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18/25

18:真実はどこに

 俺は、王都に戻るとその足でユニコーン騎士団の屯所に向かった。

 夕暮れが夕闇に変わってきている。急ごう。

 屯所の警備兵に事情を話してアーサを呼んでもらう。すぐに会議室に通された。


「お待たせしました、アシュレイ様」


 お、もう来てくれたか。考えごとをしている暇もなかったな。

 さっそく、森人族(エルフ)の国について、事情を尋ねてみた。


「王国が森人族(エルフ)の国を襲う、ですか。そんな話は聞いておりません! 第一、森人族(エルフ)と王国は同盟を結んでおります!」


 だよね。俺が以前聞いた話と違わない。森人族(エルフ)と王国は、仲良くやって来たはずだ。


「万が一、どこかの地方領主が血迷ったとしても、一か月も前の話ならば王国に伝わってくるはずです。隠し通せません」


 アーサの言う通りだ。

 森人族(エルフ)の国と王国は隣接している。国が滅ぶレベルの話が聞こえないはずがない。

 かといって、イングヒルトが、お姫様が嘘を言ってた様子もないしな。何が起こったっていうのだろう。

 誰がどうやって滅ぼした? 何をどうしたら隠し通せる?


「国王陛下にお伝えしますか?」

「いや、まだ事情がはっきりしてない。陛下に話すのは、もうちょっと後の方がいいんじゃないかな?」


 まだ森人族(エルフ)の国の実情は見ていないし。伝聞情報ばかりだし。


「アーサ、森人族(エルフ)の国に行けるかな、俺?」

「はい、それは大丈夫です。森人族(エルフ)の国へ行くのは難しくありません。すぐ隣の領地に転移できる魔法陣がございます」


 じゃあ、それで様子を見に行こう。

 ただ、俺一人でフラフラ行くのもよくないな。誰かの知恵も借りたいし。

 明日の朝いちばんにイングヒルトに報告をして、俺とロスヴィータで国の状態を確認しに行くか。


「私も、お供いたしましょうか?」


 アーサが控えめに申し出てくれた。一緒に来てもらえると助かるな。

 でも、


「嬉しいけど、体は大丈夫? この前のレベルアップから、あまり調子が良くないって聞いてるけど」


 まだ体が慣れていないらしい。一週間経ったけど、戸惑っている部分も多いとメルヴィナから聞いている。


「はい、大丈夫です。仰る通り、まだ体の動かし方に違和感がありますが、アシュレイ様をお守りするのに支障はありません」


 そうか。本人が言うなら、信じよう。


「じゃあ、早速だけど、明日には出発しよう。森人族(エルフ)のお姫様にも状況を伝えないといけないし」


 ロスヴィータにも声をかけておこう。元・魔王の知恵にも力を借りないといけないかもしれない。

 出発は明日の早朝にした。早い方がいい。

 打ち合わせも程々にして、俺は屯所を出る。今晩は家で寝よう。

 アーサは家まで馬車を出すと言ってくれたけど、俺は断って走ることにした。今日は走ってばっかりだな。

 まあ、全力疾走しても、大して疲れないのは助かる。外はもう夜。人影もまばらになっていた。これなら遠慮せずに走れるな。

 いつものように、道と屋根を使って家に向かう。我が家に戻るのは、四日ぶりくらいかな。最近は出先の砦で休ませてもらうこともあったから。


「おかえりなさいませ」

「……ただいま」


 ……さすがに慣れて来たぞ、うん。リアンの完璧な侍女ぶりにも、驚かないぞ、うん。


「ロスヴィータはいる?」

「はい。先ほどからお部屋で詰めコマ遊びをやってらっしゃいます」


 詰めコマ遊びね。本に載っている通りにコマを配置して、そこからコマを動かし、最短で目標達成させる遊びだっけか。


「お呼びいたしますか?」

「いや、直接声をかけるよ」


 階段を上って、ロスヴィータの部屋前へ。ちゃんとノックを忘れずにする。

 返事はなかなか来なかい。よっぽど集中してるんだな……。


「入るぞー」


 ノックはしたんだから、いいよね?

 扉を開けると、やっぱりロスヴィータは机の上のコマを見て、うんうん唸っていた。

 元・魔王様、人間の遊びにハマる。……いや、ハマりすぎ。


「おい」

「……ん? 食事なら後にせい。もう少しで答えが見えるところだ」


 俺だって気づいてないのか?

 仕方ない。頭を撫でつつ、こちらを向かせる。


「えぇい! 邪魔をするな! ……む、貴様だったか」


 本当に気づいてなかったのか。


「くっ、あともう少しだったというのに、貴様のせいで手順を忘れてしまったではないか!」

「そりゃ悪かった。でも、話があるんだよ」

「何か! 我の至福の時間を邪魔するだけの用件なのだろうな?」


 詰めコマの千倍は重要だろう。

 俺は、イングヒルトの話と、アーサとの相談内容を伝えた。


「森人族(エルフ)の国が人間に襲われた? しかも壊滅だと?」

「まだ実際に見たわけじゃないけどな」

「森人族(エルフ)は下等な人間よりも、幾分かマシな方だ。それがあっさりとやられるとは考えられん」


 ロスヴィータも同じ結論か。


「その森人族(エルフ)の姫とやらが、嘘を吐いている可能性の方が高いと思うがな。そもそも本当に王族か?」

「ああ、それは間違いない。ステータスに、ちゃんと『姫』って書いてあったから」

「ふむ、なら姫であることは間違いないのか……」

「俺は明日になったらすぐに確認のために森人族(エルフ)の国へ行くつもりだ。そこで、お前の知恵も借りたい」

「我に、共に行けと?」

「ああ」


 まあ、間違いなく渋られるだろうなあ。


「……よかろう。我も気になる。付いて行ってやる」


 おや、意外とすんなりと了解してくれたな。


「森人族(エルフ)には、我ら魔族でも煮え湯を飲まされた。それを滅ぼせる力には、大いに興味がある」


 そういうことね。

 でも、俺も気になるな。森人族(エルフ)を滅ぼす力っていうのは。そんなもの使われたら、王国だって危ない。

 せっかく魔族との戦いが終わったんだ。平和を脅かされるのは見過ごせない。


「……ふん、勇者としての自覚が少しずつでも出てきているようだな。先日のバグ退治以来、また変わってきたな。せいぜい精進することだ」


 ロスヴィータは言い終わると、俺を追い出した。また詰めコマに戻るらしい。

 勇者としての自覚、ねえ。カミサマとの二度目の出会いが、俺をまた変えたのかもしれない。

 勇者として、というよりは、復讐者としての自覚の方が強いが。バグのことはいつだって頭にある。忘れたりなんてできるもんか。

 今は、単に勇者という立場が求められているからだろう。バグが出たら、すぐにそっちを優先するさ。

 俺は、久しぶりの自室に戻ると、ベッドに身を投げた。そのまま、リアンが呼びに来るまで、ずっとバグのことを考えていた。

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