表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/12

11話

 ここは数ある神界領域の内の一つ。

「あはははは! 燃えちゃえぃッ!」

「……」

「ふぅ、美咲ちゃんはまた静観? グリンちゃんみたいに楽しまないと。ほらっ、僕の手を取って」

 黒髪長髪の美咲と呼ばれた少女は、自分の歳の半分にも満たないような背格好の少年に差し伸べられた手を払う。そんな二人の先では、一人の赤髪のグリンという名の少女が高層ビルの立ち並ぶ現代の大都市を破壊に走っている。道行く人。道路を走る車。空飛ぶ飛行機。それらは瞬時に掻き消えていく。

 破壊される大都市。それを見て沈黙する少女。なぜならこの空間は――

 ――嫌だよ、こんなの。だってここは……ここは私の住んでいた世界なんだもの!

「次はあれだぁ!」

 爆音とともに墜落してくる飛行機。それを無視して赤髪の少女は人々が逃げ集まったレストラン目掛け、直径10メートルにも及ぶ火の玉を放り投げる。それは着弾とともに火柱を上げ、辺りに熱風と火の粉を撒き散らす。

「もう、やめてぇ――――ッ!」

「あはははは! もっと! もっとよぉッ!!」

「グリンちゃん! 僕も混ぜてぇ~!」

「いいよぉ~!」

 美咲――フルネームを黒川美咲――は両耳を塞ぎ、目の前の惨劇から逃れようとする。

 この空間は美咲の記憶に残る現代日本の大都市。

「お母さん……」

 爆音が鳴り響く。



 ◇◇◇



「あぁ~楽しかった!」

「壊しがいのある建物だったねぇ~」

 辺りの惨状は例えようがなかった。超大規模な大震災の痕。あちこちから煙が立ち上り、赤く燃える火からは異臭が漂う。瓦礫で埋もれ、歩道や道路は全く見えない。そして360度視界を遮るものは、無かった。

「ここも飽きたから次のエリアに行こうよ!」

「そうだね。僕もそれがいいと思う! 美咲ちゃんはどう?」

「……私は、もう……動きたくない……」

 頭を垂れ、膝を抱える美咲。その声は震え、鼻を啜る音も聞こえる。

 すると、その姿をからかうように、グリンが腹を抱え笑う。

「あはははは! 何泣いてんのよ! お、お腹痛い! ガキじゃないんだから。あはははは!」

「大丈夫だよ美咲ちゃん。少しずつ慣れてこ。一番は自分ですればすぐ慣れるんだけどね。気持ちいいよぉ~。人を潰すあの感触。そして焦げる匂い。あぁ堪らない」

 ――この二人、どうかしてる……!

 美咲は闇の神タルロスによってこの神界に召喚された。あまりに突然な現象の中、一緒に召喚されたこの二人の少年少女に手を差し伸べられ、行動をともにすることにした美咲。

 タルロスからの使命など上の空で聞いていたためよく理解していない。

 初めは二人に対し可愛い弟妹ができたような気分でお姉さんぶっていたが、すぐにも二人の異常性に気付く。目の前に現れるものを片っ端から破壊していくその行動に。

 それからは意気消沈。一人で行動するのも勇気が出ず、そもそもこの二人から逃げられやしないだろう。

 それでも、美咲は機会を狙っていた。美咲自身にも他の者達と違わずタルロスより力を譲り受けている。その力を使ってなんとかして逃げられないかと。

「そうそう、美咲ちゃん。僕らから逃げようなんて思わないほうが身のためだよ」

「な、なんで?」

「なんでって、分かるでしょ? ほら、君は僕らのおもちゃでもあるんだよ? 持ち主の意に反する行動を取ろうとするおもちゃの末路は……分かるよね?」

「――っ」

 美咲はゾッとした。平気な顔で恐ろしいことを告げ、ニコニコと笑顔を保つ目の前の少年に。

「あ、そうだ! 人殺しが苦手な美咲ちゃんのために、役に立つ呪いをかけてあげる!」

「えっ、やめっ!」

「えい!」

「…………」

 そして、ここに一人の呪いのおもちゃが出来上がる。

「ふふふ、楽しみだねぇ。美咲ちゃん」

「カース君の呪いは強力だからねぇ~」

 口元を手で隠しながら微笑むグリン。一行は美咲の記憶領域であるこの場所から消えていった。

 静かな空間は失われることなく、その姿を残している。一つ、ガラリと建物の残骸が崩れる音がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ