焦燥~ヴィアルド~
アレクシアがいなくなった。
よりによってディクス家にいながらにして、だ。
同時にエリシオも姿を消した。
当日…つまり昨日、エリシオが誰かを連れてディクス家を訪れていた。
エリシオか『誰か』が主導でアレクシアを連れていったことは間違いないだろう。
よりによってあの日はアレクシア以外、仕事か社交でいなかった。
アレクシアが伴っていた侍女も一緒に行方不明だというから一緒に連れて行ったのだろう。
王がすぐに公にしたからといって油断しすぎた。
私の責任だ。
アレクシアがいなくなってから、まだ20時間程度と考えられる。
それほど遠くに行けていないはずだ。
エリシオが主導ならばまだいい。
必ず大きな怪我などなく、それなりの待遇を用意されているはずだ。
エリシオも何らかの理由でついてこざるを得ず、被害者の1人だった場合がまずい。
傷をつけようと何も思わない輩がアレクシアに触れているなど虫唾が走る。
彼女の平穏を奪ったやつらなど許さない。
私の力が世に出ようと構わない。
だが実行するまえに父の手の者が来た。
父は私より先にアレクシアの誘拐を知ったらしい。
『40時間の猶予を。国で動く。安易に力を使わぬように。今後のアレクシア嬢のため。』
わかっているが気に食わない。
彼女との未来を考えるならば力を使わずに救いたいのも確かだ。
つまり、誰にも気づかれない程度で使っていくしかない。
私は、神の気まぐれのように生まれ落ちた。
王族のみに脈々と受け継がれる伝承のうちの1つ。
『闇色の髪、人外の力を所持す。』
恩恵となった時代も災厄となった時代もあったそうだ。
正直この力が何の力かはわからないが、総じて何かを強化するということができる。
彼女の後ろから声をかける時だけ、私の存在感を強化した。
ダンスの日は私とアレクシア以外の参加者の存在感を強化した。
今は乗っている馬と私自身の運動能力と体力を強化している。
初めて力を使った日はすぐに倒れた。
慣れると息をするように使えるようになった。
黒髪は目立つからと、些細に使い続けてきたことが今役に立つとは。
絶対にアレクシアは助ける。
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