決まる勝者
「唐揚げだとっ!!」
「まあ、これしか作れないからな」
唐揚げを作る俺を見て牧瀬が驚いた表情をしている。
やはり、こいつが犯人か。
「そ、そうか! 分かったぞ! それは普通の唐揚げだろう! まったく、びっくりさせやがって――」
「普通の唐揚げ? そんなわけないだろ」
「な、なにっ!?」
「まあ、見てろ。修行の成果を見せてやるよ」
俺はタッパーを開ける。
その中には既に片栗粉がまぶされた唐揚げが入っている。
俺は温めた油の中に唐揚げを投入する。それを見ていた牧瀬はある事に気づく。
(いつもより温度が高いじゃないか。あれでは中に火が通る前に表面が焦げてしまうぞ! この男、何を考えている――)
「……よし、ここだ!」
唐揚げをすくい上げ網の上に乗せる。そのまましばらく放置だ。
(ほう、余分な油を落とす事を覚えたか。この男、確かに成長している。さて、ここからどうする?)
牧瀬は静かに俺の調理を見ている。
次は何を作るのか、そんな事を思っているのだろう。悪いな、その期待には答えられそうにない。
余分な唐揚げの油が落ちきった所で皿に盛る。
「完成です!」
それを審査員の前に置く。
それを見た牧瀬は訳が分からないといった表情で俺を見る。
皿には唐揚げが一つ乗っているだけだ、とても料理大会の品とは思えない。
しかしその存在感は圧倒的でキラキラと輝いているように見えた。
「さあ、どうぞ。食べて下さい」
「あ、ああ……」
審査員は箸を取り唐揚げを食べようとするが――。
「な、なんだこの存在感は! 今までの速水君の唐揚げとはまるで別物だ!」
審査員はまるで割れ物を扱うかのように唐揚げを箸で丁寧に取り一口食べる。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!! 美味いぞぉぉぉぉぉ!!!!」
審査員は会場に響き渡る程の声をあげる。
「素晴らしいとしか言いようがない! 今までの唐揚げとはまるで別物じゃないか!」
審査員は大絶賛だった。しかし、それに牧瀬が抗議の声をあげる。
「ふざけるなっ! 一体どうなっているんだっ! 速水ぃ!」
牧瀬は怒りを込めた目で俺を睨みつける。
すでに皇帝としての威厳と余裕は無くなっていた。
そんな牧瀬に、俺は新しく作った唐揚げを皿に盛り牧瀬に差し出す。
「食べて見ろよ。俺の、いや……俺達の料理を!」
「くっ! 寄越せ!」
牧瀬は俺から皿を強引に取り、唐揚げを食べる。
「なにっ!? 俺の料理より美味いだと……」
牧瀬はがっくりとうなだれる。
「得点を言うまでも無さそうだな……優勝は海原学園、速水佐伯ペア!!」
審査員は高らかに宣言する。
俺達は勝ったのだ、あの皇帝に。
「やったわ速水君!! 優勝よ優勝っ!!」
「えっ? ちょっ!?」
佐伯さんが俺に抱き付いて来る。
やばい、これはやばいぞ!
「ありがとう速水君!! 私、最後何もしてないけど、とにかくありがとう!!」
「……」
佐伯さんの言葉が耳に入ってこない。
女子とこんなに密着することなんか今までなかったから緊張しまくってマグロ状態だ。
「ハッハッハッ! 面白いことになってるでござるな!」
「あいつ女慣れしてないわね……全然動かないわよ。……あれ? 意識飛んでない?」
「えっ? 速水くぅぅぅぅーんっ!!!!」
意識が途切れる瞬間佐伯さんの声が聞こえた気がした。
解説は次回になります。




