、落ちて来る母達を、観察。
やがて。
「うぎゃーーーっ!」
「あははーーーっ!」
どぼーん。
美里を抱きかかえた雪枝が、到着。
水しぶきを上げて、水の中へ。
母達も、水着は無事の模様。
雪枝は、美里を抱きかかえる事で、自分と美里の両方をガード。
「ぷはーっ、ちょっと怖かったあああ」
「んふふ。美里ったらぁ、可愛いぃ」
ぎゅー。
「雪枝さん、もう、いいから!」
「えぇー? いいじゃなぁい」
バカップル極まれり。
傍で見ている子供達も赤面しそうな。
でも、慣れているので、赤面まではいかず。
周りの他人の方が、恥ずかしそう。
「お母さーん、次、選手交代ねっ!」
「はいはい」
「はぁぁい」
「んじゃ、次はわたしとお母さん、雪人くんと雪枝ママね」
「はいはい」
「はぁぁい」
「……」
何が悲しくて、母親と?
一瞬、疑問が生じる雪人ではあるが。
「ま、これはこれで?」
楽しそうなアカネや母達を見れば。
「はーい。行こう、母さん」
母の手を取り。
わちゃわちゃと言い合っているアカネと美里母娘に続く。
続く。