表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/23

腹ぺこ優介、登場……

何とも言えない、微妙な空気が流れる中、食卓が進む。

そこへ一本の電話が入った。

電話の主は立木 優介。将也の一回り下の弟だ。

身長180㎝、体重は?秘密らしいが、割とポッチャリ系。

不動産会社に勤務している。


遥が将也と暮らしていた時から、頻繁に家へやって来て

ご飯を食べて行く男で、どういうわけか離婚後も、

子供達の事が気にかかるとか何とか、理由をつけてはやって来て、

天海家で食事をする関係が続いていた。


これまで週に一度は、天海家で食事をしていたのに、

ここ1ヶ月程、連絡が途絶えていた。

気にはなっていたが、彼も若者。

もしやステキな彼女でもできたのか、と遥は勝手に想像していた。


『義姉さん、落ち着いて聞いて欲しいんだけど……』

優介の声がいつになく暗い。

「どうしたの?」


『うん。兄さんが……死んだんだ。くも膜下出血だって。

もう、1ヶ月も経っちゃったけど……』


「うん。そうらしいね。今ね、玲子さんが来て、色々聞いてるとこ」


『はぁ⁉︎何で?玲子さんが?分かった。すぐそっち行く!』


遥の返事も聞かず、電話は切れた。

優介は、この近くのマンションで一人暮らしをしている。

瞬く間に天海家に到着し、挨拶も無しにズカズカと上り込むと、

玲子に向かって真っ赤な顔で罵声を浴びせた。


『あんた、どういうつもりだよ!俺は認めてないぞ、

あんたが兄さんの嫁さんだなんて!ましてや、どういうつもりでここにいるんだ‼︎』


玲子と優介は、将也が入籍すると言った時と、今回の葬儀で会ったきり。

会話もしていない。

ほぼ初対面だ。


優介の剣幕に、声も出ない玲子。

普段、温厚な優介しか見たことがない遥も、少し戸惑ったが、

「まあまあ!一緒にご飯どう?」


と声をかけてみた。

ふとテーブルに目を向けると、優介は急に空腹感に襲われた。

徐ろに食事を始めた。


不安そうに優介を見つめる詩織に、彼は

『大声出してゴメン。おじさん、お腹空いててんだ』

と笑いかけた。ホッとしたように詩織も微笑んだ。


優介と詩織は何度も会っていた。

将也が、優介の家へ行くときは詩織も一緒のことが多かったからだ。

子供好きの弟に、初めてできた娘を自慢したかったのかもしれない。


食事が済むと、遥は二人の息子に詩織のお守りを命じた。

翔と翼は、詩織を連れて近所の公園に出かけた。


子供達がいなくなった後、口火を切ったのは優介だった。

『で、玲子さんは今日どうしてここへ?』


玲子は、遥に話したことを同じように優介に話した。


『なるほど……で、保険金っていくら?』

優介の問いに、

『3000万円です』と玲子が答えた。


そこで遥が、

「だからね、折半しようと言ってるのよ。玲子さん、頼るところがないし、

詩織ちゃんだって まだ小さいんだから、働くったって大変じゃない」


『でも義姉さんはやって来たでしょ?身寄りのない中、急に兄さんに放り出されて、

それでも二人の子供を食べさせて来たじゃないか。

玲子さんだっていいって言ってるんだから、全額 義姉さんが受け取ればいいじゃん!

プレゼントだよ。兄さんから、最後の……』


玲子は うんうんと頷いている。


「だからこそ言ってるのよ‼︎

女一人で子供を育てていくの、まして頼る所も職もない人が、

どれだけ苦労して生きて行かなきゃならないか、分かってるからこそよ。


それに、プレゼントなら、もうもらってる。私には翔と翼がいるもの。

あの子達がいたから、ここまでやって来れた。これ以上は何も望んでないわ」


優介は深い溜息をついた。

少し考えていたが、やがて何かしら思いついたような顔で

遥に言った。

『3000万円あれば、店舗付き住居が買えるよ。

前から義姉さんが言ってた、カフェだか、定食屋だか、できるじゃん』


確かに、魅力的な話ではある。

前々から夢だった、店を持つ事も夢ではなく現実のものになる。

迷っている自分がいた。


『是非、やってください!こんな美味しい物、他の皆さんにも

食べていただきたいじゃないですか!』

玲子が目を輝かせた。


遥が考え込んでいると、


「「ただ今‼︎」」玄関で子供達の声がした。

「子供達、帰ってきたし、一旦この話は保留にさせて」

遥が言った。


「お疲れ様!楽しかった?」

遥が息子達に労いの言葉をかけた。


『なんか、久々にブランコとか乗っちゃった!

たまには童心に帰るのもいいね』

と翼が笑顔で言った。


『童心って……お前、まだ子供じゃん』

翔がゲラゲラ笑った。


うっすら微笑を浮かべ、満足気な詩織。

『良かったね』

玲子が詩織の頭をそっと撫でた。


暗くなる前に玲子達は帰る事になった。


去り際に、玲子が言った。

『遥さんの経営するお店、やっぱり私行ってみたいです』


二人が帰った後、優介がお腹をさすりながら

『なんか腹減らない?考え事するとお腹へるね』と笑った。


遥は呆れて笑うしかない。

「どうせ夕飯も食べて行くつもりだったんでしょ?」


優介はへへへ……と笑う。


冷凍庫に挽肉が入ってるのを思い出し、

「よし!ハンバーグでも捏ねるか!」

と元気に叫ぶ遥。


頭の中では、今日の出来事が走馬灯のようにグルグルしているのだが……


遥の声に男三人が

「「「イェーイ!!!」」」と賛同の雄叫びをあげた。


圧力鍋で炊き上げたご飯、

味噌汁にサラダ、メインは目玉焼き乗せハンバーグ!


男三人の顔がパーっと輝いた。

いただきますを言うが早いか、もう口にハンバーグが…


「熱っ!でも うまっ‼︎」


誰かの「美味しい」って顔は人を幸せにする。

みるみるお皿が綺麗になっていくのを見て、

遥はとても満たされ気持ちになった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ