私の結論
私が言うことが最も角が立たないのかも。
「あの…つまり、おそらく、噂として尾ひれがつけば、些細なミスを盾に女性初の柴珠玉選考に割り込んだ、と私自身が見られることもあり得るということを懸念されているのですよね?」
「…その通りです。アレクシア嬢がおっしゃる通り、人の口に戸はたてられません。噂を阻止することも難しい。」
「アレクシア。」
「なんでしょう、お父さま?」
「シアは、どうしたい。」
お父さまにとって必要な情報は得られたということかしら。
ここまでの事実と推測で出す答えは、私に任せてくれるのね。
「セルファン院長様。伯爵家の一員とはいえ、私などのような幼い者の名にまでお気遣いいただき、ありがとうございます。
今回の出来事に関してですが、私の寄稿は無かった事にしていただくことは可能でしょうか。」
「それは…既に寄稿論文として記録してしまっておりますので…なかったことにというのは難しいことでして…。」
「では、選考から除いてください。私の寄稿は子どもの遊び心で送られて来たもの。ディクス家としても手紙の件は家族でのみの共有でした。選考から落ちたという手紙だったとすれば誰も疑問に思わないでしょう。」
「ですがそれでは、あの論文は書庫の隅に追いやられてしまいます。」
院長はあの論文を本当に素晴らしいと思ってくれているのね。
それだけで、十分な成果だった。
私の初めての論文…申し訳ない扱いになるけれど…。
「構いません。今後、女性の論文を選考に上げることを前向きに検討し、体制を整えていっていただければ。
慣習を盾に検討の道筋を先立てず、理論的に、整然と話を進め、現代に合わせて行っていただけるのでしたら、今回の論文の件は目を瞑りましょう。
私の生み出した文章です。私が、許します。」
「必ず!盾を割って見せましょう、剣より強い力で。美しい道を描き、新たな文化院として組み立てていきましょう。ですから、どうか、お許しください。そして、またいずれアレクシア嬢の論文に出逢えることを期待できる我々となることを誓います。」
わざわざソファから降りて、高らかに約束してくれたセルファン院長を信じることにした。
私が頷けば家族は穏やかに受け入れてくれた。
その後はお父さまとお母さまは今後の詳細も含めセルファン院長と話すことになった。
そして私はお兄さま達と文化院の書庫へ。
最後に、ヴィアルド氏に案内してもらい、書庫の中でも選考漏れの論文が仕舞われている場所を教えてもらった。
書庫の一般開放部分にあって良かった。
後ほど、私の論文もここに来るだろう。
少し寂しいけれど、大丈夫。
読んでいただいてありがとうございます!
少しでも面白い、続きが気になる、と思って頂けましたらブックマークと
評価☆☆☆☆☆よりお好きな数の星をつけてもらえると投稿の励みになります。