ふわふわpink
春麗らかなある日……
「あのさー、突然なんだけど、お花見したくない?」
遥の鶴の一声に、久しぶりに天海家の3人、優介、玲子と詩織が揃った。
『俺もさ、同じ事思ってたんだ』
翼が言った。
こんなフワフワした季節、大人も子供もおかしくなる。
家になんか居られない!
台所はにわかに活気付いた。
遥は炊き上がったご飯に、チリメンジャコとカリカリ梅を細かくした物を混ぜ合わせ、
大急ぎでおにぎりを握った。
コンロでは、玲子が出汁巻卵を焼いている。
『何本あれば足りるかしら?』
そう言いながら、4本目を焼き上げていた。
「冷蔵庫の中の物、適当に出してさ。ウィンナーもあるじゃん!
とにかく優介君がいるから、たくさん持ってこう」
遥の言葉にみんなが大笑いした。
『俺だけが食うわけじゃないのに?ま、皆様のご希望とあらば
食しますよ。ええ!モリモリとね‼︎』
そう言う優介に、みんなまた大笑いした。
『お菓子も持ってく?』
詩織がポテチの袋を持っていた。
「「「もちろん!!!」」」
男3人が答えた。
「他のお菓子も持って行こうね!いちごもあるよ」
遥の言葉に、詩織がにっこりした。
なんだかワチャワチャと準備して、6人は出掛けた。
****
近所の川沿いの土手の上にレジャーシートを広げた。
川沿いに枝垂れ桜が植えられているこの場所は、
意外にも花見客は少なく、遥が穴場だと目をつけていたのだ。
遥は珍しくビールを開けた。
「綺麗な桜の下で飲むと格別よね」
そう言って遥は桜を見上げながら微笑んでいる。
後のメンバーは、ひたすら花より団子状態だ。
優介は宣言通り、モリモリとおにぎりを食べている。
優介の真横でいちごを食べていた詩織は、よほど気持ちよかったのか、
スヤスヤと寝息を立て始めた。
みんな、詩織の寝顔を覗き込んで微笑んだ。
「詩織ちゃん、大きくなったね……」
遥は時の流れの速さを噛み締めながら、
しみじみと言った。
大きくなったのは、詩織だけじゃない。
翔も翼も、それぞれこの春、学生生活を終える。
小さかった翼はこんなに逞しく、
優しい翔は、ますます人の事を気遣える優しい青年に、
それぞれ成長してくれた。
「ああ……私が年とるはずだわ」
上を向いて涙が流れるのをごまかしながら、
遥が笑った。
つられたのか、玲子が鼻をすすりながら、
『私もビール飲んじゃおうかな!』
と大きな声で言った。
あっという間に玲子の頬がピンク色に染まった。
「あ、玲子さん桜みたいな顔色して」
遥がからかった。
『え?本当ですか?いやぁ……恥ずかしい……』
耳まで赤くして恥じらう玲子を見て、
『かわいいなぁ……』
そう言ったのは優介だった。
「なんか今日あったかい?てか、暑いよね?」
翔が少し困った顔で笑った。
美しい物のそばでは、人は正直になるものなのか……
思った事がついつい口に出てしまうものなのか……
優介は詩織に、羽織っていたシャツをかけると
横に添い寝し始めた。
それを見つめる玲子は、思わず微笑んだ。
微笑む玲子に向かって、優介が言った。
『詩織ちゃんの成長をさ、これからもずっと
見ていきたいな。玲子さんと一緒にさ!』
『え……?」
玲子はキョトンとしている。
優介は体を起こして正座すると、正面から
玲子を見つめて言った。
『結婚しませんか?俺たち』
『は?あ、あの……』
空気の足りない金魚みたいに、玲子は口をパクパクさせて驚いている。
みんなも驚いていた。
玲子の返事を、全員が固唾を飲んで見守った。
『あの……私で良ければ……』
全員が拍手した。
『う、うーん……』
詩織が寝苦しそうに寝返りをうった。
そこにいた全員が「シー!」というポーズをした。
代わりに、玲子の顔をニヤニヤしながら見つめていた。
満開の桜に負けないくらいピンク色に頬を染めた玲子は、
まるで少女のような顔で俯いていた。
「最高の花見だね!」
遥が言った。
みんな大きく頷いた。
季節感が大幅にずれてしまい、ピンとこない回だったかもしれませんね。
誠に申し訳ございません……
プロットを書いた頃は、まさに桜の季節で、絶対に物語に盛り込みたくて、
あえて春のまま投稿しました。
読んでくださって、ありがとうございます!




