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夜の出来事

「ついにここまで来たな……」

「そうね……」


 大会2日目の夜。二回戦を勝ち進んだ俺達はホテル1階の食堂で明日に向けての会議をしていた。


「ついに決勝でござるか」

「今夜はお祝いね、唐揚げ君」

「で? 何でお前らがいるんだよっ!?」


 そう俺達とは、俺と佐伯さんだけではなく高山と柳さんも一緒だった。

 4人仲良くホテルのバイキングを満喫している。


「お前ら学校に帰らなくていいのか?」

「何を言っているでござるか! 決勝を見ずに帰るなどありえぬわ!」

「そうよ! あんたが無様に敗北する姿を写真に撮るまでは帰れないわ!」

「一人だけ理由がおかしくね!?」

「まあまあ速水君、落ち着いて。はい、お茶」


 佐伯さんが俺にお茶を差し出してくれる。

 それをありがたく頂戴し飲む。


「……ふー。ありがとう佐伯さん」

「どういたしまして」


 その様子を見ていた柳さんが、何やら探るような視線で俺を見る。


「……あんた達何かあった?」

「ん? いや、何も無いけど。何で?」

「なんか前より信頼しあってると言うか……イチャつきやがってこのやろー!」


 柳さんが俺を肘でツンツンとつつき、からかってくる。

 酒でも飲んでるのかこいつは。

 何気なしに隣を見ると佐伯さんは顔を真っ赤にしてうつむいていた。


「佐伯さんどうかした?」

「な、何でもない! なんでもないから!!」

「……あんたってホント鈍いわね……」


 柳さんから何故か哀れみの視線を向けられる。

 何でだよ。


「まあまあ、それより明日の事を話そうでござる」


 なんとも言えない空気になった場を高山が仕切り直す。


「決勝の相手は強敵でござるよ。まだ高校生ながら海外の一流レストランで修行をし、世界トップレベルの技術を身に付けた選手でござる」

「ここまでの試合も全てにおいて相手を圧倒していて、なんと最高で42に点叩き出しているらしいわ!」

「42点だとっ!? まさかチート食材か!?」


 俺しか持っていないと思っていたチート食材を高山も持っていた。

 もし決勝の相手がチート食材を使ってきた場合、世界レベルの調理技術で食材を調理することになる。

 そうなるとおそらく、いや間違いなく俺は負ける。

 今日の時点で既に点数では負けているからな。何か対策が必要だろう。

 問題はどうすればいいか全く分からないということだ。


「ちょっと部屋に置いてあるノート持ってくる」


 頭の中で考えても、まとまらない。

 俺は部屋にノートを取りに行った。



 ホテルの階段を登り部屋のあるフロアに到着した。角を曲がると誰かにぶつかりそうになる。


「うわっ!!」

「っ!?」


 ぶつかりそうになったのは全身黒い服を着た細身の人物だった。それと帽子を深く被っていて顔はよく見えなかった。

 その人物は俺には目もくれずさっさと立ち去ってしまった。


「なんだ今の……」


 ホテルにはまるで合わない人物に俺は動揺したがそのまま部屋へ向かう。

 部屋の前に着くとホテルマンが慌ただしい様子でフロアを巡回していた。


「あの? 何かありました?」

「あ、実は泥棒にマスターキーが盗まれてしまったのです。警備員を殴り気絶されてマスターキーを持って行ったのです!」

「なんだって!?」

「現在従業員総出で泥棒を捜索中です。怪しい人物を見ませんでしたか?」


 怪しい人物っていうと、間違いなくアレだよな……。


「さっきあそこの曲がり角で帽子を被った怪しい男を見ました!」

「ホントかい!? ありがとう!」


 ホテルマンは急いだ様子で泥棒探しに向かって行った。


「……まさかとは思うが」


 俺は自分の部屋の扉を開け中へ入る。

 中を隅々まで見渡すが荒らされた形跡は無かった。


「良かったぁ……」


 取り敢えずホッとした俺はカラカラの喉を潤すため冷蔵庫の扉を開けた。


「……ん? あれ?」


 ペットボトルはあった。


「……っ! そんなっ!? ウソだろっ!!」


 ある物が1つだけなかった。


「唐揚げがない!?」


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