第9-3話「もう1人」
3人が降り立ったのは、駅前の広場だった。
充が呼んだ、今回のデートに参加する『もう1人』との待ち合わせ場所だ。
そこには大きな噴水があり、その周囲では夏の暑さを紛らわせるような涼しさを感じる事ができる。
待ち合わせの時間まで、まだ少し余裕を持っての到着だった。
*
「おい、充」
涼介は充に話しかけた。
充は手元の携帯を弄りながら応えた。
「ん〜なんだ? まさかお前もトイレか?」
「そうじゃねぇよ」と涼介。
ちなみに、ゆうなは現在トイレ……もといお花をつみに行っている。
いや、俺がわざわざこんな言い方に直す必要は無いんだけど……
「ただ、聞き忘れていた事があってな」
すると、素早い指さばきで携帯を弄っていた充がピタリと止まり、硬い表情に変わった。
「……な、何がだ?」
まるでロボットのように首を動かしこちらを見る。
そこには明らかな動揺があった。
……何かやましい事でもあるのだろうか?
そう思った涼介は、少し語気を強めて質問を始めた。
「おい充、正直に答えろよ?」
「お、おう!」
「お前、誰を呼んだ?」
すると充はポカンとした表情になった。
「へっ? あ、それの事か……。えっと……オレの知り合いの女子?」
いや、なんで疑問形なんだよ……
「ビビリなお前が女子と連絡先を交換できるわけがないから、それは論外だよな? ……だから聞いている、お前一体誰を呼んだんだ? まさか、巷で噂の出会い系アプリとかじゃ無いだろうな?」
「いやいや、そっちの方が怖くて手が出せねぇよ。……てゆーか、お前の中では出会い系の方が難易度下なのか……」
その後しばらく黙っていた充だったが、何度も思考した末に観念したのか「はぁ」とため息をついてからポツリポツリと話し出した。
「頼むから、この事は、ゆうなちゃんには、言わないでくれよ?」
という事は「もう1人」はゆうなに関係がある人物なのか?
涼介はそう思いつつ首肯する。
それから充は深呼吸。
「俺が呼んだのは……」
緊迫した空気が流れ出し、思わず涼介はゴクリと喉を鳴らした。
しかし、充の口から次の言葉が出る前に、それは現れた。
「おっ待たせしました〜」」




