入学式
あの後、時間が無いと言われ、考える間もなく入学式を行う会場に向かって来て、着席した。
エリシオがまさか…冗談ということもないだろうし。
「アレクシア嬢?」
「わっ、はい。」
びっくりした。声をかけてきた隣をみると、ヴィアルド様がいる。
「大丈夫?顔色が良く無いし、何かあった?」
「はい、大丈夫…だと思います。あったといえばあったような…。」
「そうか。まぁ、話を聞くのは出来るから、言いたくなったらいつでも言ってよ。」
「ありがとうございます。…そういえば、ヴィアルド様が何故隣に?」
「学園にはアルヴィとして入学になるからね。学園の理念の最初の一歩として家名や家格ではなく個人の名前順に座るようになっているんだ。それでお隣だね。」
「なるほど。では隣人として改めて、よろしくお願いしますね。」
「今日から学園ではアルヴィと呼んでくれ。ヴィアルドとしてあるときから知り合いだったと周囲が知ると、アレクシア嬢に迷惑がかかるかもしれない。」
迷惑。
昨日から、そういう話が多いのね。
噂話の種になり、勝手に育てられてしまう。
私とヴィアルド様との話も、私とエリシオの話も。
「アレクシア嬢?」
「え?あ、はい。一応気を付けます。」
「呼びにくければ学園では私と話さないという方法もあるからね。好きにして良いよ。」
どう返すか考えようとすると、学園理事長が話し始めてしまった。
理事長の挨拶、一部教員の紹介、そして現学園生徒の代表による挨拶と祝辞。
式の間、考えていた。
エリシオの事、今までの事。
ヴィアルド様とアルヴィ様の事。
エリシオの気持ちは正直まだ私にはわからない。
彼に言われた好きというのは、今まで私がエリシオに持っていたものとは全く違う心なのだろうから。
ヴィアルド様とアルヴィ様の立ち位置や大変さの方がまだわかる。
貴族と王族の問題や権利を放棄した王族に立ちはだかる壁の方がよっぽど私が知って考えられる範囲にあるから。
少しエリシオの事は置いておかせてもらうとして、ヴィアルド様の事は今決めないと学園で話せなくなってしまう気がする。
さっきの、『好きにしていい』と言った時、何故かダンスの夜を思い出してしまったから、関わらないという方向は無くなってしまった。
アルヴィ様はヴィアルド様であるし、彼は優しい友人だから、今後も話したい。
でもヴィアルド様として話すことが学園で彼に支障を与えるのなら、私がアルヴィ様と関わっていこう。
呼び方に気を付ける事。
これまでで知っている彼のこともあからさまにわかっている顔をしないように気を付ける事。
式が終われば順番に誘導されて、今後多くを過ごすクラスへ向かう。
先に促された為、私やヴィアルド様含むクラスAの面々となる人たちが起立して移動をする中、私はそっとヴィアルド様に話しかけた。
「アルヴィ様、これから学園では、式で隣になった新たな友人として改めてよろしくお願いします。もちろん、ヴィアルド様は今後とも。」
アルヴィ様はいつものような笑顔を向けてくれた。
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