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成長


「速水くん、アレンジって何を加えるのかしら? 普段料理をしない人間がアレンジをすると漫画の世界では悲惨な結果になるのを私は知ってるわ」

「思い出したんだ。これは前に山本が俺の弁当に入ってた唐揚げを盗んで行った時の話なんだけど」

「何よそのくだらない事件……」

「それでしばらくしたらあいつが戻って来たんだ」


――――――――――――――――――――――


「待たせたな」


 唐揚げを盗んで行った山本は10分程経つと教室に戻って来た。

 その手にはタッパーを持っていた。


「何も待ってないぞ。どこ行ってたんだよ、唐揚げ返せ」

「あっ!」


 俺はタッパーを勝手に開けると中には唐揚げが入って……いた?

 よく見ると唐揚げの上に何か黄色い物が乗っていた。


「この匂い……チーズ?」

「そう! さっき職員室の電子レンジで唐揚げにチーズを乗せて温めたんだ。美味そうだろ!」


 まあ、確かに合いそうな組み合わせだが、わざわざ学校でやるような事ではないぞ山本よ。


「途中で一個食べたんだけどヤバかったぞ! なんていうか……その……とにかくヤバかったぞ!!」

「はぁ……まあ折角だし食べてみるか」


 この時、俺は少し山本にイラついていた。

 世の中には唐揚げにレモンをかけると怒る人がいるが俺もそのタイプの人間だ。

 ましてや、人の唐揚げに勝手にチーズを乗せるなど断じて許される事ではない。

 不味かったら文句のひとつでも言ってやろうと思いながらチーズ唐揚げを食べる。

 こ、これは!


「ヤッバいなこれ!」

「な! ヤバいだろ!」


――――――――――――――――――――――


「……と、いうことがあった」

「聞いてるだけで頭が痛くなってくる会話ね……。でも確かにチーズはいいかも知れないわね。ミートソースにも合いそうだし」

「よし! 決まりだな」


 俺は、とろけるチーズを唐揚げミートスパに乗せ、麺が伸びない程度にレンジで温める。

 これで本当に完成だ。

 完成した品を審査員のテーブルの上まで運ぶ。


「お待たせしました、これが海原学園の料理です」

「君たちは昨日の子達だね。昨日の唐揚げは最高に美味かったぞ! 今日また食べられると思うと……ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


「ねえ速水君、やっぱりこの人――」

「言うな!」


「はっ!? 失礼、審査だったね」


 審査員は唐揚げミートスパをじっくりと見つめる。

「ほう、上に乗っているチーズのなんと美しいこと。そしてボリュームある唐揚げとミートスパ! 実に面白いではないか!」


 審査員の評価はなかなか良かった。

 審査員はそのまま料理を食べ始める。まずはチーズが絡んだ唐揚げを一口。


「な、なんという素晴らしい組み合わせなんだ!! 唐揚げとチーズがこんなにも合うなんて!! うわああああん!!」


 審査員は涙を流しながら料理をむさぼり食う。

 佐伯さんが何か言いたげな顔をしていたが、俺は首を横に振ってダメだと伝える。


「君達の料理、大変素晴らしい物だった! さて、点数だが……」


 審査員は俺達と高山を交互に見る。


「正直かなり迷った、どちらも素晴らしい料理だった。だが今回は!」


 審査員は机をバンッ!! と叩き立ち上がる。


「36点で海原学園の勝利とする!!」


 俺達は高山のきつねうどんに6点差をつけ勝利した。

 しかし、高山はそれに納得しなかった。


「納得いかんでござるよっ! 拙者のうどんが負けるはずないでござる!」

「高山君、確かにきつねうどんは素晴らしい物だった、両者とも料理の差はほとんど無かった程だ」

「だったら何故……」


「それは、情熱だよ」

「情熱?」


「そうだ情熱だ、確か君は一回戦でもこのきつねうどんを提出していたね? それは、別に悪い事じゃない。自分の一番うまいと思った料理を出すのは当然のことだ。しかし大会では優勝出来ても君自身は何も成長しないのではないかな?」

「っ!?」

「でも速水君は違った。同じチート食材を持ちながらも彼は料理をより美味しくする為のアレンジをしたんだ。その結果1回戦の料理より格段に良いものが出来た。それは料理人に取って必要な事なんだよ。だから私は彼の料理人としての情熱を高く評価したい。私からは以上だ。速水君、決勝戦も楽しみにしてるよ」


 そう言うと審査員は席を立ち、会場から出て行った。


「あの人、まともな事も言えるのね」


 佐伯さんが凄く失礼な事を言ってるが気にしないことにする。

 俺は落ち込んでる様子の高山に話かけることにした。


「高山……」

「速水殿、拙者の負けでござる。拙者忘れていたでござる。もっと美味しい料理を作りたいという気持ちを。決勝戦頑張るでござるよ」

「ああ、ありがとな」


 俺達は固い握手を交わす。

 少し恥ずかしかったがたまにはこういうのも悪くないと思った。


「では、さらば」


 高山は会場から出て行った。

 その姿を俺達は静かに見守っていた。


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