病み上がり
いつも熱を出した後、立ち上がって落ち着くまでが大変。
立つとくらくらして目の前が暗くなるし、方向がわからなくなる。
じっとして、何かに手をつくか、誰かに支えてもらって収まるのを待つ。
やっと立てるようになっても凄く疲れてしまうから、無理をしないようにしないといけない。
昨日は目が覚めたばかりで立つことは禁止だった。
今日はベリオ兄さまとエリシオがいるから試してみて良いことになった。
私を支えるためにすぐそばにお兄さまがいてくれるから安心。
「シア、ゆっくりだよ。」
「ええ。」
時間が経ってしまっているからか、立てても躓きやすくて危ないのよね。
「アレクシア様。お茶も入れてありますからね。」
エリシオがそういって、椅子を私が座りやすい方向に動かしてくれる。
「エリシオもありがとう。」
やっと椅子に座ると、椅子を動かしてくれる。
普段はやらないけれど、今の私は弱りすぎているから皆と自分の身体に制限されているような感じ。
「ベリオ兄さま、そういえば今日は私に良いものがあるって言っていたけれど何かしら?」
「ああ、そうだった。ちょっと待ってて、部屋に忘れてきた。」
そういって取りに部屋を出ていく。
久々にエリシオと二人きりになったな。
「あの夜会の日…何かあったのですか?」
エリシオが覗き込んでくる。エリシオは暗いブラウンの髪にキャメル色の瞳。
ちゃんと見たこと、あったかしら。
「アレクシア様?」
「あ、ええ、ごめんなさい。特に何もなかったわ。うん。ただ、疲れてしまったみたいね。」
なんで何も無かったって言ってしまったのかしら。
ヴィアルド様のことはエリシオに言っても良いのかもしれないのに。
「そうですか。私がお傍にいられなかったですから、今後もご無理はなさらないでくださいね。」
座る私に目を合わせて真剣に伝えてくるエリシオは、なんだかいつもと違う人みたい。
「エリシオ…?」
ふといつも通りに笑って立ち上がった。
「心配したんですから。気を付けてくださいね。」
久々に近距離で話したから緊張でもしたのかしら、私。
「心配かけてごめんなさい。ありがとう。」
「シア?待たせてごめんね。」
「あ、お兄さま。大丈夫よ。」
我が家の家族は私以外、背が高い人が多い。
お母さまでさえすらっとして他の女性より少し頭が出るくらい。
だからか歩くのも早いのよね。
足が長いからかしら。
「はい、これ。」
差し出されたのは薄くて小さい本。
「詩集?」
「そう。まだ通常のサイズの本は重いから駄目だけれど、これくらいのサイズなら負担もないし、詩集だからすぐ区切られるだろう?」
「ありがとう、お兄さま。本が読めなくて残念だったから嬉しいわ!」
「シアは活字中毒だからね。」
ベリオ兄さまは私のことをよくわかっている。
それが嬉しくてつい私も笑ってしまう。
「でも、まずは僕とのティータイムを楽しんでよ。」
横にその本を置いて、私の隣に座ると、最近のうわさ話や面白い話をしてくれる。
読んでいただいてありがとうございます!
少しでも面白い、続きが気になる、と思って頂けましたらブックマークと
評価☆☆☆☆☆よりお好きな数の星をつけてもらえると投稿の励みになります。