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強敵現る


 料理大会決勝トーナメント、その会場は東京都内の調理専門学校を三日間貸し切って行われる。

 一日目に第一試合、二日目に第二試合、三日目に決勝戦といった流れだ。

 希望者は会場の隣にあるホテルを三日間利用することが出来るらしく、俺達は利用することにした。

 時刻は朝の九時、俺と佐伯さんは会場の専門学校前に到着していた。


「いよいよ始まるのね」

「ああ、今日の試合何としても突破しないとな。第一試合は十五時からだったよな?」

「ちょっと待ってね」


 佐伯さんはカバンからルールブックを取りだし今日の日程を確認する。

 このルールブックは少し前に送られてきたもので大会の概要や日程などが書かれている。


「そうね、それまでは自由行動でいいらしいわ。調理室とか学校隣のホテルは自由に使ってもいいらしいわ」

「ほうほう、俺は先に荷物を置いてこようかな。その後、調理室を見に行くよ」

「じゃあまずはホテルに荷物を置いてからね」


 俺達は先にホテルの受付を済ませる事にした。




 ホテルの受付を済ませた俺と佐伯さんはそれぞれの部屋で荷物の整理をしていた。

 ちなみに、運営の人が気を使ってくれたのか隣同士の部屋になっていた。


 さて、まずは荷物の整理だ。

 大会用の唐揚げ、生活用品、料理のレシピ本、大体こんなもんだ。

 親父から受け取った唐揚げは全部で二十個、ホテルの冷蔵庫に入れた。これを使って俺は優勝を目指さなければならないため、無駄遣いは絶対に出来ない。

 そして、料理のレシピ本は勉強の為に持って来た。備えあれば憂い無しだ。


「こんなもんかな」


 時間は朝十時を回っていた。腹が減った俺はホテルのレストランで食事を取る事にした。




 佐伯さんはもう少しかかるそうなので先にレストランに降りて来た。

 料理はバイキング形式になっていて、スクランブルエッグやウインナーなどビジネスホテルでよく見る感じのラインナップだった。

 とりあえず適当にささっと料理を取り席に着いた。

 すると誰かが声を掛けて来た。


「あんた選手の人?」


 声を掛けて来たのは違う学校の制服を着た女子生徒だった。

 耳元まで伸びた黒髪に、綺麗に整った顔。

 見れば誰もが美少女と思うだろう。俺は美少女の問いに答える。


「そうだが、君もか?」

「ええ、あたしは桜野学園代表の【柳 鈴音】(やなぎ すずね)よ」

「俺は、海原学園の速水健太郎だ、よろしく」

「へぇー、最初の相手はあなただったのね」

「最初の相手って何のことだ?」

「知らないの? トーナメント一回戦は海原学園と桜野学園が戦うのよ」

「ええっ!?」

「そんなに驚く事っ!?」


 俺の大袈裟なリアクションに柳さんはドン引きしている。


「まあ、いいわ……私もお腹減ってるの。料理取ってこよっと」

「そうか、しかし俺はてっきり対戦相手の情報を集めているのかと思っていたが、飯を食いに来ただけみたいだな」

「やだな〜、そんな事してないわよ」


 俺は食事に戻り、柳さんは料理を取りに行く。

 料理を取って来た柳さんは、何故か俺の隣に座り食事を始める。


「……」

「………」


「……あなた得意料理とかある?」

「やっぱり聞くのっ!?」


 こいつやっぱり情報集める気満々だ!


「いいじゃない、減るもんじゃないし。教えなさいよ」

「なんか態度でかくなってるし! ……まあ、いいけど」

「あ、いいのね」


 隠すほどの物でもないしな、俺の得意料理を教えてやろう。


「俺の得意料理は唐揚げだ、以上」

「……へ?」


 ちょっと意味が分からないんですが? という顔をされた。


「唐揚げってあの唐揚げよね?」

「そうだ」

「……他には?」

「俺は唐揚げ以外作れない」

「……ぷっ! アハハっ!! 何それっ! それで優勝するつもりなの?」

「俺は出来ると信じている」

「ふっ、まあいいわ。あなたがどうやって予選を勝ち抜いて来たのか知らないけど第一試合は私の勝ち決定ね。精々頑張ることね」


 いつの間にか食事を終えていた柳さんはトレーを持ち席を立った。


「あ、そうだ! 私の得意料理を特別に教えてあげる。あたしの得意料理は中華よ。本場中国の大会で優勝したこともあるのよ。じゃーねー!」


 聞いてもないのに喋り出した柳さんはそれだけ喋ると、食器を片付けてレストランを出て行った。


「……中華料理か」


 本場の大会で優勝するほどの実力を持っているって事か。

 油断は出来ないな。



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