7話
「実際のとこどうよ、エリリン」
「だから誰がエリリンよ! 私はエリン!」
「似たようなものではないか。それに愛称で呼んだ方が仲がより深まるぞ」
「あんたなんかと仲が深まってたまるか!」
「エリリン……」
「何か言った? ハミハミ?」
「ハムハム」
アーサー、エリン、ハミーの三人はアーサーを真ん中に、賑わいをみせる大きな街の中を並んで歩いていた。
筋肉の話を終えた後、エリンとハミーはすっかりアーサーを殺す気が失せていた。あまりに気が抜けてしまったのだ。その後アーサーはある話を二人に持ちかけ、敵対関係でありながらしばらく行動を共にすることにしたのだ。
そして歩くこと数時間。荒野エリアを抜け、賑わいみせる古代風な石やレンガ造りの街並みへと風景が変わったのだ。
「んで真面目な話。どう思う……」
「さっきのあの話? そんなの本人にしか分からないわよ」
「ハムハム」
「真の答えはそうだが、考えることは出来る。そしてその考えが真実なら私たち皆、それどころか生ける者全てにとって、……悪いことにしかならないだろう」
アーサーは腕組をしながら難しい顔をし、ゆっくりと当てもなく歩く。それに並ぶようにトコトコとエリンとハミーが続く。ちなみにハミーは露天で買った揚げパンをお食事中だ。
「だ~か~ら~。それがどうやって真実だって分かるのよ。それに利点は? 確かに、その考えが本当なら相当やばいでしょうけど、それならあいつら、嘘をついてることになるでしょ? そんなの神じゃないじゃない」
「神が真実しか述べないなどと決まっているのか?」
「え? だって神なんだから嘘なんか――」
「本当にそう思うか?」
「…………」
「ハムハム」
エリンは黙ることしか出来なかった。たしかに、アーサーの言うことは一理ある。真実しか語れない神など人の幻想だろう。神だって生きている。
今までは想像上の存在、雲の上の人だった。しかし、こうして神に召喚され、神を目の前にして会話をし、神に使命を与えられた。否が応でも神の存在を認識させられ、神は実在し生きていると思わさせられる。
人間にとって、神とは全知全能。神の思考は全て正しく、全てが真実と考えられてきた。何しろ神とは万物の創造神とされているのだから。
そんな神がまさか嘘をつくなど誰が疑うだろうか。その凝り固まった思考から脱したアーサーは見事だったろう。そもそもこの神界に集められた戦士たちは、生きる時代も場所も違う。神に対する考え方も人それぞれ違ってくることもある。
だからアーサーは神エイロスを目の前にしてある思考に辿り着いた。
――そう。光の神エイロスと闇の神タルロスが実は手を組んでおり、戦士たちをどのようにか利用して全宇宙の過去から未来全ての破壊。そして新たなる宇宙の再生を目論んでいるのではないか、と。
「杞憂であればいいのだが……」
「…………」
「……ゴクン」