表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

激闘! 都市伝説 VS 科学の力 第一話 メリーさん VS スマフォAI

作者: 黒いトカゲ

第一話 メリーさん VS スマフォAI


これは、都市伝説の雄メリーさんと、人類科学の壮絶な戦いの記録である。


メリーさんVS最先端AIスマフォ レディーファイ!





始まりは、なんの変哲もないスマホからの呼び出し音だった。


「もしもし、私、メリーさん。

今、貴方の街の駅についたの。」


「メリーさん?」


電話に出た彼に、少女と思しき声の主はそう答えた。


「申し訳ありませんが、相手をお間違えでは有りませんか?」


思い当たる人物がいない彼はそう問いかけるが、すでに電話は切られていた。


「……メリーさんなんて、知り合いに居ないはずだよな?」


聞き覚えのない名前に彼が呟くと、スマホのAIがすかさず回答した。


『現時点で、マスターの肉親及び知り合いに、『メリー』および、『メリーさん』と名乗る人物は登録されておりません。

ただ、状況から推測した場合、都市伝説と呼ばれるものの中に該当する存在があります。』


「都市伝説?」


『はい、『メリーさん』と名乗る存在から、電話がかかってきます。

そして、その電話内容は『もしもし、私メリーさん』と名乗ったあと、現在地を言って電話がきれるのです。

ですが、その現在地は少しづつ電話を受けた人物に近づき、最終的には、相手の背後に忍び寄り、その人物を刃物で襲うというものです。

もともとは『メリー』という捨てられた人形が、持ち主の少女に復讐するというホラーでしたが、後に派生型が作られ、無関係な人間に突然、『メリーさん』から電話が来ると言ったものも一般的なものとなっています。』


「いきなり殺されるのは勘弁願いたい。

しかし、なぜ俺のところにそんな電話が?」


『オリジナルは復讐型ですが、派生型は完全に無差別です。

本人に何ら落ち度がなくても、何の関係がなくても、『都市伝説に狙われた時点で』問答無用です。』


その回答に、青年は深いため息をついた。


「メリーさんなんて訳のわからん物に狙われるとは……。

以前のストーカーといい、前世でなにかやらかしたのか俺は。」


落ち込む彼に、AIは淡々と答える。


『メリーさんは、都市伝説と呼ばれるものの中では非常に有名です。

シリアスなホラー物からコメディ、恋愛ネタと幅広く扱われており、普通ならホラーやオカルトに興味がない人間でもメリーさんくらいは、一般常識と同レベルで認知されているものなのですが……』


「ホラーや都市伝説なんぞ、知ったところで腹の足しにもならなければ、人生の楽しみにもならん、時間と記憶の無駄だ」


『その極端な趣向は、一般的にはあまり受け入れられないものと思います、もう少し妥協を覚えられては?』


「それより、今はこのはた迷惑な都市伝説にどう対処するかだが」


彼の問に、既に対応策を用意していたのだろう、AIは淡々と答えた。


『『メリーさん』の音声·発声パターンのデータを分析·登録しました。

ガチャ切り対象者に認定します。『よろしいですか?』』


「ガチャ切りに設定しても意味なくないか?」


AIの問い合わせに素朴な問いかけをした彼にAIは、これまた淡々と応える。


『報復型ならば、相手とメリーさんの間には確たる縁が結ばれていますが、無差別型は相手とメリーさんの繋がりは電話のみです。

それを断ち切れば、縁が断ち切れる可能性は高いと判断しました。

数々の都市伝説の殆どが人の想像の産物ですが、メリーさんは、最も顕著な『想像力の怪物』ではないかと推察されます。』


もともと日本産のAIらしく『縁』『言霊』『縁起』『転生』といった、日本的な信仰や価値観に理解の深いAIは、いかにも日本人的な発想で『メリーさん』に対抗しようとしていた。


「想像力の怪物?」


『有名所のメリーさんの物語を解析した結果、メリーさんは、実体を持たず、相手に『想像させる』ことで、この世界に現出できるのではないかと判断しました。

態々、電話をかけて、自分の現在位置を相手に知らせるのは、『現在位置に居るから』電話を掛けるのではなく、現在位置に居ると相手に信じさせることで、『そこに出現する』のではないかと推察します。

メリーさんは相手に、『自分の居場所を』を認識させることで、この世に存在できるのではないでしょうか?』


「原因と結果が逆ってことか。」


ホラーなどに興味のない彼は知らないことだが、メリーさんには大別すると2パターンが存在する。

どこまで逃げても、一瞬で追いつかれ、絶対に逃げられないパターンと、一般人と大差無い移動能力なので、ターゲットが金や権力に物を言わせて、高速で逃げ回りメリーさんをひっかき回すというパターンだ。


前者はシリアスホラーに、後者はコメディでよく見られるタイプである。

そして今回、AIが参考にしたのは、シリアスホラーパターンである。


「はい、故にメリーさんに『現在位置を言わせなければ』彼女は、現出出来ない可能性が高いと思われます。」


「じゃあ、俺が直接切ってもいいように思うが?」


『それが出来るならばその通りです。

ですが、相手は曲がりなりにも都市伝説。

『メリーさんに狙われた相手は、メリーさんの電話を拒めない』という呪いがかかる可能性も否定できません。』


そう言われると、彼としても、確かにと思う。


実際、ドラマや映画などでは、この手の『都市伝説』や『ホラー』は、ターゲットが相手から逃げられない。というのはもはや定番だ。

『電話を受けない』『電話を途中で切る』というのも、『相手から逃げる』にカウントされるなら、できない可能性が有る。


「だが、ガチャ切りも無力化されないか?」


『この手の都市伝説のお約束の一つに、『第三者の介入』は許されています。

……まあ、そうでないと物語が成立しなくなるためでしょうが、『都市伝説』も『ホラー』も『人間の想像力が生み出した』一種の物語ですから、この『物語の不文律』は適用される可能性が高いと判断しました。』


「つまり、お前は善意の第三者ということか。」


『はい、ただし『私を認識』したメリーさんが、私もターゲットに含めた場合、私も『電話をキャンセル出来ない』呪いに捕まる可能性があります。

ですので、私の存在は、メリーさんにはご内密にお願いいたします。

あくまでも、近くにいる『誰かが』『無理やり電話を切った』とメリーさんに誤認させる必要があります。』


「確かに、呪いに狙われないためには、その程度の用心は必要だな。」


『はい、ですので、ガチャ切りも適度に時間をかけて切ります。

具体的にはメリーさんが名乗る前後で切りたいと思いますがよろしいですか?』


「ああ、そうしてくれ」


『了解しました。

登録名『メリーさん』をガチャ切り対象とします。

特殊ケース1フォルダに分類。』



かくしてここに、都市伝説の雄、メリーさんと、現代科学の結晶、スマフォ制御AIの戦いの火蓋が切って落とされたのだった。



『プルルル……もしもし、私、メリー ガチャン!』


『プルルル……もしもし、私、メ ガチャン!』


『プルルル……もしもし、私、メリーさん。

今 ガチャン!』


『……も、もしもし?私 ガチャン』


ガチャ切り登録してから、わずか1分後にはメリーさんと思しき相手から、電話が掛かってくるのだが、どうやら予想通り『『どこに居るのか』が確定しないと、出現できない』という予想はあたったようだ。

既にあれから半日は経っているのに、未だにメリーさんは、我が家まで来れないらしい。


あ、メリーさんなる『都市伝説』がどんなものかは、ネットで確認済みなので、基本的なことは理解した。

しかし、本来は愛らしいビクスドールが恐怖物とか、似合わないにもほどがあると呟いたところ、AI曰く、『ギャップ効果』なのだとか。

そういうもんなのか?

とりあえず、今のところは順調である。

さて、これが無事に終われば良いのだが……。


『も゛し……ヒック……も゛……じ……あたじ……ヒック……メ ガチャン』


「なあ、なんか愚図ってるように聞こえたのは、俺の気の所為か?」


『いえ、間違いなく半べそでした。

後、半日も続ければ、根負けするのでは?』


……うちのスマフォのAIが、容赦無い件について。


「なんだか気の毒になってきた、少し話してもいいか?」


『推奨はいたしかねます。

相手はターゲットを殺す可能性のある、極めて危険な存在です、このまま、相手が諦めるまで無視するべきかと。』


それはそうなのだが……。


『プルルル……もしもし、私 ガチャン』

『プルルル……もしもし、わ ガチャン』

『プルルル……もしもし ガチャン』

『プルルル……もしも ガチャン』


切り方が更に容赦なくなっていくガチャ切りに、遂に堪忍袋の緒が切れたのか、メリーさんは次の手段を使った。


突然、頭の中に怒声が響いた。


『ひどい!あんまりなのよ!』


「うお!何事!!」


『電話じゃ話す間もなくきられるから、直接、頭に声を届けているの!』


なんと!

メリーさんはテレパシーまで使えるのか!

ネットにはなかった新情報だ、スゲーー!!

これは本当に凄いな!

よし!相手がテレパスならば、あの必殺技だ!!

くらえ!

必殺!!


(ファミチ○下さい……)



『当店ではその商品は取り扱ってないのよ。

メニューをご確認の上、再度ご注文くださいなの。……って、何言わせんのなの!』


(っ随分軽いな!ってゆうより、知っているのか、ファ○チキのことを!)


まさか、必殺技『ファミ○キ下さい』がこうも容易く破られるとは!!


『テレパシー使ったら、日本人なら絶対そう来るから、返し技は基本って、口裂け女に言われたの……』


(あー、確かに、口裂け女なら、時代的にもフ○ミチキネタ知ってそう(笑))


『それよりも、あんまりなの!

なんでガチャ切りするの!

ていうか、何でできるの!

私の電話を受け取ったものは、最後まで聞くはずなの!』


おお!流石だ我が愛機よ!

本当に、メリーさんの電話は拒めない仕様らしい、お前の推測があたったぞ!


(その呪いの可能性に気づいた奴が、都市伝説も物語の一種なら、第三者の介入は可能じゃないかと言ってな、で、そいつがガチャ切り担当してたんだ。)


『チッ!知恵の回るやつなの!

そんな手で私を妨害するなんてひどいの。

もう、いい加減にしてほしいのよ、お願いだから、電話を受けてほしいの』


(いや、テレパシー使えるならこのままで良くないか?

流石にこの手は防ぎようがないし。)


正直、怖いことは怖いが、相手がテレパシーを使える時点で詰みだ。

そう覚悟したのだが、意外な回答をメリーさんが返してきた。


『……電話を使って相手の背後に忍び寄るのがメリーさんなの。

テレパシーを使ったら、それはメリーさんではない、別の『都市伝説』なの』


なるほど、都市伝説にも厳密なルールがあるわけか。


(しかし、自分の命を狙うやばい相手を自ら招き入れるのは……)


『え?命なんか取らないの!

一体どこのガセネタなの!?』


(ええ!だってメリーさんって、背後に刃物持って現れるヤベー奴って)


『刃物は、様式美なの。

そもそも、刃物に見えるように装飾してるけど、プラスチックの玩具なの。』


様式美かよ!

しかも玩具って……。


『相手の背後に現れてビビらせるだけなの。

相手がビビったら、それで、『都市伝説ノルマ』は完了なの。

脅かした相手にはそれ以上何もせず、クールに去るの。

これが、メリーさんの美学なの』


都市伝説にもあるのか、ノルマ。

そのうちノルマそのものが都市伝説に成る日が来るのかもな。


(その都市伝説ノルマってなに?)


『私達都市伝説は、人間に信じられてこそなの。

忘れ去られたら消えてしまうの。

だから忘れられないように、毎日一定数の人間を怯えさせて『都市伝説の○○は健在なり』と人間達に認識させる必要があるの。

それが、私達のノルマなの。』


なるほど。


『因みに、人を殺すタイプの都市伝説は『遭遇したら殺されるなら、その存在を教える間もなく死ぬよね?

どうやってそれを他人に知らせるの?

嘘くせー』って、存在自体疑われて、消えちゃうから、長続きしないの。』


(な、なるほど……

でもそれだと、メリーさんもヤバそうな感じだけど。)


『……あなたは、私達の伝説をどう聞いたの?』


(……ええと、電話の後に背後から刃物で襲う……だったかな。)


『『襲う』だけなの?

『殺す』と明言されていたの?』


……言われてみれば……確かに『殺す』とは明言されていなかったか?

むう、言葉は難しいな。


(じゃあ、ほんとに命取らない?

脅かすだけ?)


『そうなの。

殺したり、致命傷を負わせたり、体内の臓器を抜いたりなんかしないの。

『血を大量に抜く』なんて噂もあるけど、あれは吸血鬼の仕業とゴッチャになってるの、濡れ衣なのよ。

因みに、脅かした相手がショック死したりもしないように、相手は肉体的に健康な13歳以上46歳未満、精神的にもタフで、どれだけ脅しても、精々、熱出して寝込む程度の相手しか選ばないの。

私達メリーさんは、良心的なの。』


……良心的な都市伝説とは一体……。


(話はわかった、命に関わらないなら構わないが、ここまでネタばらしした相手でもいいのか?)


『正直、微妙なの。

でも、ここまで深く関わったなら、きっちり最後までやらないと、私も落ち着かないの。』


(わかった、少し待ってくれ、ガチャ切りを辞めるように頼むから)


『うん、お願いなの。』


「『メリーさん』をガチャ切り対象から解除」


『よろしいのですか?』


「どうやら、命に関わるような大事にはならないらしいからな、それなら問題なさそうだし、頼む」


……それにちょっと虐めすぎたし、お詫び代わりに最後まで付き合うさ。


『了解しました、『メリーさん』をガチャ切り対象から解除します。』


ガチャ切りから解除した途端、高らかに鳴るスマフォ。


『もしもし、私、メリーさん。

今、○✕公園入り口にいるの。

……電話で要件を言い切れるって、素晴らしいの!』


メリーさんは、邪魔をされず電話できる素晴らしさに、喜びを噛み締めているようだ。

……スマン、ガチャ切りしてホント、スマン。


『もしもし、私メリーさん。

今、ファミリー○ートの前にいるの。』


「お、あと50mくらいだな、ついでにファミ○キ買ってきて下さい。」


『それはテレパシー専用ネタなの、付き合う気はないの。』


意外にメリーさんはドライだった。

……○ァミチキ食べたかったのに。


『もしもし、私、メリーさん。

今、貴方のお家の玄関前にいるの』


「おお、いよいよ大詰めだな、頑張れ。」


『……なんだか、初めてのお使いっぽいから、やめてほしいの……』


そう、いよいよ大詰めだ。


『もしもし、私、メリーさん。

今あなたのお部屋の前にいるの』


「おお!遂に来たー!

あと一回!あと一回!!」


『流石に勝手が違いすぎて、ドン引きなの

もう少しそれらしくしてほしかったの。』


「いやー、命の危険がないとわかると、むしろ、噂のメリーさんに会えるワクワクが止まらなくてな(笑)」


『私も初めての経験だから何とも言えないけど……。

都市伝説の恐怖は木っ端微塵なの。』


あ、ちょっと落ち込んだっぽい。


「まあ、あと一回だから、挫けず頑張れ」


『元凶が言っても説得力無いの。』


おおう、すまん。


『もしもし、私、メリーさん。

今、あなたの後ろにいるの。』


おお!ここで俺が振り向いてビビれば、めでたくメリーさんのノルマは完結か!


『長い道のりだったの、やっとここまでこれたの。』


別にここまで近づいたなら電話いらなくね?と思った俺の考えがわかるかのように、彼女は返した。


『それが『メリーさん』の矜持なの』


誇らしげな彼女の声に、ちょっとカッコいいかもと思ったのは秘密だ。








やっとここまで来たの。

本当に長かったの。


今までの相手は、簡単に後ろを取れたの。

『もしもし、私、メリーさん。

今貴方の街の駅に着いたの』の定型文から始まって、一時間もすれば、最後の『もしもし、私、メリーさん。

今、あなたの後ろにいるの』で決着がついていたの。


……でも今回は違ったの。

最初の到着宣言から、電話をかけてもかけても、ガチャ切りされて、次へ進めなかったの。

本当に困って、泣きそうになったの。


……泣きそうに『なった』だけなの!

泣いてなんかいないの!

ホントなのよ!!


本来は禁じ手だけど、どうしようも無いから、最後の手段のテレパシーを使ったの。

でも、本当に禁じ手なのよ。

これを安易に使ったら『電話なんかいらねーじゃん』って、無粋なことを言う奴が出てくるから、簡単に使っちゃだめなの。

『電話を使って相手を追い込む』のが、『メリーさん』なの。


相手も納得したので、ガチャ切りは無くなったけど、その時色々ネタバレしちゃって、都市伝説の恐怖とか無くなっちゃて、ちょとやばいかもと思ったの。

でも仕方ないの。

そうしないとガチャ切り止めてもらえなさそうだったんだもの。

大事の前の小事なの!ホントなのよ!?


そしてついに、ここまで来たの!

最後の決め台詞を今こそ言うの!


『もしもし、私、メリーさん。

今、あなたの後ろにいるの。』








そして、俺は振り向いた。


そこにいたのは、サラサラの輝く銀髪の長髪に、黄金の瞳、すべすべお肌に愛くるしい唇、ちょっと高めの鼻という『ザ·美少女なお人形さん』であった。

彼女の持つ、巨大なハサミも、どこをどう見ても、銀色に塗ったプラスチック製のハサミであった。


え?

恐怖要素どこ?

え?

今までの連中はこんな可愛らしい人形を見てビビったの?

ウッソだーという、疑問で脳みそが真っ白である。


『え?

どうして怖がらないの?』


どうやら、メリーさんも俺の反応に驚いているようだ。


「いや、そんな可愛いお人形が、プラスチックのハサミ持てても全然怖くないんだが。」


『うそなの!

今までの人間は、私を見たらみんなビビって、泣きながら命乞いしたの!

そんなはずないの!』


都市伝説の『恐怖』を全否定されて、メリーさんは激おこだが、可愛らしいお人形が駄々をこねても、愛らしいだけでちっとも怖くない。


コレはどういうことかと首をひねると、胸ポケットのスマフォが答えた。


『恐らく、メリーさんが想像の怪物だからでは?

メリーさんの『ネタバラシ』の結果、マスターにとってメリーさんは恐怖の存在ではなく、ただ脅かすだけで実害のない存在と認識されたのでしょう、その結果、マスターにとってはメリーさんは、『無害なビクスドール』として認識されたのだと思われます。』


「え?

つまり、俺が、『メリーさんは怖くない』と思いこんだから、唯の可愛いビクスドールに見えると?」


『恐らくは。』


俺とスマフォのやり取りに、メリーさんは激おこだった。


『そんなの困るの!

驚いてもらわないと、ノルマが達成できないの!』


「いや、そんなこと言われても……」


マジでどうしたものか、悩みながら彼女を見て……。


「よし、結婚しよう!」

『ふぁ?』


俺の突然の宣言に、流石に意表を突かれたのか、硬直するメリーさん。


「要は、人間に忘れられなければいいわけだ、なら俺とずっと一緒にいれば、俺はキミを忘れない、つまり『人間に認識される』わけだから、消えない。そうじゃないか?」


『メチャクチャなの、そもそも都市伝説と人間が結婚なんてありえないの!』


「ククク、気にするな。

実は、俺は幼女愛好家でね。

あ、ロリとは違うぞ、あくまでも、実年齢ではなく、外見幼女を愛するものだ。

生身の女はすぐに劣化するが、君ならそんな事は無いだろう。

まさに、我が花嫁にふさわしい!」


『ひいいい!

とんだ変態さんなの!

もういいの、サヨナラなの!』


『メリーさん』は一瞬のうちに消え去ってしまった。


『流石はマスター、『メリーさん』ですらドン引きとは。』


愛機は茶化すが、あの子は俺の理想だ、そう簡単に逃しはしない。









冗談じゃないの、あんな変態だなんて、信じられないの。


私は都市伝説だけが存在できるグニャグニャの混沌世界に逃げ込んで、震えたの。


話が通じる人間だと思ったら、とんでもない奴なの、あんなおかしな人間、もう絶対ノーサンキューなの。


ノルマを達成するために、もう一度電話を掛けようとしたの


『もしもし、私『俺、リュウジ、今君の隣に居るの』』

ふぁ?



「やあメリーさん、お帰り」


どういうことなの?

電話を掛けようとしたら、いきなり男の声が、それもあの変態の声が割り込んできて、気が付いたらあいつが隣りにいるの!


パニクっている私に、あの男の胸ポケットに入っている小さな板が話しだしたの。


『『メリーさん』は想像の怪物です。

ならば、強く想像すれば、メリーさんを自分のもとに呼び出せるのではと、試した結果、成功した。

それだけのことです。』


『そんな簡単にできるわけないの!』


私の悲鳴に、板切れは平然と答えたの。


『普通ならばそうでしょう、ですが

貴方とマスターはテレパシー、つまり精神的に繋がり、『メリーさん』の裏側すら種明かししました、これが、強い絆となってしまったのではないでしょうか。』


う、嘘なの、もしもその通りなら……。


「これで、たとえ逃げても、すぐに呼び戻せるな。」


ひ、ひいいいいいい。

『だ、誰か助けてなのーーーー』







それから60年が過ぎて、今日は、ある男性のお葬式なの。


『見送らなくて良かったのですか?』


「流石に、60年も外見の変わらない『恋人』なんて可笑しいの。

人間の死は人間が見送るのが正しいの。」


あれから結局、何度逃げても無駄だったので諦めて、付き合ったの。


ニンゲンのコイビトって始めはよく分からなかったけど、流石に10年も付き合えばそれなりに様になったの。

一応、口裂け女に色々アドバイスももらったの、その時は『自分はまだ独り身なのに』とかネチネチ言われたこともあったけど、今は懐かしい思い出なの。

それなりに楽しかったし、悪くはなかったけど、やっぱり、老いていく人間を見届けるのはちょっと寂しかったの。


天に登る煙を見ると、その煙と一緒に、彼の魂が登っていくのも見えたの。


流石に、あの世からは電話で呼び出す事もできないから、これで本当にお別れなの。


「ちょっと寂しいかもしれないの。」


『おや、そう思われますか?』


「それなりに楽しかったの、でも今日からは、またふつーの『メリーさん』に戻るの」


そう呟いた時なの。


『プルルル』


スマフォが急に着信音を鳴らしたの。


可笑しいの、このスマフォはもう古すぎて、通信規格が合わないから、通話できないはずなの。


『プルルル』


でも止まらないの、おかしいと思いつつも、スマフォの通話アプリを立ち上げたの。


『もしもし、俺『メリーさんの恋人』今君の隣にいるの』


驚いて視線を向ければ、そこには彼がいたの。


「どうして?

天に登ったはずなの」


「ああ、人間の部分はな。

君と離れたくないと思った部分は『都市伝説』として残ったらしい。」


「呆れたの、未練がましすぎるの。」


「おや、俺は消えたほうが良かったのかな?」


「……そんなことないの……」






その後、都市伝説に新しいお話が追加されましたとさ。


どっとはらい。






都市伝説Fail No 99〇△✕『メリーさんの恋人』

西暦2090年代から語られるようになった、『メリーさん』の相棒。

初めは普通の『メリーさん』と同じパターンで始まるのだが、ラストの『私メリーさん、今あなたの後ろにいるの』という言葉に振り向くと、可愛らしい少女の姿をしたビクスドールの真後ろに2m近いガタイのいい男も現れ『俺の彼女に、色目使うんじゃねぇ!』と怒鳴りつけてくる怪異。

『せっかく都市伝説のお仕事してるのに、台無しなの。』とメリーさんが愚痴るまでがセットなっている。

この『メリーさんの恋人』は、銀髪、黄金の瞳の『メリーさん』が男を相手にするときのみ現れ、女性の場合は一切現れないため、女性の時は、テンプレ通りの『メリーさん』となる。

この『メリーさんの恋人』は、元々、メリーさんに狙われた男性だったが、トチ狂って『メリーさん』を口説き落とし、事実婚まで行ったらしい。

その後、天寿を全うした彼は、その強い思いによって、死後、都市伝説として生まれ変わり、現在も銀髪、黄金の瞳の『メリーさん』とともにある。

事実上夫なのだが、当然ながら、法的に認められることはなく、現在も『恋人止まり』との事。

なお、この情報は、『メリーさんの恋人』への直接取材で明らかになった『事実』である。


また、最近では、『メリーさん』の愛らしさにトチ狂った幼女愛好家が、自分の理想の『メリーさん』を口説き落として新たな『メリーさんの恋人』になるとか、無責任な噂が、ネット界隈にはびこっている。

なお、第2話以降は未定である!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ