院長室にて2
「…失礼しました。とにかく、アレクシア嬢の論文は、論文として素晴らしい精度での完成を見せているということ、全くの誤字脱字もないほど推敲がなされていたこと、もちろん氏名等にそちらの誤りがあったはずもありません、ということです。」
区切るようにお茶を飲むけれど、お父さま達は続きを促す空気を出している。
院長が急に怒り出したりはしないだろうけれど、ハラハラしてしまうわ。
「そして、この度の誤りは、誰が、ということが難しい出来事がありまして…。」
急に言いづらそうになったセルファン院長は急激に縮こまったようになった。
「まず受け取り担当者。美しい文字に寄稿条件の間違いがなく、通過。次に審査員が3名。3名とも絶賛し、通過。
問題は、アレクシア嬢の論文の素晴らしさでこの度、女性への柴珠玉について再考の余地があるのではないか、ということにまで及んだことです。」
「へぇ…選考条件に再考の余地なし、と長年古臭い慣習できた文化院が?」
私が女性であることで論文が日の目を見ないであろうことに、昔からご立腹だった両隣の兄さま達が再考の余地に強い反応を示している。
「そうなのです。担当者4名がそこまで言及し進上してくるほど、ということで、文化院上層部にて役職者5名で拝見しました。
これほどの論文を寄稿者が女性というだけで排除することは大きな損失となる、最低でも柴珠玉授与の選考に上げるほどの価値がある、と文化院総意として中央院に示すこととなりました。」
良い話のように聞こえて、その実、今回の間違いに繋がってくる部分から離れたような話しぶりに、お父さまがイライラしてきている。
その証拠に、方眉が少し上がって、顎が上がることで見下すような視線になっているもの。
「そこで、大きな過ちが起きました。例え文化院総意といっても、選考段階であったため全員に連絡が通っていなかったのか、慣習により女性であるはずがないと思い込みがあったのか。この段階でアレクシア嬢の名前を間違えたことがわかっています。ただし、誰が起こしたのか、というものではなく、文化院の体制・慣習など様々な問題が浮き彫りになる形でした。」
「それで?」
ここまでの説明を聞いてお父さまはなお冷ややかに促している。
「文化院院長として名前の誤りが文化院責任であることを既に中央院に伝えております。そして急ぎ対応についても検討をしておりますが…。」
セルファン院長はそこで言いよどんでしまった。
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