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6話

「キャハハハ! 当たったわ! ねぇ当たったよ!」

「……えぇ、そうね」

 そこにいたのは幼き少女が二人。1人は純白なドレスに白いクマのぬいぐるみを持つ少女――エリン。黒炎を放ち、アーサーを焼き殺さんとした張本人だ。もう一人は漆黒のドレスに黒いクマのぬいぐるみを持つ少女――ハミー。アーサーを幻惑魔法で惑わした張本人だ。

「ねぇねぇ。あの男が燃えた後に残る骨で遊びましょ!」

「……えぇ、いいわよ。……楽しそうね」

 狂気じみた発言に正気を疑ってしまう。二人の見た目は10歳にも満たない背格好だというのに。

「ほ~ねっ、ほ~ねっ、コツコツコツーン!」

「……ほねほねぇ~……」

 鈴の音のような綺麗かつ可愛い声で歌う少女たち。

 純白の少女が放った黒炎魔法は、対象が燃え尽きるまで消えることを知らない。普通の火とは全く違い、水をかけても消えることは一切ない。高々と燃え上がる黒炎は勢いを増し、アーサーを飲み込まんと燃え上がる。

「生ぬるい火だな。身体を絞るためにも、もう少し熱いほうが嬉しかったが?」

「えっ!?」

「ほねぇ~……」

 骨の歌を歌いながら骨の舞をしていた少女2人は驚きの声を上げる。間違いなく死んだと思っていたアーサーが体を起こしたのだ。しかも黒炎の業火が生ぬるいときた。

「ふんっ!」

 アーサーは身に纏うコートを脱ぎ去る。黒炎はそのままコートに纏わり付いたままアーサーから離れていく。

「なんで燃えないのよ! 私の黒炎魔法は絶対なのよ!」

 エリンは腰に手を当て頬を膨らませる。

「もう一回くらえぇ――ッ!」

 エリンが両手を上げると黒炎の塊が出来上がる。そしてエリンはアーサーに向かった振り下ろす。

 それに対しアーサーは手を前に出し、受け止める姿勢を作る。

「……今度こそ、生身に直撃。……死は、免れられない」

 黒いクマのぬいぐるみを抱きしめ、ハミーが黒炎の行方を確信する。しかし――

「ホーム、ランッ!」

 アーサーが手を振るだけで、黒炎は明後日の方へと向きを変えて飛んでいく。

「うっそぉ!」

「……うそぉ……」

 呆然とする2人。全てを燃やし確実に死に至らしめる必殺の黒炎魔法がいとも容易く弾かれる現象に驚きを隠せないでいた。

「お嬢ちゃん達ぃ!」

 ズビシィッ!! と鋭い勢いで少女二人を指差すアーサー。その大きな声に2人は戦闘態勢に入る。二人の勘が告げていた。この男は危険だと。

「パパママの居ないとこで火遊びは厳禁だ! 危なすぎるぞ!」

「え……?」

「……なに……?」

 2人は拍子抜けした。アーサーを殺そうとした2人からすると、確実にアーサーはエリンとハミーに攻撃を仕掛けてくるものだと考えていたからだ。だというのに、アーサーは見た目幼い少女に注意を促し、まるで自分が攻撃された事実などなかったかのように振る舞うだけだった。

「よく見ろ! この火傷の痕を!」

 そう言うとアーサーは上着を脱ぎ、上半身裸となる。

 露わとなるのは素晴らしい肉体美。八つに割れた腹筋。大きく盛り上がった大胸筋。各部位の筋肉がものすごい自己主張をしている。

 その美しい上裸姿を視界に収めてしまったエリンとハミーは赤面し始め、アーサーを直視できないでいた。

「よく見るのだガールズ! この胸から腹にかけて広がる火傷の痕を! これが火の怖さだ!」

 アーサーの言うとおり、アーサーの胸から腹にかけては大きな火傷の痕があった。そこだけ肌の色が違い、過去に酷い火傷を負ったのが伺える。

 しかし、それにしても酷いものだ。見た目幼い少女に男の上半身とはいえ、見ろ、と命令してくるとは。一種のセクハラまがいだろう。

 それからは何故か、アーサーの筋肉に関する講座が始まり少女たちを辟易とさせていく。それは1時間もの間続くのであった。まぁ、素直に聞かされ続けているエリン達もエリン達だが……。

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