第54話:ぐるぐるスライダーに挑もう
「次はあっちの、ぐるぐるスライダーだよっ!」
はしゃぐアカネの指さす方には。
たしかに、ぐるぐると回る感じの巨大なスライダー。
「ほらほら、行くよー」
雪人の手を取り、そのスライダーにまい進アカネ。
母二人も苦笑しつつ、後ろに続く。
どくろ一家のお通り。
相変わらず、すれ違う人達から、ぎょっとした目を向けられつつ。
だいたい、パッと見て、三人の女性に一瞬、見とれた後に、水着を見て、ぎょっとするパターン。
雪人……男が側に居る事もあって、懸念のナンパも無く。
「さて、このスライダーは二人だから、先ずは、わたしと雪人くん、お母さんズのペアで行きましょう!」
仕切る、アカネ。
「そんで、次はペアをシャッフルして、三回行けばオッケーかな?」
雪人xアカネ、雪枝x美里のカップル二組。
雪人x雪枝、アカネx美里の母子ペア。
雪人x美里、アカネx雪枝の母子ペア。
都合、三セット。
「あと、お母さんたちに注意!」
アカネがびしっと母達へ。
「何よ?」
「何かしらぁ?」
「さっきのと違って、最後、そのまま水に落ちるから、ポロリに注意ね!」
「ぽろり……」
「さっきは雪人くんがポロリしかけて、惜しかったけど!」
「!?」
見られてた、雪人。
見てた、アカネ。
海パンのヒモを改めて締め直す、雪人。
それを横目に、アカネが続ける。
「特に、雪枝ママ!」
びしっと雪枝の、顔の下付近を指さして。
「はぃぃ??」
「雪枝ママはその凶悪なポロリは厳禁だから、落ちる時はしっかり押さえておくように!」
「はぁい、気を付けるわぁ……」
雪枝は身体の前で手を交差して、しっかりホールドする仕草で答える。
「それから、お母さん!」
「何よ?」
「お母さんは抵抗が少なくて、すぽっと脱げちゃうかもしれないから、やっぱりしっかり押さえておくように!」
美里も、雪枝と同じように、身体の前で手を交差するが。
「『抵抗が少ない』ってどういう意味かな!」
「そのまんまの意味だよっ!」
「きーっ! 自分は『ある』からってーっ!」
美里がアカネの後ろに回り込んで、アカネをぐにぐにっと。
「きゃー、やめてー。母娘セクハラ、NOォオオっ!!」
「このお乳で育ててあげたのにーっ!」
「覚えてないよーっ!」
「どぅどぅ、美里ぉ」
雪枝がヘルプで、美里を羽交い絞めにしてアカネから引き剥がす。
「むぅ……」
むくれる、美里を、雪枝が優しく抱きしめて。
「胸だけがぁ、女の魅力じゃないのぉ、美里にはぁ、もっと素敵な魅力が、ある、でしょぉ?」
そっと耳元で囁く。
「!? ……雪枝さん……」
ぽっ。
「さっ! じゃあ、先ずは、このまま、このペアで、行くよー!」
また雪人の手を引き、スライダーに登る。
母二人も、腕を組み、腰を取り、息子娘に着いて行く。
夏休みとは言え、平日。
順番待ちの列もさほど長くはないが、その順番待ちの間にポジション確認。
「雪人くん、後ろね」
「いや、なんでしれっと前?」
「前の方が楽しいもん」
「後ろから、抱き着けばいいの?」
「うん、しっかりつかまってね」
その状態を想像する、雪人。
逆パターンも想像してみる。
雪人が前になった場合、後ろからアカネに抱き着かれる事になる。そうなると、アカネがどこを触ってくるかわかったものではない。
その危険性を考慮した場合、自分が後ろになった方が、まだマシかと。
結論。
「いいよ、それで……」
母ペアの方は。
「私が後ろ、ねぇ」
「そうね、雪枝さん前だと、私、前見えなくなる……」
身長差。
雪枝の方が、美里よりもはるかに高い。因って、必然的に。
そんなこんなで、先ずは雪人・アカネの子供ペアから。
レディ?
ごーっ!