邂逅
「一体絶対どうすれば良いんだろ。どうすることも出来ないし、足掻いても無駄な時間を使うだけだ」
「おーい、祈織。何やってんの?」
うん? 何処かで聞き覚えのある声だ。えーと、思い出せ僕。回転させろよ僕の頭よ。あぁ、あいつか。
「や、やあ。何?」
とりあえず挨拶だけして質問返し。
「それは私の台詞。何で家の真逆な方へおるの!」
頬を膨らませ怒ってきた。
「いや、悪い。君と接していた、祈織さんは僕では無いんだ。僕自身、誰だか分からない状況でこの世界は僕が居た世界の6α年前に似てたからついついここまで来てしまったんだよ」
明かした方が早い。信用が出来るのは唯一の俺の義姉だけだからな。
「君は祈織本人じゃなくて別世界へ居た誰か、尚且つ6α年前って言ったよね?って事は未来から来た人って事。簡潔に纏めると未来の人間か!」
僕の方へと指を指し自信たっぷりと大きく言ってきた。
「簡潔に纏めすぎだ」
呆れた。
「まあ、良いじゃん。祈織、本人じゃなくても、外見は祈織だし、早く私たちの家に戻ろうよ」
僕の手を引っ張って走った。
「はあ… ここが僕の家なのか、全く知らない場所。6α年前にこんな場所があったのか?」
「早く入ろうよ!」
手を掴んでドアを開け中へと入った。
「お、お邪魔しまーす」
「なぁーに!畏まってんのよ、ここはあなたの家でしょ!」
肩をポンポンと叩いて笑った。
「まあ、だけど。やっぱり気まずいよ。
あ、そうだ。このことは両親には黙っておいてくれるかな?栞さんの両親にも」
「うん。分かったと言いたいけど、この家には両親は居ないよ。まあ、この世にもう居ないんだ」
悲しげに言った。
「あ、悪かった、変なこと言って」
「良いよ。事実のことだし。まあ、この家には私と祈織だけしか住んでないけどね」
「ほぉ、私と祈織だけしか住んでない…?」
「はぁっ! おいおい、ちょっと待って今までずっと2人っきりだったのかよ。祈織さんは普通だったかもしれないけど僕自身は違和感しか感じないんだけど!」
聞き流す様に聞いてたら的の中心に当たったかのように驚いた。
「前の祈織は普通に接してくれたよ。今の祈織は正直中身諸共変わってるから性格すら変わってるんだよね」
「へぇ、前の祈織さんは普通に接してたんだ」
「まあ、お風呂入るけど一緒に入る?」
着替えながら言ってきてそれに慌てた僕を見て笑っていた。
「ん!? いやっ良いよ」
「前は毎日一緒に入ったのにね」
「一緒に入らないと駄目なのか? もう、16、17何だからやめようぜ。そう言うことは」
「えー。一緒に入るって約束したじゃん!」
と僕の頬ぶってきた。
栞ぱーんち。ぺち!ぺち!と叩いてきた。
「最初はぶってその次はビンタかよ。分かったよ。一緒に入れば良いんだろ」
頭を搔いてため息を付いた…
「うむ!よろしい!」
腕を組んで言ってきた。
「一緒に流しっ子しようね」
え……
何言ってんだ。こいつ……
本当に全く……
「断固拒否」
「えー 何でよ。いつもしてるのにー」
いつもかよ……
前の僕は何をやってんだ……
頭が痛くなってきて呆れてきた。
「分かった。分かった」
「ねぇ、栞さん。何で裸なの…かな?」
「え?兄弟だから普通じゃない?」
普通じゃねぇよ。 血も繋がってもねぇし。
「……」
「よし、僕はもう出るからあとは栞さんだけで」
「うん。じゃあ、私も出る」
「あ、うん…」
もう寝よ…
「じゃあ、夜ご飯作るわね」
「いや、良いよ。僕お腹空いてないから」
僕は自分の部屋へ向かった。
「分かった…」
「おやすみ。祈織」
「あぁ、おやすみなさい。栞さん」
寝室へ行き眠りに着いた。
「えーと 今は朝か…」
もう、6時30分か。
「ねぇ、祈織。朝よ 起きなさい」
おかんか。まあ、ここだとしょうがないか。
「あぁ、起きてるよ」
はぁ〜。大きな欠伸をして背伸びをし、ベットから降りた。
1階へ行きいい匂いがしてきた。この匂いは……懐かしい匂いだ。何なんだろ。
「祈織 おはよう。朝食作ったから食べてね。」
「おはようございます。栞さん。はい、食べます」
椅子に座り少しずつ食べて行った。
「ねえ、祈織。今日、学校に行くの?一応、期末試験だけど零点の場合でも祈織は回避出来るけど、それでも来る?」
「うーん。一応、行くよ。あまり、怪しまれたくないからね。このことは栞さん以外バレてないからね。まあ、あの紫龍潤ってやつには怪しまれてるし、そのテストの時に居た先生だけかな」
あっ、やべぇ。あの後先生に呼ばれてたんだ。
スッカリと忘れていた。
「うん、分かった。黙っておくよ。昼で終わるから早く帰れるよ」
「うん、わかった」
はぁ〜。 やっぱ寝みい何なんだろ。この気持ちは、あと、今朝の匂いは…いったい…??
「ねぇ、祈織。一応、今日の範囲教えようか?どうせ勉強してないんでしょ?」
当たり前だろ…
「いや、良いよ。結局のところ回避できるのなら。ありがとう」
栞さんは僕では無いのに良く接しられるなあと思った。何でだろうなと思い聞きたいけどやっぱり聞けない。
「ねぇ、栞さん」
あまりの緊張差に零れてしまった。
「うん? 何、祈織」
僕の方へと振り向いた。
「いや、やっぱなんでもない。気にしないでくれ、忘れてくれ。悪かった」
「う、うん…?」
朝食を終え寝室へと戻った。
「本当にどうしよ。僕がこの世界にいて本当に大丈夫なのか… 僕が居た世界の僕はどうなってるんだ」
俯いていた。考え事などしたくない、する度に闇へと落ちてしまうからだ。
心配だから祈織の寝室へと向かった。ドアが開いていたのでこっそりと独り言を聞いていた。
「き、祈織。本当に大丈夫なの…」
本音が零れてしまった。声を出してしまった。慌てて口を塞いだが。
「ねえ、栞さん。もしかして僕の独り言聞いてた?」
「あ、うん。ごめんね、心配だから寝室へと行ったら独りで話してたからちょっと気まずくて」
恥ずかしそうに僕の部屋へと入ってきた。
それは僕の方が気まずい。聞かれてまずいようなことは言っては無いが、内心物凄く気まずい。
「いえ、良いですよ。では、そろそろ、行きますか」
ベットから降りカバンを持って栞さんに言った。
「だね」
今日は3つもあります。是非頑張ってくださいね。最低限、赤点は回避しましょうね。
マジかよ…… 3つもあんのかよ……
では、10分後に始まりますので用意しておいてくださいね。
皆がノートや教科書類をロッカーの中へ入れ準備をして最後の確認をしていた。
僕は…しなくても大丈夫…
本当に最悪だ。3つもあるなんて聞いてねぇよ。昼には終わるとは聞いたけどよ。
「なあ、祈織。昨日は大丈夫か?」
昨日絡んできた。紫龍潤だ。
「あぁ、大丈夫だ」
こいつとの関わりを栞さんから聞いておくべきだった…。
「おお、それは良かった。良かった。んでさぁ、祈織くん。また昨日栞さんとお風呂入ったんかい?」
茶化すように僕に言ってきた。
「え?ちょい待て、何でその事知ってんだよ」
慌てて返答し周りの目を気にした。
「いやあ、クラス中に広まってるよ?」
まじかよ…何故。
「あ、ああ」
「まっ、祈織ならオーケーと言って即答しただろうな」
「違う」
「何が違うんだ。もしかしてオーケーしたことか?」
「ああ、オーケーしてないし即答もしてない。断ったら栞さんに物凄く怒られて入ったんだ」
深いため息を付き頭を抱えた。
「へぇ、祈織らしくないな。いつもだったら自ら望んでぇ……」
うぐっ、胸ぐらを捕まれ……
「ちょっとは羞恥心と言うものを知ろ」
「何だよ、急に本当に変だぞ。変なのは前からだけど、この変は相当やばい」
ふん、この体の中身のひとはやばい人なのか……。え、待て中身の人がやばいってことは今後接して行くのに結構なハードルがあるということか……。
「あっそう」
んでその後テストをやり、無事に終わった。