【挿話】ジェラルドとフローラの本性
時は少し遡る。
三人の極小会議が終わり、フローラはジェラルドの後に続いて部屋を出た。そのまま互いに無言で廊下を歩き、ジェラルドの部屋に入った。
その瞬間。
「…か、かわいいーーー!」
フローラが突然蕩けるような笑顔を浮かべると全力で叫んだ。
いうならば推しへの愛が溢れ出た、という感じだ。正にその通りなのだが。
「それなっ何だあのかわいさは!」
ジェラルドも両手を握り締めて共感する。
どこのJKだろうか。この世界に”JK”という言葉は存在しないが。語彙力も何処かへ飛んでいったらしい。
「もう、お嬢様がお目覚めになった時の『おにい、さま…フローラも…』とか舌足らずな感じが、普段の元気だけどどこか大人びているお嬢様とのギャップで…!それに、あのゆっくりと目を開いていく愛らしさとか!あとあと、私達がいたから元気になれたとかっ…!天使ですか!?私、もうあの時膝まずいて拝めたかったですもん!」
超早口で愛を語る。これだけの長文を息継ぎなしでよく言えたものだ。
ジェラルドも負けずと捲し立て始める。
「そうそうそう!フローラが考えを話している時もずっとうんうん頷いているし、前世の話をしてくれていた間、俺達が話を信じているのかが不安なのか、ちらちら俺達の様子を伺いながら話していたし!目標に向けて努力しようと張り切っているのもシャーロットの長所がしっかり出ていて良かったし!」
思い思いのシャーロットの大好きポイントを、息が切れるまで語った二人は妙に達成感のある顔をしながら、握手を交わす。
───これこそがこの二人の本性であった。フローラは優秀で冷静な人、という認識やジェラルドはこれまた優秀で紳士的なしっかりした人、という認識は決して間違ってはいない。
しかし、それはシャーロットに関することを除いて、という条件付きなのだ。
シャーロットの前では、心の中で彼女を称え、悶える。そしてその後はこうしてジェラルドの部屋で愛を語り合うのが日常であった。
そのため、この一面を知っているのは互いにこの二人のみなのだ。
「あぁ、そういえば主。お嬢様の件どうするつもりですか?」
フローラはふと先程の話を始める。
ちなみに、フローラはシャーロットを『お嬢様』、ジェラルドを『主』と呼ぶ。これは、ガブリエラやアラスターではなく、ジェラルドに雇われてシャーロットに仕えている、という地味な主張だったりする。
「もちろん、さっきの決定した内容に従って準備するぞ。そして騎士団は…余計な虫がつかないように見張っておこう」
2人は互いの決意を確認するように、再びがちっと熱い握手を交わした。




