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秘伝のタレ

「ただいま~」

「おう、お帰り」


 家に帰った俺を迎えてくれたのは唐揚げ専門店【鶏っぴー】を経営している親父だ。

 夜の仕込みをしている親父に俺は今日あった料理大会の事を話すことにした。


「親父ちょっといいか? 頼みがあるんだけど」

「なんだ? 小遣いならあと二週間我慢しろ」

「いや、そうじゃなくて。なんか料理大会に出ることになって親父の唐揚げ使いたいんだけど」

「駄目だな」

「はやっ!?」


 即答だった、なんでだよ。


「その理由を教えてやる、まず一つ。お前も知ってると思うが、この唐揚げは一日に何千個売り上げる商品でありそれを作ってるのは俺一人、お前に譲るだけの唐揚げはおそらく残らない」


 そう、親父の作る唐揚げは基本的に一日で完売する。

 今日の弁当に入っていた唐揚げは昨日、珍しく余った分で俺も久々に食べたほどだ。


「理由二つ目、その料理大会とやらでこの唐揚げが世間に広まりこれ以上忙しくなるのが嫌だ」

「そんな理由!?」

「そんな理由とはなんだ! ただでさえ忙しいのにこれ以上客が増えたら死んでしまうわ!」


 まあ、実際忙しい毎日を送ってるのは俺も知っているから気持ちは分かる。


「どうしてもダメか?」

「……そうだな、お前が放課後この店の手伝いをすると言うのなら考えてもいいぞ」


 つまり放課後に店で働けということか。面倒くさいがしょうがないか。


「……給料は?」

「時給50円だ」


 菓子パンも買えねぇじゃねえか。


「ああ、もうっ! 分かったよ! 約束する」

「交渉成立だな」


 そういうと親父は冷蔵庫を開けタッパーを取り出した。


「ここに入ってる唐揚げ五個、これを明後日の予選で使え。残りは大会前に渡せるよう仕込みの量を増やしてやる」


 タッパーの中にはタレに漬け込んである鶏の切り身が入っていた。


「なるほど、このタレが美味さの秘密なのか。作るの大変だっただろうな」

「そうだぞ、これは俺が昔いろんな調味料を混ぜ合わせて遊んでいた時に偶然できたものだ」

「なんか、簡単に作ってたっ!? そして調味料で遊ぶって何っ!?」

「近所に居酒屋のおっさんがいるだろ? その店で出している酒のつまみに合うタレを一緒に考えてたんだ。……まさか、あれとあれを合わせるとあんな旨くなるなんて、あのときはびっくりしたなー」

「ちょっ、すごい気になるんだけど!」

「おっと、それは企業秘密ってやつだ。さて、そろそろ仕込みでもやるか。お前はそろそろ寝ろ」


 会話を切り上げ、親父は明日の仕込みに戻る。

 俺も部屋に戻ろうとすると、親父が不意に喋りだした。


「……そういえば、お前が何かに熱中してるのを初めてみたな。料理大会だっけか? 一生懸命やる姿ってのは格好いいもんだ。頑張れよ」

「……ありがとう、俺勝ってくるよ」

「ところでお前唐揚げの作り方知ってるのか?」

「……知らない」

「……」


 俺は店の閉店時間後に唐揚げの作り方を教わった。

 そして、大会の予選が始まる。

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