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3話

 まず飛び出したのはジャンヌ。それに続くナポレオン、セラフ、レイ。

「先手必勝です! 穿て! 我が光の刃よ!」

 ジャンヌが高速で突き刺す細剣が光り輝く。神からジャンヌに与えられし力――光の魔力が細剣に纏わり、強固なる剣となったのだ。

「ふふふ。弱いわぁ」

 ジャンヌ渾身の一撃はモリーの正面に築かれた半透明な赤い壁によって防がれる。そしてモリーは周囲に浮かぶ赤い針をジャンヌへと照準を合わせる。しかし、ジャンヌはこの歳で既に歴戦の少女。そんなことで動揺を見せる事はない。針が発射される直前後方へと跳躍。素早く退避した。そのジャンヌの肩を踏み台に跳躍したナポレオン。

「肩借りるぜ!」

「借りた後に言っても遅いです!」

 そんな掛け合いも一瞬。

「くらいやがれ!」

 ナポレオンは身の丈を超える大剣を振りかぶり――

「大きさは力! 重さは力! 速さは力! 強大なる破壊(パワークラッシュ)! はぁあああああ!!」

 赤い壁諸共モリー目掛けて振り下ろす。

「俺を忘れてもらっては困るぞ」

 しかし、ナポレオンの一振りはベノムにより容易く防がれる。

 ナポレオンの一撃を防いだのは紫色をした人型の何かだった。表面は軽く波立っているが、刃物を防ぐだけの硬質さは持っている、そんな謎の存在だった。

「なんだこりゃ!?」

「一旦引けナポレオン! 一気に畳み掛ける!」

 レイの言葉にナポレオンは一旦引く。そしてモリーとベノムを中心に、セラフと共に迂回してセラフとナポレオン、レイとジャンヌでモリーとベノムを挟み込む形に素早くなる。

「この剣は万物を燃やし尽くし、この剣は万物を凍てつかせる。燃えろ、凍れ。我が二本の剣(デュアルソード)よ!」

 レイの両の手にある剣は、ゴォオオオッ! パキキィィィンッ! と音を鳴らしながら燃え凍る。

「母なる大地よ。私に力をお貸しください」

 セラフが願いを唱えると大地が震える。

「力よ、私の剣に宿り顕現し給え!」

 セラフの掲げる剣の先に光の奔流が廻り、剣の切っ先に収束して小さな球となる。

「おぉおぉ、神エイロスも随分な力を分け与えたようだな」

「そうねぇ。でも、その程度で私達を倒せると思っているのもおこがましいわぁ。私のこの死血魔法が全てを飲み込みむわぁ」

 両手を頭上に掲げるモリー。すると、地にぶつかっていた赤い針とモリー達を守る赤い壁が液状化し、モリーの掌の上に集まるとその量を増やす。そして――

「広がりなさぁい」

 モリーの一声に呼応するように、その赤い液体は地に広がりジャンヌたちに迫る。

「くっ! 触れるな!」

 レイの警告に他三人は後方へと跳躍する。一跳躍、二跳躍すると、そこで地を這う赤い液体は勢いを止める。モリーを中心にその距離実に半径15メートル。

「相変わらずモリーの技はエゲツないな。宙に浮かび続けられるようなやつでないと近寄れないではないか」

 休む暇もなく攻撃を畳み掛ける予定であったレイたちは、逆にモリーたちに主導権を握られる。

「次は俺の力を見よ」

 ベノムが左右に手を広げると飛び散る毒々しい小さな球体。半径10メートルの半球状に広がり、空間を制圧する。地を制するモリー。空間を制するベノム。両者はこの力で守りを固めつつ、攻撃を繰り出す。

「なんという場の制圧力。これが闇の神――タルロスの力だというのですか」

「これで終わりだなどど思うなよ」

「なんですって!?」

「さぁ、死の宴の始まりだ! 死毒の鳥籠(デスケージ)!」

 頭上に掲げた掌から解き放たれる毒々しい液体。それは10メートルなど生半可な距離ではなく、上空50メートルまで打ち上がる。そしてそれはベノムとモリー、ジャンヌ達四人を含める六人を閉じ込める、まるで鳥籠のように広がっていく。

「これで逃げ場はない」

 完全に逃げ道を失ったジャンヌ達。

「くっ、これは手強い」

「焦るなジャンヌ。これだけの規模だ。奴らもかなりの力を使っているはず。長期戦に持ち込めばなんとかなるかもしれない」

 焦るジャンヌを落ち着かせるレイ。

「ったくいきなり大将と当たるとかツイてねぇな」

「遊びとか言って楽しそうにしてたのは一体どこの誰ですか……」

「あ、あぁ~……。ったくどこのどいつだよ。そんなこと言ったの」

「…………」

 ナポレオンとセラフのコントは放っておき、ジャンヌ達四人は危機的状況に追い込まれる。そしてその状況は更に悪い方へと傾く。

「ふはははぁ! 残念だが、貴様達に付き合っている暇などないのだ! ふんっ!」

 ベノムが手を握る様に力を込めると……

「な、なんだこの音は」

 シューッ、と何かが溶けるような音がレイたちの耳に届く。

「アハハハ! いいわぁ、その恐怖に歪む顔! あなた達はベノムさんの作る鳥籠の中で戦えばいいと単に思っていたかもしれませんが、そんな単純なものじゃありませんわぁ。この鳥籠は少しずつ小さくなっていくのよぉ! つまり……あとは分かるわねぇ?」

「くっ、この卑怯者!」

「勝負に卑怯などない」

 ジャンヌの怒りも軽く流すベノム。

「おいおい、どうすんだよ! このままじゃ俺たちゃあっという間にお陀仏だぜ!?」

「焦るな。必ず道はある。だが時は一刻を争う。慎重に一気に攻める」

「なかなか難しいことを注文しますね。ですが、文句も言っていられない状況です。戦況を打開しましょう!」

「神エイロスよ。我らを護り給え」

 ジャンヌは神エイロスに祈り、これからの死闘に集中する。

「最後の晩餐をくれてやることなく、終わらせてやる」

「絶望の渦に溺れ、死に絶えなさぁい!」

 ジャンヌ達四人に、ベノムとモリーの必殺の技が迫る。

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