5. 攻略対象 公爵家次期当主
マナーの勉強は王子の婚約者である公爵令嬢含む高位貴族の令嬢の皆様が、手取り足取り丁寧に教えてくれて覚えてきてはいるが、実践の場であるお茶会の授業はベティはまだまだ苦手で、今日もたくさん注意されてしまった。
『ベアトリスさん、次のお茶会の授業までには今日の失敗したところをしっかり治して、完璧にしてくださいね?』
優雅な態度と微笑みで優しくも厳しく教えてくれる公爵令嬢がベティは大好きで、心の中ではお姉さまと慕っている。
『姉上?少しベティに厳しいのでは?彼女はついこの間まで平民だったのでしょ?今でもよく頑張っていますよ?
それにベティは聖女として頑張っているのです。ゆっくりやってけばいいのですよ?』
ルイ様が急にマナーの反省会をしている中に入ってきた。
最近よく注意をしてくれているところに入ってきては、お姉様からのありがたいお叱りを邪魔してくる。
『ベティ?最近大変でしょう?疲れてませんか?たまには休憩も必要です。これから僕と出かけませんか?』
「お出かけですか?でも…まだマナーの反省が。」
『ベアトリスさん、たまにの休みは大事です。ルイ、しっかりベアトリスさんを楽しませてあげてください。安全には気をつけてくださいね?』
「いいんですか?そんな。私まだまだなのに。」
『ベティ!今日は僕が何でもしてあげますよ!ベティの家族のつもりでいいですからねっ!たくさん甘えてくださいっ』
ルイは長い袖から華奢な指先を出し、そっと私の腕に添えて、同じぐらいの身長でありながらうるうるした瞳でこちらを見上げるように見つめてくる。
「ルイ様ずるいです。そんな可愛く言われたら断れません…。本当に甘えてしまいますからね?」
ルイ様はこんなに可愛い方ですが、魔法も武術も一通りできるオールラウンダーの方で、まず魔法から派生した回復魔法も大変得意らしく、魔王討伐隊の支援的役割として一緒に旅に参加してくれることになっております。
同性の方が1人でもいてくれるなんてとても心強いです!
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『ベティは服が欲しかったの?確かにこのお店は女の子っぽい可愛いドレスやワンピースが多いから可愛いベティにはよく似合いそうだねっ!』
「いえ?私のものではありません!今日はルイ様に似合う服を買いたかったんです!!」
「これなんてとてもよく似合いそうです!私の髪色に似てるこのワンピース!下がフリフリで後ろには何とリボンがっ!!この頭につけるリボンもどうですか?ルイ様の肩上くらいのふわふわな白い髪によく似合いそうですっ!」
「え?着てくださらないのですか?…私一人っ子なので妹が欲しかったのです。ルイ様のような可愛い妹が欲しくて。」
「違う?…私ちゃんとわかってますよ?ルイ様のような子のことを僕っ子というのですよね?ルイ様はとても可愛いですけど、時どき男性のような雰囲気も出てギャップにドキッとします。」
「あの…もしかしてスカートがお嫌でしたか?学園でもズボンですものね。…すみません配慮するべきでした…。」
「え?男?…あっごめんなさい。すみません失礼でしたね。もし…もしルイ様が本当に男性になりたいようでしたら、私の光魔法で男性に変えられるかもしれません。ご家族でよく話し合ってください。…私は…いつでもできるので。」
「本当にすみませんでした。知らなかったとはいえ本当に失礼なことをしてしまって。」
「あと…できたら男性になるんでしたら…ベアトリスと呼んでください。女性なら同性の友達として全然呼んでくれてよかったのですが…あの異性にはちょっと愛称で呼ばれるのは…。」
「では、私は帰りますね。あの…もし男性になりたいようでしたら、魔王討伐の際も女性として参加するよりも体力などでいいかもしれません。」
「公爵家の方にはいつもお世話になっているので、光魔法についてはすぐできますので気にしなくて結構なので。よく話し合ってくださいね。それではあの…失礼します。」
あざと可愛い弟系で距離を詰めようとした結果、僕っ子と勘違いされ男性と信じてもらえず、男性になるようなら愛称呼びをやめろとまで言われる攻略対象。
評価してくださった皆様、ブックマークをしてくださった皆様、コメントをくださった皆様、本当にありがとうございます。
何となくここまで読んでくださった方もとてもとても感謝しています。
次の話で一応ラストにもっていきたいと思っています。
最後まで読んでいただけるととても嬉しいです。