囚われていく心~エリシオ~
『エリシオ、ごめんなさい。貴方は大切な家族なの。』
わかってはいた。
お嬢様は5年もずっと傍にいた人間を男女云々と見られないだろうことは予想していた。
あの日、お嬢様は告げた後、自分自身で驚いていたようだった。
それもこれも、アルヴィが急にいなくなったせいだ。
あいつのせいだ。
思い出してみれば、あいつが現れてからアレクシア嬢が変化を見せ始めた。
いつからかはわからないが、従僕として信頼を得る前に文化院で出会ったようだった。
気づくと書庫前のあずまやで、親し気に話していた。
どれほど勉強をしても彼女に本の話は出来るほどになれなかった俺を軽々と飛び越えて…いや、ずっと先を歩いていた上で横から入り込んできた。
ずっとそばに居た俺を嘲笑うように、アレクシア様の隣に座っていた。
例え傍目におかしくなくても、俺から見れば近すぎる場所に堂々といるあいつが許せなかった。
アレクシア様は、あいつとの距離感に違和感も嫌悪感も無かった。
基本的に懐に入られるような距離感であれば誰であれ避けていた彼女が、許したあの場所。
絶対に渡さない。
誰であろうと俺がお嬢様を守る。
何があろうと俺がお嬢様の傍にいる。
アレクシア様は騙されているのでは?
急に現れてあの短期間で親しくなるのは余程だ。
入念に情報を得て、彼女の事をじっくり調べた上で近づいたのだとしたら?
王子とはいえ伯爵籍に収まったが第一王子派が過激化すれば地位は危うい。
同格で歴史が浅くはないヴィクス伯爵家の後ろ盾を手に入れて簡単に潰されないようにしている?
そうだとすれば、彼女は利用されるだけだ。
彼女が利用されるだけされ、傷ついて、行き場を無くすことを見過ごすわけがないのに。
あいつは俺のことを路傍の石程度にしか見ていない。
俺ならあいつの足元を掬える。
今一時的に離れることを、彼女自身は許してくれるだろう。
あいつの被る皮をはいで見せなきゃならない。
あの魔の手から守れるのは俺だけだ。
俺が守らなきゃ。
何をしてでも。
俺が唯一、彼女の傍にいる権利を持つんだ。
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