青年は終末世界で教師を続ける
すべてが静物に見える荒野を青年が乗る1台のバイクが走っていた。
バイクの音と時折吹く風のみが荒野の演奏家だった。
青年は少し先で何か動くのを見つけた。
少年らの集団だ。
少年らはバイクの音に気づいており、音のなる方に目を向けていた。
向けられている鋭い視線。
青年は明らかな警戒に気づき、手を振りながらにこやかな表情で少年らに近づいた。
バイクを止めて青年は問いかけた。
「君たちは何をしているの?」
すると少年らのリーダーと思われる少年が代表して答えた。
「狩りをしていたんだ」
そう言って少年はカゴと網をを青年に見せる。
しかしその中は空だった。
「何も取れていないようだけれど」
青年がそう言うと少年は明らかな落胆の表情を浮かべながら言った。
「いつもだよ」
「いつも?」
「俺達はお金がないからこうやって狩りをするしかないんだ。だけど毎回全然取れやしない。ここにはこんなにたくさん鳥がいるってのに……」
少年らはどうやら鳥を捕まえようとしているようだった。
見る見に兼ねた青年は助け舟を出すことに決めた。
「ならば僕が取ってみせよう」
「ホントか?!頼む!」
年相応の笑顔を見せる少年達。
「だけど君たちにも手伝ってもらうよ」
「任せてくれ!」
青年は少年達にワームを集めさせた。
「鳥がここらで食べているのはワームだ。このワームで鳥をおびき寄せることができる」
「こんなので本当に鳥が捕まえれるのか?」
「大丈夫。今に食いつくさ」
答え合わせはすぐであった。
青年が無防備にも近づいてきた鳥を網で捕まえた。
「鳥はエサにつられて無防備になっていたんだ」
「嘘だろ!こんな簡単に取れるなんて……」
「こんな感じにすれば君たちもきっと捕まえれるはずだよ。でもずっと同じやり方だと鳥に警戒されるようになってしまうかもしれない。工夫して捕まえ方の種類を増やすのをおすすめするよ」
「ありがとう!」
感謝する少年達。
「これからもできそうかな?」
「できるぜ!」
少年らの威勢のいい返事が荒野に響いた。
「それじゃあ僕は行くよ」
「もう行っちまうのか?この鳥食べてけよ」
「僕は自分の分をきちんと持っているから大丈夫だよ」
青年はバイクにまたがる。
するとグループで一番幼いであろう少年が青年に向けて言った。
「ありがとう"センセイ"!」
「先生?どこでその言葉を……」
「長老に教えられたんだ。たくさん知ってる人を"センセイ"っていうんだって」
「…その長老はどこにいるのかな?」
「向こうの方!あの山の向こうさ!」
そう言って子供たちが指差す。
「ありがとう。訪ねてみることにするよ」
「お兄さん、名前は?」
「シャハラン・アブドゥルって言うよ」
「またな!シャハラン!」
「ああ、またな」
今度こそ青年はバイクに乗って走り出す。
目的ができた青年の顔は心なしか明るかった。
シャハラン・アブドゥルは教師である。




