困っている人々
セシルは感じのいい庭師や、感じのいい使用人の皆様がいるお屋敷へと連れて行かれた。
だが、そのまま屋敷の奥深くへ。
湿った階段を下りた地下へと導かれる。
コツコツという靴音が石造りの廊下に響くのがちょっと不気味だ。
廊下の両端には木の扉の部屋が並んでいる。
セシルはその扉のひとつを見つめ、訊いてみた。
「この扉は、なんの部屋ですか?」
「ここは季節的に不要なものなどがしまってあ……」
そう言いかけたクラウディオは言いかえる。
「ここは季節的に不要な拷問道具などがしまってある」
季節で拷問違うんですか?
クラウディオは、今度は、その隣の扉を見て言った。
「こちらは、季節に関係なく、不要な拷問器具がしまってある」
……なにもかもしまっているのなら、このお屋敷には、そもそも、拷問道具は不要なのでは?
ふたたび歩き出しだクラウディオは鉄格子のハマった部屋の前で足を止めた。
ひんやりとした室内には、ベッドがひとつあるだけ。
地下牢のようだ。
もしや、私、ここに閉じ込められるとか?
こんな日も差さないような……
日も……
差してるな。
高い位置にある窓からは、程よい感じに昼の日差しが差し込んでいた。
「ここは一族のものが長きに渡り、使用してきた地下牢。
……代々、一族の掟に逆らったものが閉じ込められてきた」
なんだろう。
重々しく言ってはいるが、親の言いつけを守らなかった子どもが閉じ込められたところしか、頭に浮かばないのだが。
だが、まあ、こんな鉄格子のハマった地下に閉じ込められれば、快適な暮らしとはいかないだろうな、と思ったとき、クラウディオがセシルを振り向き言った。
「セシルよ。
私はお前をここに閉じ込め……
……てもいいか?」
何故、閉じ込める側が許可を求めるっ!?
そのとき、いきなり呪いに蝕まれたように、クラウディオは頭を抱え、しゃがみ込んだ。
「駄目だっ。
なにも悪魔っぽいことが思いつかないっ」
と叫ぶ。
その頃、王子は王子で困っていた――。