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10話

 アーサー一行は、再び賑わいみせる街に戻っていた。

「ところでさ、アーサー」

「ん、なんだ?」

「初めて会った時から気になってたんだけど、あんた花や動物と話せるの?」

「……気になる」

 アーサーの頭の上には青い小鳥が。怪我を治してやった鳥だ。化け物を倒し街に戻ると、どこからか飛んできて頭に居ついたのだ。

「話せる、とは少し違う。聞こえる、といった感じであろう。私が話しかけても、花や動物、草木などは私の言っていることを理解出来はしない。おそらくだが。だから聞こえる、といった表現が正しいかもしれない」

「そう」

「……あ……クレープ」

 ハミーはアーサーの話に興味があるようでないようで、歩いている通りの端に並ぶ露天で見つけたクレープ屋に進行方向を変えた。

「花より団子って感じね。食い意地張りすぎよ」

 ハミーを一人にするわけにもいかず、エリンとアーサーもクレープ屋に寄り三人して好きなクレープを買う。勿論金の支払いは、何故か金を持っているアーサーが三人分。

「美味しい~」

「……美味」

「たしかに美味いな」

 街はいつもどおりの賑やかさだ。街の近くに化物が出現した事実など、まるでなかったような変わらぬ光景。人々は争いごともなく平和な日を過ごしている。この風景こそが、アーサーが統治していた国の姿、アーサーが守ってきた国の姿なのだ。

「…………」

「どうしたの? アーサー」

「……悩み、ごと?」

 首を傾げる二人。アーサーは空を見上げ、何か思い詰めたような顔をしている。

「いや。……なんでもない」

 心配してくれる二人に、アーサーは何も告げることはなかった。己の事は己で整理するのが一番だと、アーサーは思っているから。

「……無理……しないで、ね……」

「本当に辛かったら私達、相談にのるわよ」

 深く追求することはしない。それが相手を傷つけることになるのは百も承知だから。

 勿論時と場合によるが、アーサーから話してくれるのを待つのがこの場合は正解だろう。そう思ったエリンとハミーは静かにその時を待つことにした。

 化物を倒したアーサーを、二人はいつもどおりの対応で迎えた。二人は理解したのだ。あまりに強大な力は人を救うが、時に人を恐怖に陥れる。アーサーの言葉はそれを恐れてのことだったのだ。

 おそらくアーサーは絶大な力を持ちすぎたが故に、元の世界では崇められ、尊敬されると同時に、恐れられ、孤独だったに違いない。英雄というのは表側の光という名の栄光を見るだけでは駄目だ。裏側の闇という名の苦痛を知ってあげなければ、英雄は様々な意味で消え去ることだろう。

「……ふぅ、やれやれ。人気者も度が過ぎると疲れるものだ」

「またなのね……」

「……全てを救うのは……難しい」

「あぁ、難しい。だが、差し伸べられる手は差し伸べる。助けを求める存在がそこにいるのだから! 待っていろ! 今行くぞ! ウォオオオオッ!」

「ちょっ!? 速すぎ! 待ちなさいってば!」

「……いつでも、全力。……それが……アーサー」

 日はもう数刻で暮れる。まるで疲れを知らないアーサーは、他人のために全力疾走。三人は宿など気にせず、何処かへと走り去っていく。

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