表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/25

15:力の使い方

 目を開けると、ロスヴィータが俺の顔を覗き込んでいた。

 表情に、小さな影がある。いつもの偉そうな態度が、ちょっと引っ込んでいた。


「む、起きたか」


 俺の目を見ると、つまらなさそうに顔をそむけた。なんだよ、起きたらまずかったのか。

 俺は、寝かされているらしい。視線を戻すと、石造りの天井が見える。

 確認のために、左肩を見た。服ははがされ、むき出しになっている。痛みはない。焦げた傷跡どころか、毛ほどの傷も見当たらなかった。


「貴様の怪我は完治している。人間の魔法使いが何十人と集まっておったわ」


 そんなに大げさだったのか。

 体を起こしてから、自分がベッドに寝かされていたのだと気が付いた。

 病院、か? 周りにはいくつものベッドがある。だが、俺とロスヴィータ以外には誰もいなかった。


「どこだ、ここ?」

「砦だ。貴様は、王都に戻ってからすぐこの部屋に運び込まれた。迷惑なことに、我もな」


 砦だってんなら、他にも人がいそうなもんだけど。

 ああ、でも気配があるな。部屋の外に二人。少し遠くに、他にもいくつか。

 左腕は問題なく動く。俺は体を伸ばすと、ベッドの縁に腰かける。

 結構無理をしたつもりだったけど、体中、どこにも異常がない。魔導治療班のおかげか。疲れすら感じない。

 ただ、カミサマと話した時のいら立ちは抜けていなかった。まだジリジリと胸が熱い。

 そうだ、カミサマだ。


「ロスヴィータ、俺はどれくらい寝てた?」


 前にカミサマの世界にいた時、こっちじゃ一年過ぎていた。まさか、また何年も経っているんじゃないだろうな。


「一時間ほどだ」


 一時間? 一時間か。よかった、今回は体感時間とほぼ変わらなかったのか。


「ふん、体が無事だと安心したか」

「ああ、いや、そうじゃなくて……」


 カミサマ世界との時間のずれは、俺しか知らない。ロスヴィータには、説明しても分かってくれないだろう。

 深く息を吐く。今になって、生きて帰れた実感が湧いた。

 二回目でこのザマか。そりゃ、カミサマも不安になって呼び出すよな。俺が死んだら、デバッガーとかいうのがいなくなるんだから。

 ノックが聞こえた。安心したばっかりだったから、返事から気が抜けてしまった。ロスヴィータににらまれた。


「失礼します!」


 入ってきたのは、外にいた二つの気配。騎士甲冑で身を固めたアーサとメルヴィナだ。

 二人共、表情が硬かった。


「勇者様、怪我はどうですかい?」


 メルヴィナが聞いてきたので、俺は左腕を上げて見せる。それで、二人の表情が少し緩んだ。


「悪い、最初っから失敗したわ」


 もっと単純に倒せると思っていたんだが。初めて見たバグには、対処しきれなかった。これはジョブ云々の話じゃなくて、俺が戦いなれていないからだろう。

 遊び人だからな、元は。実際に戦ったことはほとんどない。経験ってものが無いから、上手いこと立ち回れなかった。


「いえ、お体が治って何よりでした」


 ずいぶんと心配かけたみたいだ。アーサの顔色が悪い。


「バグというのは、勇者様が仰るように手ごわいのですね。見ただけで寒気がしました」

「身の毛がよだつってんですかね。奇妙な形をしていたし、確かに魔物とは違う雰囲気でしたよ」


 アーサ、メルヴィナが言う。二人はバグとレベル差があるから、なおさら不気味に映ったんだな。

 しかも、レベル99の俺がひん死になるし。……二人には、俺のレベルを伝えてはいないけど。

 なんにせよ勇者が苦戦した相手だ。俺の格好悪さも相まって、二人に嫌な印象を植え付けただろうな。

 ああ、ホント情けねえ。勇者ってジョブが泣くわ。俺が倒す、なんて息巻いていながら、ズタボロにされるなんてよ。そりゃカミサマも見かねるわ。


「勇者様、お召し物をお持ちしました。こちらをお使いください」

「ありがとう、アーサ」


 そういや、カミサマは俺に権限とかいうのをよこしたな。

 レベル上限の解放と、経験値の分配? 後は俺以外にも権限を付けられるとかどうとか。

 俺には理解しきれない話だったけど、新しい力の追加ってことでいいんだろうか。

 レベル上限については鏡を見たから確認できたけど、残り二つはどうしたら使えるんだ?

 そう、経験値とか渡せるんだろうか。例えば、アーサに。

 頭の中で念じればいいみたいなこと言ってたけど。

 試しに、俺は念じてみる。アーサに経験値、アーサに経験値……。


「勇者様、どうかなされましたか?」


 服を受け取らず、アーサの顔をじっと見つめる。


「あの、えっと……」


 特に、アーサに変化はない。失敗したか?


「ああ、ごめん、ちょっと考えごとを」


 なんだよカミサマ、期待外れじゃないか。とりあえず、服着るか。

 ガッカリしながら、服を手渡される。

 そんな時だった。急にアーサが崩れ落ちたのは。


「団長!?」

「どうした、アーサ!?」


 メルヴィナと一緒に思わず声を上げてしまった。

 服が零れ落ち、アーサは両腕を抱きながら、震え出した。なんだ、何かあったのか?


「あ、れ? え?」


 戸惑うように、アーサが呟く。


「ふく、いん? なんで急に?」

「福音? 団長、レベルが上がったんですかい? え、でも、今は魔物を倒したってわけでもないし……」


 そうだ。稽古もしてないし、魔法を使ったわけでもない。アーサは俺に服を渡しただけだぞ。


「レベル、72? なんで……?」

「72ぃ!?」


 おいおい、アーサのレベルは48だっただろ。なんでいきなりそんなに上がるんだ!

 72って、俺がいた勇者パーティ並みじゃないか。そりゃメルヴィナも悲鳴みたいな声だすわ。

 あ、でも、確かにアーサのレベルが上がっている。名札、じゃなかった、ステータスには『アーサ・Lv72・騎士』と書かれている。

 もしかして、さっき念じたのが伝わったのか?

 えーっと、それじゃあ『メルヴィナ・Lv37・騎士』に経験値経験値……。

 ……あれ、変化がない。相手によっては、上手く伝わらないのか?


「す、すみません、アシュレイ、様。私、急に、どうして……?」


 とりあえず、落ち着かせないと。


「メルヴィナ、俺のことはいいから、アーサを」

「は、はいっ」


 アーサがメルヴィナに連れられて行く。真っ青な顔をしている。何の前触れもなく、いきなりレベルが大量に上がったんだ。戸惑うどころじゃないだろう。


「なんだ、小娘。レベル72だと?」


 ロスヴィータはあからさまに疑っていた。まあ、普通はそうだろう。


「おい、貴様が何かしたのか? でなければ、あの小娘の妄言か?」

「あ、ああ一応やったというか、なんというか」

「はっきりと申せ!」


 俺も少し混乱している。説明するのが難しい。

 えっと、俺はまたカミサマにあって、世界を直している話を聞いて、権限を三つ貰って……。


「権限?」

「ああ、カミサマが言ってた」

「レベル上限に、経験値を分ける、それに下位権限を与えるだと? なんのことだ?」


 ロスヴィータにも分からないか。ああ、いや、俺はレベル上限についてだけは確認してあるんだけど。

 経験値についても、アーサに渡せたのか? じゃあ、権限とかいうのはどうだろう。

 俺はロスヴィータを近くで見つめる。権限、権限を与える……。


「……何を見ている?」

「お前に権限をやれるかなー、って試してる」

「神の話か?」

「どうだ、俺のステータス、見えないか?」

「貴様の間抜け面しか見えんわ」


 うおっ、突き飛ばすなよ。ベッドの上じゃなかったら、頭を打ってたぞ!


「神とやらの存在も、疑わしくなってきたな。やはり、貴様の話は嘘で……」


 ……なんだ、俺の顔を見て、今度はロスヴィータが固まりやがった。


「見える、見えるぞ! ふ、ふははははっ!」


 そして、急に笑い出した。微笑むっていうよりも、元・魔王らしい豪快な笑い方だ。


「何が見えるんだ?」

「貴様のレベルとジョブだ! ふははっ、我の瞳が戻った!」


 瞳が戻ったってのは、魔王だった頃のか? ってことは、ロスヴィータはステータスが見られるようになったのか。


「これは、我の力が戻ってきているということか! 神め、なかなかやるではないか!」


 いや、お前、その神に人間にさせられたんだけど。

 でも、権限を与えるってのも上手くいったみたいだな。これが魔王の瞳なのかはともかくとして。


「ふん、忌々しい。貴様、本当に勇者ではないか。しかもレベルは……、レベル、は」


 ああ、驚いてる驚いてる。俺のレベル、100超えてるもんな。


「レベル103だと!? ふざけるな、なんの間違いだ!」

「あれ、109じゃなくて?」

「109!? 馬鹿を言うな! そんなレベルがあるものか!」


 レベルが下がってるのか、俺。さっきアーサに経験値を渡したってことになっているのか。


「ぐっ、何度見ても103……。先ほど貴様が言った、上限の解放という奴か……」


 アーサが72になった代わりに、俺のレベルが6下がった。確かに使うのが難しいな。誰彼に経験値を渡してたら、俺自身が戦えなくなる。

 レベルも三桁まで上がるようになったんだ。分け過ぎたら上限が上がった意味が無くなるな。


「貴様、どうやって我に力を与えた。さきほどの小娘にも」

「……分かんねえ。分ける、とか与える、とか念じはしたけど」

「念じるだけか?」

「いや、メルヴィナにも経験値を渡そうとしたけど、彼女には通じなかった」

「ふむ……。相手を選ぶのか? もしくは何かしらの手順が必要なのか……」


 ロスヴィータの奴、適応力が高いな。すぐに納得してやがる。

 手順って言われても、俺は念じただけで、他には何もしていない。


「まあいい。おい、貴様」

「なんだよ?」

「経験値と権限については、もう力を使うな」

「え?」

「どちらも分け与えるな。我と、あとせいぜいで小娘くらいにしておけ。いたずらにやれば、貴様は破滅するぞ」


 それは確かに。さっき、俺もそう考えた。


「バグと戦う力を失えば、本末転倒となる。貴様は素直に自分のレベル上げに励め。魔王の瞳も、ただの人間には毒だ。与えぬ方が良い」

「便利なのにか?」

「貴様の狂ったレベルがバレると騒ぎになる。事情を知る者以外には、決して与えるな」

「……分かった」


 ロスヴィータが言うことにも一理ある。せっかく貰った権限、能力だが、なるべく使わないようにする。

 となると、実質役に立つのはレベル上限解放だけか。三つの内一つだけだなんて。

 でも、カミサマは今の俺はチートとか言ってたな。おそらく何かの異常みたいな意味だと思うけど。

 とりあえずは、レベルがもっと上がるなら、これだけでも活用しないと。


「なあ」

「なんだ?」

「俺のレベルがもっと上がるってことは、普通の魔物とかも倒した方がいいのかな。さっきはレベル99でも苦戦したし、レベル上げをするってのは、これから重要になってくると思うんだが」

「ふむ、確かにな。目的のために力を求めるのは、道理だ」


 ロスヴィータも同意してくれた。よし、これからは魔物の討伐隊に参加させてもらおう。


「ただし、生半可な覚悟で戦いに臨むのではないぞ? 先ほどの貴様は見ていて哀れになるほど、立ち回りが酷かった。レベルだけではなく、戦いのスキルも上げてこい」

「お、おう」


 上げてこい、ってことは、俺一人で行けってことね。

 まあ、いいか。ロスヴィータはもうレベル99だから上がらないし。一人だけの方が、経験値も多く入るし。

 善は急げだ。ユニコーン騎士団のみんなに相談してみよう。

 俺は服を着て、立ち上がる。アーサ、もう落ち着いているといいけど。


「我は家に戻る。手筈は自分で整えよ」

「分かってるよ」


 俺はロスヴィータと別れて、アーサたちを探しに出た。

 あの様子だと、すぐ屯所に向かうってことはないだろうし。まだ砦の中にいるはず。

 適当な人を見つけて、二人がどこに行ったか聞こう。っと、丁度良く兵士が来た。

 アーサは、俺がいたところとは別の医務室に行ったらしい。場所を聞いて、俺は速足で向かった。

 ほどなくして、医務室は見つかった。一応ノックしてから、部屋に入る。

 こっちは結構人がいた。ベッドで寝ているのは、魔法使いがほとんど。もしかして、俺の傷を治してくれた人たちだろうか。魔力を使い切ってばててしまったんだな。

 ありがたいのと申し訳ないのとで頭が下がる。時間があれば、一人一人お礼を言いたいところだ。

 アーサはすぐに見つかった。メルヴィナと一緒だから、かなり目立つ。


「アーサ、調子はどう?」

「あ、アシュレイ様……」


 いつもなら、他に人がいる時は、勇者様、って呼ぶんだけどな。やっぱりまだ落ち着いてないのか。


「ご心配をおかけしてすみません。ただ、先ほどの福音が、まだ信じられなくて……」


 そうだよなあ。何もしていないのに、レベルがガツンと上がったんだ。

 でも、アーサのレベルアップは嘘じゃない。ステータス表示を何度確認しても、レベルは上がっている。


「体には異常ありません。むしろ、力があふれてくるようです」


 後は気分の問題か。

 アーサにもカミサマの話をした方がいいんだろうか。事情を話せば、気が楽にならないかな。

 ……信じてもらえないか。遊び人が勇者になって、魔王が人間になるなんて、どう考えたってありえないもんな。

 相談は、また今度にしよう。


「アーサはもう少し休んでいるといい。また別の日に、話をさせてもらうよ」

「話、ですか? いえ、今お聞きします。私は大丈夫です」

「いんや、勇者様の言う通りですよ。団長はまだここで休んでてください。話なら、アタシが聞いておきますんで」

「だが、メルヴィナ……」

「後でちゃんと伝えますから」


 ドンと胸を張るメルヴィナ。そうだな、彼女に相談するのもいいだろう。


「じゃあ、メルヴィナ、ちょっと外に。アーサ、お大事にね」

「は、はい……」


 俺とメルヴィナは廊下に出た。聞かれて困る話でもないし、場所はここでいいだろう。


「それで、話ってなんですか、勇者様」

「ああ、ちょっと頼みというか、これからについて相談したいことがあって」

「いいですよ、何でも言ってください」

「実は、これから俺も魔物の討伐に行きたいと思って」

「魔物の?」


 メルヴィナが首を傾げる。


「今は魔物もかなり減りました。王国の兵士で充分に処理できます。勇者様がわざわざ行くほどじゃないですよ?」

「うん、それは知ってる。でも、レベル上げがしたいんだ」

「勇者様がレベル上げ、ですかい?」

「そう。さっきの情けない戦い見ただろう? 今の俺じゃ、レベルもスキルも足りない。訓練も兼ねて、魔物を倒しに行きたいんだ」

「別に情けないとは思いませんでしたが……。こう言っちゃあなんですけど、勇者様ほどの方がレベル上げるには、そこいらの魔物じゃ足りませんよ。それこそ、魔王とか、その配下の上級魔族とかじゃないと」


 確かにね。レベルが上がれば上がるほど、次のレベルまでの道のりは遠くなる。今のレベルは103、次までどれくらいかかるのやら。

 バグくらいの強敵なら経験値が多そうだけど、そのバグを倒すためにレベルを上げたいんだしなあ。ちょっとしたジレンマだ。

 でも、魔物相手でもスキルは上げられるはず。今の俺は、勇者パーティだったみんなの動きを真似しているだけ。これではスキルとは呼べない。

 だから、経験を積みたい。


「まあ、勇者様が言うなら、別に断る理由もないと思いますけど……。団長に確認してみます」


 かなり悩んだようだったが、メルヴィナはうなずいてくれた。

 よかった。


「ありがとう」

「いえ、お礼を言われることじゃないですよ。勇者様が魔物を倒してくれるっていうなら、兵士たちも他の仕事ができますからね。むしろ、こっちがお礼を言わないと」


 ニカッと笑ってくれるのがありがたい。


「ただ、今日みたいな緊急事態があるかもしれませんから、予定はきっちりと立てないといけませんね」


 あ、そうか。考えなしに、あっちこっち行ったりはできないか。


「許可をとって予定を立てて。ま、ここら辺はアタシたちがやりますよ。決まり次第、勇者様にご連絡します」

「うん、ありがとう」

「よしてくださいよ。何度もお礼を言われると、むずがゆくなっちまいます」


 頼むと、メルヴィナは敬礼して医務室に戻っていった。

 俺は……、今は、家に帰るくらいしかできないか。

 通りかかった兵士に、家に帰ることを伝える。アーサたちにも連絡するよう頼んで、俺は砦を出た。

 外は、もうすっかり夜になっていた。急いで帰ろう。

 お願いすれば馬車くらい出してもらえたかもしれないが、俺は走ることにした。普通の人間では遠い距離も、勇者の脚ならすぐだ。

 人気ひとけの少なくなった道を駆ける。時折屋根を借りて近道。軽業師のような芸当も、今なら簡単だった。

 とはいえ、こんなことが何かの練習になるわけでもない。家の前で脚を止め、息切れ一つ無く扉を開けた。


「おかえりなさいませ、勇者様」

「……ただいま、リアン」


 扉を開けたら、真正面にリアンがいた。


「ずっと待っててくれたのか?」

「一分ほどです。そろそろお帰りになる頃合いかと存じまして」


 なんで一分先の未来が見えているんだろう。相変わらず隙が無い。


「湯を沸かしてございます。食事よりも先にお体を拭かれるかと」


 うん、まあね。でも、だからなんでそれが分かるの。


「僭越ながら、お手伝いいたします。お部屋でお待ちください」

「ああ、いや、それはいい。自分でやるから」

「ですが……」

「すぐに済ませるから、リアンは食事の用意をお願い」

「……かしこまりました」


 ちょっと不満そうだったけど、勘弁してもらいたい。リアンに頼んだら、体中隅々まで拭かれそうだ。それはさすがに恥ずかしい。

 俺は、湯の入った桶とタオルを持って、階段を上がる。自室に入って、ため息を吐きながら服を脱いだ。

 タオルを湯に浸して、体を拭く。傷一つ見当たらない、自分の細い体を。

 これからは、もっと今の力に慣れていかなくては。それに応えるように、体も鍛えないと。


「……ふぅ」


 差し当たっては、魔物との戦いによるスキル向上だ。レベルが上がりづらくとも、経験は積める。それは決して無駄にはならない。

 体を拭き終えて服を着直すと、ノックが聞こえた。リアンかな。


「今行くよ」

「かしこまりました」


 気配が遠ざかるのを感じつつ、湯桶とタオルを掴む。

 部屋を出ると、良い匂いがした。今日の夕食も、美味しそうだな。

 これからは、忙しくなる。リアンの食事を食べる回数も減るだろう。

 俺はなんとなくそれを寂しいと感じながら、階段を降りた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ