寄せられる心
私の誕生日。
ヴィヴィアン様の家にお邪魔するため、朝から綺麗にされていく私。
柔らかい黄緑をベースに白のフリル、ライラックの色のリボンがあしらわれたドレス。
リボンが胸元と腰だけにあってフリルも大振り過ぎないから、見せられた時に私も腰が引けなかった一着なのよね。
日傘も合わせたような白とパープルのものがあるからぴったり。
髪を三つ編みにしてくるっと回して留めてくれるポーラが取り出した髪留めは見たことがない。
「ポーラ、その髪留め初めて見るわ。」
お兄さま達が買ってくれるドレスなどもきちんとその都度確認してお礼を伝えているから全く記憶に無いのは気になる。
「ああ、こちらですね。本日の誕生日プレゼントで頂いたんですよ。」
「お兄さまかしら?でもそんな綺麗な宝石が付いた物を?」
普段からあまり宝飾品に気を向けない私なので、お兄さま達も必要以上にそういったものは用意しない。
それよりもシンプルで読書を楽にしやすいドレスや、肌触りが良いものなどを好むことを知っているから。
「いえ、ご家族からではありませんよ。」
「あら?どなたかしら…。」
そう言っている間に、最終チェックもなされ、促される。
「さあ、お嬢様。用意ができましたから、応接室に向かいましょう。」
「応接室??」
お客様がいらしているということ?
ポーラが言うから行くけれど…これから私は外出しないといけないのに誰かしら。
応接室にポーラがノックをしてドアを開けてくれる。
中に入るとお母さまと、今日は偶々休みだったステファン兄さま、そしてアルヴィ様がいる。
「アルヴィ様?え?」
「アレクシア嬢、今日の装いも素敵だね。それに、そちらも付けて貰えたようで良かった。嬉しいよ。」
何故アルヴィ様がいるかはわからないけれど、この髪飾りは彼が持ってきたのね。
「さ、シア、もう出る時間だろう?わざわざアルヴィ殿が迎えに来てくれたようだから、行ってくると良い。帰ってきたら家でのお祝いもあるから疲れすぎないようにね。」
「家でのお祝いは明日でも良いのよ?初めてのお呼ばれだもの、楽しんでいらっしゃいな。」
ステファン兄さまもお母さまも、やっぱり私個人への初のお誘いに嬉しそう。
やっぱり友人がいないことを心配されていたのかしら。
「アレクシア嬢、エスコートさせていただいても?」
すぐ傍でスマートに手を差し出される。
「ええと、是非。何か粗相があれば教えてくださいね。」
家族以外のエスコートも、個人的に人の家に行くことも初めてのことばかりだもの。
「もちろん。何かあればフォローだってするよ、任せて。」
嬉しそうなお母さま達に見送られ、アルヴィ様の腕に手を預けて外へ向かう。
外は晴れていて、暖かい日が差している。
羽織るショールも初めて見る物。
銀糸の刺繍が美しく、手触りが良いのに暖かい。
私に合わせてくれる歩調も、優しい眼差しも、心に占める割合が増している。
彼が好きなのかも。
どうしてかわからない。
私が初めて、彼にだけこんな気持ちを持っていることだけは本当。
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