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告白

解けない魔法はない。

覚めない夢もない。

遥は十分すぎるくらい大人だもの。

そんな事は百も承知だ。

否が応でも日常に引き戻される。


ただ、ライブで遭遇した事を機に、同じバンドのファンだと知った

遥と玲子の間には親近感という名の接着剤ができた。


仕事の合間にライブの感想で大いに盛り上がった。

一つの疑問点を除いて……


遥が何気なく玲子に質問した。

「そういえばさ、何で優介君と一緒にライブに来てたの?

優介君が、あのバンドのファンだなんて全然知らなかったのよね」


『ああ。ホントは将也さんと行く予定だったんです。あのライブ……』


何と‼︎

あの男も彼らのファンだったのか……

たじろぐ遥に玲子が話を続ける。


『で、チケットを2枚取ってあったんですが、こんな事になってしまって……

どうしようか悩んでたところへ、たまたま、優介さんが一緒にどこかへ出かけようって

誘ってくれて。だから思い切って、ライブに一緒に行って欲しいってお願いしたんです。

そしたら、あっさりO Kしてくれて……』


「そうだったの。チケット、無駄にならなくて良かったね!」

遥の言葉に、玲子が笑顔で大きく頷いた。


遥の脳内にまたひとつクエスチョンマークが浮かんだ。


ここで しょっちゅう会ってるにも関わらず、わざわざ外で会おうとするなんて……

余計なお節介だとは知りつつも、突き止めずにはいられない気持ちだった。


****


夕食時……

優介がフラリとやって来た。


『ただ今〜』


「お帰り……って、ここあなたん家じゃないってば。もう!何回言ったら分かるのかな」

洗濯物を片付けながら、遥が優介に言った。

優介はそんな言葉を完全に無視し、


『今日の夕飯なーに?』

と言いながら台所へ向かっている。


台所には玲子がいた。

優介を見て、

『あ、お帰りなさい!今夜は赤魚の煮付けです。遥さんに教えてもらったから、

早速作ってみようと思って』

と嬉しそうに言った。


何、この小っ恥ずかしい状況。

新婚カップルかーい!


遥は2人から溢れ出ているピンク色のオーラを察知して、そう思った。

クロも2人を、見ていられないとでも言うかのように、しつこく顔を洗っている。

詩織は嬉しそうにクロの真似をしていた。


遥は、優介をわざわざベランダに呼び出し質問した。

「ねえ、ライブで会ったよね?あなたが玲子さんを、どこか行こうって誘ったんでしょ?

優介君が、あのバンド好きだなんて知らなかったわ〜」


『俺だって、義姉さんがあんな所にいるなんて思いもしなかったよ!

てか、義姉さんも好きだったんだね。ぜーんぜん気がつかなかったよ』


「別に内緒にしてたわけじゃないんだよ。ただ、言い出しにくかったっていうか……

いいおばさんがさ、あのバンドのファンだなんてさ、恥ずかしくて……

あのさ、将也も好きだったんだね」


『ああ。それは玲子さんの影響みたい。てか、何にも気にする必要ないよ。

いいじゃん。誰が誰を好きだって。人に迷惑かけてるわけじゃないし。

俺は今回初めて彼等の曲聞いたんだけど、すごい良かったもん。

義姉さん達が夢中になるの分かるよ』


「あ……ありがとう」

遥は、別に自分の事を褒められたわけでもないのに、何だかくすぐったい

変な気持ちになった。


『後さ、あれは一応初デートのつもりだよ。俺的にはね』

優介が言った。


「という事は、あなた、玲子さんの事……」

遥が目を見開いて言った。


『うん。好きみたい。何だか放っておけない感じがさぁ……』


「うん。分かる!」

遥は共感した。

玲子からは何だか危なっかしい空気が常に出ているのだ。

だからこそ、同居を申し出たのだ。


『あ、分かる?何事にも一生懸命なのに、空回りしちゃうとことかさ、

助けてあげたいなぁって思わせるんだよね、彼女……』

優介の言葉に、遥は大きく何度も頷いた。


「あー……こういう所よねー。私に足りないとこ。

将也から見て可愛げのない妻だったんだろうなぁ」

遥は将也の言葉を思い出しながら言った。


不思議そうな顔で優介が遥を見つめている。

「私ね、あの人に言われたのよ。他に守りたい人が出来たって……」


『そんな勝手な事言ったんだ、あのバカ‼︎義姉さん、ごめん……』

優介は申し訳なさそうに言った。


「やだ、優介君は何も悪くないよ。それに、あの人の言う通りかも。

男の人に守られて生きていくタイプじゃなかったんだね、私……」


『そんなわけないじゃん! 1人で大丈夫な人間なんてこの世にいないでしょ?

世の中にはさ、男と女しかいないわけで、それぞれ支え合っていくようにできてんじゃないの?』

優介が優しくフォローした。


「ありがとう。でも玲子さんに惹かれる気持ちは何となく分かるよ。

で、彼女に気持ちは伝えたの?」

遥は聞いた。


『うん。ストレートにぶつけた。兄さんの事があるからすぐに気持ちを切り替えるのは

難しいって。でも、前向きに考えてくれるってさ』


「良かったね!詩織ちゃんの事もあるし、生半可な考えじゃダメよ」

そう言う遥に、


『もちろん!結婚を前提にって考えてる』


そう言ってはにかむ優介に向かって拍手を送りつつ

「素晴らしい‼︎」

と遥が笑った。


しかし、玲子さんより年下のくせに、生意気言っちゃって……

しかも兄弟揃って、同じ女性に惚れるなんて……

遥は1人で苦笑していた。


『何?なんか含みのある笑い……』


「別に。何でもないわよ」

遥はまだニヤニヤしている。

そんなやりとりをしていると、台所から玲子の声が聞こえた。


どうやら赤魚が美味しく煮上がったらしい。

「さ!ご飯だって。行こ!」

遥が優介を促した。


優介は満面の笑みで従った。








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