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99:エンディング

これにて終了、打ち切りでございます。

お付き合いいただきありがとうございました。

「それじゃ、あとは任せるよ。この世界のアドミニストレータ権限は、君たちにあげよう」


 カミサマはそれだけ言い残すと、俺とロスヴィータの前から消えていった。

 異様な世界が、崩れ始める。ガラス張りの塔が、黒い地面が徐々に消えていく。


「ちっ、最後の最後まで無責任だな、神というヤツは!」


 同感だ。てか、アドミニストレータってなんだ?


「とにかく、この世界から抜け出すぞ、ロスヴィータ。こんなところで、俺は消えたくない」

「言われずとも。神の開けた穴がある。そこから外に出る!」

「了解っ」


 俺が先に、穴へと飛び込んだ。いつもなら、この後俺はいつもの世界で目が覚めるはずだ。

 カミサマは約束を守った。勇者パーティのみんなを、

 大賢者・ローレンスを、

 戦士・シェリンガムを、

 武闘家・チャドを、

 そして、勇者・ラザフォードを生き返らせてくれた。

 後は、俺がみんなに合流して、魔王を倒しに行くだけだ。

 ただ、魔王を倒すってところで、俺は複雑になる。

 魔王は、ロスヴィータはラザフォードたちの前に立ちふさがる。俺も、ロスヴィータと戦わなくてはならない。

 ただの遊び人では役に立たないとはいえ、これだけの間一緒にやってきた奴と戦うのは、さすがに複雑な気持ちになる。

 あいつが、ただの悪人だったならよかったんだけどな。

 ロスヴィータの奴、妙に人間臭いところがある。あいつが魔王じゃなきゃ、まあそれなりに上手くやっていけたんじゃないだろうか。

 それも、今更か。俺は遊び人に戻るし、あいつは魔王に戻る。これはどうあがいても変わらないし、変えてはいけないことなのだから。

 俺は、ふと眠気を感じた。

 これはあれか、このまま寝れば、元の世界で起きるとか、そんな感じのものか。

 たぶんそうだ。なら寝よう。俺はすぐさま意識を手放して……、


「おい、大丈夫か、アシュレイ!」


 という、懐かしい声で、すぐに意識を取り戻した。


「ん? あ、あれ?」


 目の前には、みんながいた。勇者パーティのみんなが。

 ラザフォードが、俺を抱きかかえていた。


「急に倒れるから心配したじゃないか。どうした、怪我でもしていたのか?」

「んあ、い、いや、ちょっと気が抜けただけだ」


 俺が言うと、みんなは苦笑い。


「おいおい、魔王を目の前にして気が抜けるなんて言わないでくれよ」


 ラザフォードに、バシンと背中を叩かれて、完全に目が覚めた。

 ああ、みんなが、みんなが無事にいてくれる。

 まったく、目頭が熱くなるじゃないか。今までに流したどんな涙よりも、嬉しいじゃないか。


「お、おい、アシュレイ、本当にどうしたんだ?」


 俺は、崩れ落ちていた。嬉しさと安心で、目の前がにじんでいた。

 これを、この瞬間をどれだけ待ったことか。このときのために、どれだけ戦ってきたか。

 俺は、立ち上がれなかった。とにかく、俺は四つん這いになって、泣いていた。


「怖い……ってわけじゃなさそうだけど、いくら泣き虫の君でも、おかしいぞ?」


 ラザフォードが心配そうに言ってくれる。この声を聞くのは、一年ぶり。でも、俺はもっと長い間、聞けていなかった気がする。


「なんでもない、なんでもないんだ。ただ、今は少しだけ時間をくれ。今は、今だけは……」


 みんなは、静かに俺を待っていてくれた。泣き虫で役立たずの俺を、心配して見守っていてくれた。

 それが嬉しくて、さらに涙が出る。

 俺が泣き止むまで、どれくらいかかっただろう。全身の水分が抜けたんじゃないかってくらい泣いた気がする。


「す、すまない。ちょっと、昔を思い出したんだ。急に……」


 俺の言うことは伝わらないだろう。でもいいんだ。今は、みんなにまた会えたことを喜ぶんだ。

 賢者・ローレンスが俺にハンカチを貸してくれた。戦士・シェリンガムがフラフラの俺に肩を貸してくれた。武闘家・チャドはまだ泣き止んでいない俺の頭をグシャグシャと撫でてくれた。


「なんだか分からないけど、気分は晴れたかい?」


 そして、ラザフォードは俺に頼もしい笑顔を見せてくれた。


「ああ、もう大丈夫だ!」

「よし、それなら行こうぜ!」


 パーティのみんなと、俺は最後の戦いに臨む。魔王・ロスヴィータとの戦いに。

 魔王の部屋、どデカい扉を、みんなで開けた。

 待っていたのは、紅蓮の双角を額から生やし、宝石よりも美しい紅色の瞳をして、火炎のような赤毛を持つ、


「は?」


 妙齢の美女だった。


「貴様が魔王だな!」


 いやいや、ちょっと待ってくれラザフォード。

 みんなみんな、武器を構える前に、冷静になってくれ。


「あれが、魔王?」


 魔王は、階段の様になった玉座から、こちらを、つまらなさそー、に見ていた。

 なんというか、興ざめというか、あーなんか来たなこいつらー、みたいな目をしていた。

 せっかくの美女っぷりがもったいないくらいにダレている。やる気なさそー。


「……」


 魔王は、ラザフォードの問いかけに応えなかった。みんなの戦闘態勢を見ても、指先一つ動かそうとしない。


「どうした、魔王! 俺たちは貴様を倒しに来た!」


 うん、まあ、そうなんだけど、あれが、魔王?

 魔王って、もっとちんちくりんじゃない? ほら、言葉遣いだけは大げさだけど、他はミニマムな子供じゃないの?


「勇者、勇者、か……」


 おーい、ため息ついてますよー、あの美女。

 そこでみんなも異様な気配というか空気に気づいたらしい。


「……貴様、魔王だよな?」


 ラザフォードですら確認してしまう微妙な空気。

 なんだろう。いざいざいざーって感じて突撃したのが別の人のお宅でしたみたいな感じ。

 俺がじっくりと魔王(仮)を見ていると、美女は俺を見て目を細めたような……。


「アシュレイ!」

「お、おう!」


 美女に呼ばれて、つい反射的に返事をしてしまった。ていうか、この声もどこかで聞いたことがあるような……。


「気づかぬか、このおろか者! 我だ、ロスヴィータだ!」

「え? いや、ロスヴィータ?」


 うっそだー。ロスヴィータはもっと小さいですー。胸も尻もぺったんこですー。貴女みたいに魅力的じゃありませんー。


「なんだその胡散臭げ目は!」

「だって、ロスヴィータならもっと子供なはず……。あ、お姉さん?」

「たわけがっ! これが我の真の姿だ!」


 あ、あれー? おかしいな。なんでロスヴィータのお姉さんが俺のこと知ってるんだー? って、真の姿?


「魔王?」

「そうだ!」

「ロスヴィータ?」

「その通りだ!」


 ……。

 …………。

 ………………。


「ああ!」

「気づくのが遅いわ、この間抜け!」

「いや、気づけって方が無理だろうが! お前、そんなにでかくなかったろ、色々!」

「えぇい、小娘基準で話すではない! 言っておいたであろうが! 我の真の姿は、上級魔族ですらひれ伏すほど美しいと!」


 うん、美しいですよ? 魔王じゃなきゃ、すぐに求婚したいくらいですよ?


「で、でも、お前一度もそんな姿見せたことなかったじゃないか!」

「だから人間の時は元に戻れぬと言っていたであろうがっ!」


 あー、言っていたな、そういえば。初めて会った頃に。あの時は魔王が人間になったってことばかり気にしてたけど、元の姿に戻れないとか言ってたわ。

 でも、卑怯だろ、こんなの。こんなに綺麗な美女だなんて聞いてないぞ。魔族がひれ伏すなんていうから、もっと化け物らしい見た目だと……。


「だから、その目をやめいっ! 我が我だと、早く認めよ!」


 はいはい。分かりました。わーかーりーまーしーた。


「んで、なんだよ、ロスヴィータ。なんか話でもあるのか?」

「貴様と話すことなどないわっ」


 じゃあ、なんで俺の名前を呼んだ?

 ……ん? いや、待てよ? あいつ、俺のこと覚えてるの?


「な、なあ、アシュレイ。君は魔王と知り合い、だったのか?」


 ラザフォードの反応も当然だよなー。命を懸けて追い求めてきた敵が、仲間と知り合いだったなんてなー。いや、知り合いっていうか、これからお知り合いというか。ややこしい。

 どうしたもんか。今から、行くぞ魔王来い勇者、なんてやれないぞ、この雰囲気。


「あー、えっと、小さいころに会ったことがある、みたいな?」


 生物学的に。間違ってないよね? それとも物理的?


「魔王と、君が知り合い? でも、君は普通の人間だし……」


 うん。俺は人間。あっちは純度100%の魔王。


「……」

「……」


 空気に耐え切れず、ついロスヴィータを見つめてしまう。あっちもあっちで、なんだか呆れたような視線を送ってくる。

 たぶん、お互い思ってる。どーしよー、って。


「……」

「……」


 あ、ロスヴィータの方が先に顔背けた! 俺の勝ち! 知らんけど。


「えーっと、アシュレイ?」

「お、おう、なんだ、ラザフォード」

「知り合いなら、一応お願いしてもいいかな?」

「何を?」

「もう、人間と争うのやめてくれないかって」

「分かった。……ってことらしいけど、どうするー?」


 なんだこの伝言ゲームは。


「えぇいっ! もっと言い方があるだろうがこの遊び人! 魔王様お願いですから人間をいじめるのやめてくださいくらい申してみよ!」

「まおーさま、おねがいでるからにんげんをいじめるのやめてくださいー」

「そのまま言うな、阿呆めがっ!」


 ぐっだぐだじゃねえか。何してんだ、俺たち。


「ふ、ふんっ、だが、まあいい。おい、勇者。そこの遊び人がどうしてもと懇願するので、我としても妥協してやらんでもない」

「誰が懇願してる、誰が」

「やかましいっ、お前は黙っておれ勇者! ではなかった、遊び人!」


 もう、勇者パーティのみんなは目が点になっている。いや、俺はみんなの味方だよ? 本当だよ?


「そこでだ。貴様らがそこの遊び人を我に引き渡すならば、王国への侵攻をやめないでもないぞ」

「え、あ、そ、そんなことができるかっ! アシュレイは俺たちの大切な仲間だ! いけにえになんか……」

「いけにえなどではないわっ! ……あ、いや、その、なんだ。そやつを我のパートナーとしたい。権限がどうとか神も言っておったしな。我らは一緒にいる方が良いのだ」

「えっ、いけにえじゃなくて、パートナー……?」

「そっ、そうだ! どうだ勇者よ!」


 ラザフォードの視線が俺とロスヴィータの間を行ったり来たり。

 権限? そういやあ、言ってたな、あのカミサマ。アドミニストレータをあげるとかなんとか。アドミニストレータがなんだか知らないけど。

 レベル上限とか、経験値渡すとか、権限を与えるとか、そんなのとは、また違うのか? いや、今はどうでもいいか。


「アシュレイ、君は魔王と知り合いみたいだけど、どうしたらいい? 君は魔王のパートナーになってもいいのか?」


 パートナーねえ。まあ、あいつとは一年間背中を預けて戦ってきたしなあ。今さら改めて言われるほどでもないというか。


「まあ、いいよ、俺は」

「いいのか!?」

「うん。あいつのことなら結構分かるし」

「分かるのか!?」


 同じ家で暮らしてたしなー。


「で、でもアシュレイ、相手は魔王だぞ! 何か酷いことをされるかもしれない!」

「いまさらあいつが俺に? 無い無い」


 うん、無いね。


「そ、そこまで君たちは深い仲だったのか……。な、ならなんで教えてくれなかったんだ! 最初から話し合いで解決できたかもしれない!」

「いやあ、あいつ意地っ張りだし、素直には話聞かないからなあ」


 ちょっとくらい追い詰めないとな。コマ遊びで十回連続で負かすとか。


「き、君たちは本当に親しいんだな……」

「親しいとか、そういうレベルの話じゃないぞ」

「ま、まさか君と魔王はもうすでに……?」


 すでに勝手知ったるなんとやら、という奴だな。


「あいつ、意外と律儀だし、約束は守るぞ」

「そうか、君が言うならそうなんだろうな……」

「うん」

「わ、わかった。じゃあ、双方合意の上ってことで、いいのかな?」

「いいよ。あ、でもまた王都に住むのは無理だよなあ。あいつ魔王だし、どうしようか?」

「王都に!? う、うん、さすがにそれは無理だと思う。魔王だからな」


 だよねー。


「ならば貴様はここに住めば良かろうが!」

「えっ、ここ? でもなんか、ジメっとしてない?」

「やかましい! 素直にうなずけこの、この……!」


 あ、ロスヴィータの語彙が無くなってきた。そろそろやめておくか。


「分かった分かった。ここに住めばいいんだろ? いくらでも住んでやるから……」

「そ、それならばよいのだ。……ゴホン、分かったか勇者! こやつは我が預かる!」

「あ、ああ……。じゃあ、えっと、魔王!」


 ラザフォードが呼ぶと、ロスヴィータが緩んでいた顔を引き締めた。おい、さっきまでの顔、威厳なさすぎだったぞ。

 しかし、これから魔王の城に住むのかー。なんか、他の魔族に嫌がらせとか受けそうだなあ。ちょっと心配。

 いくら魔王のパートナーと言っても、あくまでも権限がどうのという話だ……、


「アシュレイを幸せにしてやってくれ!」


 ……は?


「アシュレイ、人間と魔族、難しい関係になると思うが、俺は応援しているからな! 俺たちは、いつまでも仲間だ! 夫婦喧嘩とかしても、味方になるから! 城を追い出されたら、俺の家に泊まるといい!」


 ……いやいや。


「おーい、ロスヴィータ、なんかラザフォードが勘違いして……」

「ふ、ふんっ、言われるまでもないわ! こやつは我が最後まで面倒を見てやる!」


 お前も何言ってんの……? いや、他のみんなも、なんで涙流しながらうなずいてんの? アシュレイも立派になって? 何言ってんの、だから。


「約束は守ってやる! だから勇者よ、ふ、二人にさせい」

「分かった! これ以上は邪魔をしない! さ、みんな、ここは二人に任せよう」


 そそくさと出ていかないでくれー。俺を一人にしないでくれー。

 バタンと部屋の扉が重々しく閉まった。いや、俺を一人に……。


「ふんっ、空気を読まぬな、こちらの勇者は」

「お前も何わけのわかんないこと言ってたんだよ……」

「うるさいっ。貴様こそ、なぜとんちんかんな返事ばかりするのだ!」

「だって、みんなが何言ってるか訳が分からん。まるで、俺とお前が結婚でもしてるかみたいに……」


 ……みたいに? あれ? 今までの話を総合すると……。


「みたいじゃん!?」

「今更気づくな! ……まあよい。あの勇者を見て思ったが、人間と争うのもバカバカしい。これも、まあ、魔王としての当然の判断だな」

「そうかあ……?」

「そうなのだ! それに、貴様と今のままで真正面から戦うのもつまらん。平等の舞台で戦わねばな」

「それ、コマ遊びの話だろ……」

「ふん、魔王直々にパートナーとして選んでやったのだ。もう少し嬉しそうにせんか」

「それこそ今更だろ。俺たちはどんだけ一緒に戦ってきたよ……」

「……」

「……」

「だろう?」

「だなあ」


 人間とか魔族とか、そんなものを上回る化け物とやりあってきたんだ。もう種族の違いなんか、どうでもいい話だな……。


「とりあえず、我は約束を守る。魔族にはすぐに命令を出そう。王国とやらにも、使者を送る」

「使者だからって、屍人族ゾンビとか送るなよ?」

「……」

「使者だけに、死者、なんつって……」


 あれ、ウケない? ラザフォードたちなら爆笑必至なんだけど……。


「貴様のセンスは最悪だな。これからは我の前で下らぬ冗談など言うなよ?」


 うわあ、すっげえ冷たい目で見られた。


「それが、本来の貴様か。まったく、大した遊び人っぷりだ。勇者をやっていたとは思えん」

「……あっち基準で言うなよ。俺は元から遊び人だ」

「そのようだ。見てみよ」


 うん、鏡? って、俺のステータスじゃん。


「うわー、遊び人レベル11とか、弱いなー、俺」

「まったくだ。だが、その後を見るがよい」


 遊び人の後?


「えーっと、アドミニストレータ? それに……、元・勇者?」


 あれ、なんだこの表示。アドミニストレータはカミサマが言ってた奴だけど、元って……。

 ああ、いや待てよ? なんで俺、ステータス見えてんの? そういう力、無くなったんじゃないの?

 慌ててロスヴィータのステータスを見てみる。って、見える!?

 『ロスヴィータ・Lv87・魔王+アドミニストレータ+元・賢者』

 なんで?


「知らぬ。神とやらのお遊びかもしれん。我に余計なものを付け加えおって……」


 とか言いながら、あんまり嫌がってないな、お前。


「もはや、気にするのも面倒だ。我はもう目的を果たした。後はどうでもよい」


 ああ、まあ俺も勇者パーティのみんなを生き返らせることができたから、ぶっちゃけどうでもいいけど。


「ならば、もうなにも気にせずのんびりとするのが一番だ。どうやら我らの権限は、この世界においてなんでもできる、それこそ神のようなものらしい」

「カミサマの? 微妙に嬉しくないぞ」

「我も、こんなものを使おうとは思わぬ。ただ、貴様が下手なことをすれば、また面倒ごとが起きるやもしれん。我はお前を監視せねばならん」

「……それ、俺も同じことしなきゃならないってことじゃん?」

「そうだ。だからこそのパートナーだ。貴様が死ぬまで見届けねば、我は安心できん」

「それ、俺の方が先に死ぬから俺的には安心できないんですけど!」

「言ったであろうが。我はこんなものを使わぬと。だから、貴様は一生安心していてよい」

「そうなのか……?」

「我が信じられぬか?」


 まあ、信じるけどさ。


「ならばよい。さて、これからまた暇だ。コマ遊びの相手でもせい」

「またかよ。どうせ負けるくせに」

「ふん、いつまでも我が負けっぱなしだとは思わぬことだ。……いや待て、城にはコマ遊びは無かったな」

「んじゃあ、ラザフォードたちに買ってきてもらおう」


 俺たちはぶつくさと言いながら、魔王の部屋を出た。

 なんだかこれからは平凡な毎日が過ごせそうだなあ。遊び人らしく、フラフラできそうだなあ。


「……浮気は許さぬからな」


 なんだろう、今すっげー寒気がした。バグを相手にした時よりも寒かった。

 ……もう、バグはいないよな?


「何をきょろきょろとしておる」

「いや、何か寒気がしたから」

「貴様が人を裏切らねば、その寒気も幻になるであろうよ」


 そうなの? ならいいけど。

 ……なんだかんだて、ロスヴィータとは一緒にいることになるんだな。たったの一年が、今に続くこともあるわけだ。

 お互い、別々の思いを持っていて、ただ目標が一緒だっただけなのに。

 ま、それでもいいか。目標にたどり着いて、目的も果たして、その後は好きに生きていいよな。

 元・遊び人が元・勇者になって、元・魔王が元・賢者になって。元に戻ったようでも、今は変わらないわけで。

 明日からは、今までにないくらいお気楽に過ごせそうだ。魔王の相棒ってのはなかなか見ない肩書だけど、その内慣れるだろう。

 なにせ、勇者なんてジョブと一年付き合ったんだ。それでいて、相棒はロスヴィータのままで変わらない。楽勝楽勝。


「アシュレイ、早く勇者たちを追いかけよ。コマ遊びを買って来させい」

「俺が行くのかよ」

「我は小間使いではないのでな」

「へいへい」


 いつも通りのような、前とは違うような。どっちとも言えない感覚を持ちながら、俺はラザフォードたちの後を追いかけるのであった。

勇者というジョブに徐々に思考を侵されていった主人公。

ですが、遊び人に戻ることで完全に元のお気楽思考に戻りました。

その思考の変化をもっと表現できていれば、このエンディングもコメディとして受け取れる、ようになる予定でした。

ただ、私の力量不足により、その表現が激しく困難となったためおそらくご覧いただいた方には違和感ばかりが残る結末となったかもしれません。

タイトルばかりがコメディチックで内容は笑いの少ない物語となりました。

時流に乗って異世界転生(?)ものを書いてはみましたが、なんとも未熟な自分を痛感いたしました。

次に書くものがあれば、しっかりと内容を組み立てたうえで取り掛かろうと思います。

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