0話 機械仕掛けの女神様たち(嘘
注意 女主人公。主人公は白衣着ていて、研究大好き、ややズボラな性格、を想像して下さい。
百合要素微あり。初めからクライマックス。
主人公強。人外要素。etc
などが含まれます。それでもよろしい方はどうぞ。
2030年、4月。核戦争が起こる。それに伴い大国の科学技術は停滞、退化した。が、一部の戦災に合わなかった国は国力を増強した。
2050年、人を超越した人造人間「デウス・エクス・マキナ」の登場により、それを造り上げたある宗教の権威が増加。
2060年、西欧諸国、それらも「造られた神」とまで呼ばれた人造人間による大陸統一運動により宗教傘下に入り、世界は統一された。そして唯一の国として「マキナ」と呼ばれる国となった。
2070年、人はありとあらゆる技術を人造人間たちに仕込み終わり、人は何もせずとも全てが手に入った。食料も家も全ては人造人間たちから無償の供給がなされ、教会上層部では寿命さえも手に入った。
そしてそれから、およそ500年後、地球に小惑星が直撃。全人口の半分は死亡。また、舞い上げられた粉塵により「デウス・エクス・マキナ」の脳である人工衛星との通信が取れなくなり、彼らは木偶人形となり活動を停止した。
更に、このマキナでの反乱を防ぐためにありとあらゆる動植物を「栽培園」「家畜園」と呼ばれた場所で管理されていたのだが、そこはロックされたまま、開ける権限をもつ人造人間たちは機能を停止したが為に開かず、三年後、地球上における全人類が死亡した。
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「ここは?」
赤い部屋。何もかもが豪華で、しかし赤色と金銀色が合っている。
目の前には赤色のドレスを着た魅惑的な美女がソファに座って此方を見ていたので、期待をして尋ねた。
「ここは、まぁ、そうねぇ。審判の間とでも言おうかしら?」
「審判とな?」
ガタガタと手が震え、呼吸が荒くなる。動悸が激しくなっていくのが痛いほど分かっていた。
「まるで神のようじゃぁないか?」
そんな葛藤を知らずか、彼女は眉を寄せながら言った。
「違うわよ、私は悪魔。デビル、デイモン、そう呼ばれるものよ。」
良かった、と息を吐く。
「話を進めてもいいかしら?」
「すまなかったな、どうぞ、進めてくれ。」
「では、3つの事を話させてもらうわ。第1に、貴方は死にました。」
「そうだろうな、大多数の人間は空が落ちてきたと言っていただろうが、私はアレが逃れられない悲劇を生み出すのが分かっていたからわざわざアレに踏みつぶされるようにしたのだ。それで?」
「存外驚かないのね。あの星同士の激突で人口の半分が消し飛んで、貴方の最高傑作は活動を停止、3年と少しで地球上の、5年であの世界全ての生物が消えたわ。」
最高傑作、か。
「だろうな。それが分かっていたからこそ、私も見切りをつけたのだ。」
「貴方が居れば100年経とうが人は死滅しなかったと思うけど?」
「自分が居なければ死滅するようなモノに何か自分に利益があるとは考えられない。それに自分が祭り上げられたところで今度は研究が出来なくなる。出来たところで大衝突の後は既に満足な研究が出来なくなるのは予測済みだ。アレらが機能停止したのが証拠だろう。」
「そう、ね。貴方は自分勝手な魂をしているものね。要らない話をしたわね。じゃあ次に、あなた達の元来の神、それらは嘗て、600年前までは異世界に轟くほどの神々だったんだけど、アレが生み出されてから大きく力を失った。神の根元たる信仰が偶像に捧げられたからね。そして人類滅亡に伴い神々は完全に消滅。それにより世界は崩壊して、余った魂は他の世界を司る神々に回収されたわ。」
「なるほど。」
「世界ってのも保有する魂の最大量が決まっていてね、その中でやり繰りしてるのよ。現世に落として、審判を開いて、浄化して、ってね。」
「それで異世界の神々は1大勢力がもつほどの魂の最大量が増えて万々歳って?」
魂が運用資金で世界が市場、株みたいだ。
「そうなのよ。数多にある異世界で取り分けて1つあたりの貰える数は少なくなる。だけどもね、それでも貴方の世界の魂量は垂涎ものだったのよ。」
「それで?」
「3つ目に繋がるんだけど、貴方にはお礼したかったのよ。貴方が居なかったら人はまだ繁栄していたでしょう、辛く厳しい荒廃した大地でも。貴方の魂はある世界に振り分けられたわ。剣と『魔法』の世界に。此処の神々は貴方に受けた恩を蔑ろにして、貴方の魂を浄化しようとしていたわ。だから掻っ攫ってきたのよ。」
「自分と神との邂逅を邪魔したと?」
「そうは言ってもね、神々は信仰を植え付けるために浄化した魂の前にだけ姿をあらわすの。浄化された純粋な魂はその神威の前に平伏す。それが貴方達が姿なんてない神を無意識に信奉しているわけなんだけれども……貴方は一切合切を忘れて神との邂逅を果たして嬉しかった?それなら今すぐにでも送り返すわよ?」
「そう、だな。自分が自分を感じ取れなければ其処に自分は居ないのだった。失念していた。すまない。」
「いいわよ、それで?魔法ってのに興味わかない?」
「魔法?さっきも言ってたがマジックじゃないのか?」
「違うわ、純粋な魔法よ。チャチなトリックとはわけが違う。マナを用い無から有を創り出す。」
「それは……」
そんなものがあるのなら、私の研究は飛躍するだろう。
たとえ研究室をゼロから造らなければならなかったとしても、そんなものは比較できないほどに素晴らしい。
新たな原子1つが研究をより高めた。
それが新たな法則となると価値はいったい?
それを見透かしたように悪魔が微笑んだ。
「良いでしょう?」
「あぁ!素晴らしい!」
「喜んでもらえて何よりだわ。それでね、貴方へのお礼なんだけど、私の力じゃ限度があるのよ。」
言い訳のように、これでも力が強い方ではあるんだけどね、と追加された。
「あぁ、あまり多くは望まないでおく。」
「記憶を保持したままってのは浄化さえしなければ良いから力を使うこともないのだけれどね、そこで貴方にはwinwinの提案があるのよ。」
「内容を。」
「貴方には私の力のほぼ全てをあげる。貴方は私に供物を、魂か信仰を捧げる。それに応じて貴方には追加で力をあげる。簡単でしょ?」
「博打だな。」
「そう?かなり勝算は高いわよ。」
「そうか。魂と信仰といったが、それは?」
「魂は、そうねぇ。毎月に1つでいいわ。信仰は、まぁ100人程が誠心誠意毎日1時間くらい私に感謝と願い事を祈ってくれればいいわ。気が向いたら願い事を叶えてあげる。で、そのどちらかを捧げてくれればいい。どちらにしても貴方の寿命は長いもの。チャンスは沢山ある、信仰は得られる力は微々たるものだけど、根づけば貴方の死後も続くし、その信者が魂を捧げてくれるかもしれないしね。」
「どちらともなかった場合は?」
「赤子からだもの。しばらくは流石に無理よね。じゃあ産まれて10年までは無利子で、それが返し終わるまでは2倍の供物を捧げてね。で、貢物が滞ったら貴方の魂を戴くわ。」
「悪魔にしては優しいな。」
鬼、悪魔と罵倒として呼ばれるのだ。鬼畜外道畜生な条件ですら呑んでやろうと覚悟していたのだが。
「優しくなかったら、貴方が怖いもの。」
「あら?分かってた?」
鉄面皮と言われた顔から笑みが漏れてしまう。研究癖を押しのけて、個人的趣向のサディスティックな面が出てきてしまった。
悪癖だ。しかしこれが有るから長い間心が壊れなかったと言ってもいいほどの娯楽でもある。
「私だってね、頭を切り開かれてホルマリン漬けにされても正気でいられる気はしないわ。」
「転生?をしたらお前と会う方法を知らないだろう?」
「それでも探して見つけそうだから嫌なのよ。貴方を行動が予測できるなら、世界が丸ごと1つ無くならなかったんだからね。」
「成る程、賢い考え方だ。」
悪魔はこの話は終わりとばかりに手を叩いた。自分も歪んだ顔を戻す。
「それでね、話を切り替えるんだけど、魂の捧げ方は供物の血で供物を中心に円を描いて、貴方が祈ってくれればいいわ。ただし獲物は知的生命体のみ。精神値が低いと魂の質も悪いからね。」
「それだけ?」
「祈り方は『アケディアに捧ぐ供物』って言いながら私の顔を思い浮かべればいいわ。」
「アケディア、それがお前の名前か。承知した。」
「そんな名前は長く呼ばれてないけどね。次に貴方には、そうねぇ。魔法適性なんていらないでしょ?私があげやすい闇だけで。魔力と、家柄ってとこかしらね。」
「魔法適性?魔力と家柄?」
「私の力を変質させて、貴方に渡すのよ。魔法適性なんて貴方なら他人から奪ってしまいそうだし、魔力は少なければ何もできないし、家柄だって普通は選べないもの。」
「魔法適性を奪う?適性というんだから先天的なものじゃないのか?」
「そうなんだけど、昔、それをやった錬金術士がいるらしいわ。まぁどうしても無理だったら追加で授けてあげる。」
「じゃあ、魔力量は類を見ないほど。魔法適性は闇、家柄はそこそこ良いところって出来るか?」
「ん〜、おまけに錬金術の指南書も付けてあげる。貴方以外に読めない奴をね。」
「ありがたい。」
「感謝は契約を遵守してくれれば良いわ。誇り高き悪魔はそういうものなの。過ぎたる欲は身を滅ぼすってね。それじゃあ、貴方を転生させてあげる。」
自分の足元に幾何学模様が広がった。
「アケディア、最後に訂正しておこう。」
足元の光は強くなり、今にも爆発しそうだ。
「デウス・エクス・マキナは確かに自分の最高傑作だが、お前が思っているのは唯のマキナだ。世間一般もアレがそうだと認識していたが、まぁ本当に分かっていたのは自分と教祖くらいだったな。」
え?という顔をアケディアは浮かべた。
「デウス・エクス・マキナとは私自身のことだ。機械仕掛けの装置から産まれた改造人間。不完全なモノ。地球上において考えうるありとあらゆる武装勢力に対抗でき、人工衛星に詰め込んだマキナ達の知識と同等のモノが頭の中に入っている。言ってしまえばマキナ達は『デウス・エクス・マキナ』を補助する外部パーツに過ぎない。何より素晴らしいのは、一度作ってしまえば思いの外、簡単なのだ。まぁ自分しか如何してか改造できないのだが、細胞1つ、活性化すればたちまち此れは再構成され、元に戻る。」
アケディア、そう怖れるなよ、と諭す。
「それがマキナ達を作った自分の正体だ。自称地球一の科学者だよ。といっても細胞1つさえ無ければはそれにはなれないし、確かに予備パーツを付けてから活性化させれば欠損部位は接合され、一応は回復する。が、その程度。不老にはなったが不死ではない。それが不完全たる所以だよ。」
アケディアが慌てている姿を笑いながら見ていると、光に包まれ意識は消えた。
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「なんとも、まぁ。」
アケディアは先程送り出した客人に冷や汗を流した。彼女だってマキナの性能は知っていた。知った上で、尚、それを作り出せるものでも許容した。それが、どうだ?マキナよりも完全上位互換だ。そこまで知っていたら違う方法を取っていた。あれは危険すぎる。
尋常な転生ならば問題はなかった。しかし私がしたのは記憶を保持したままの転生。浄化された魂は自分にあった受け皿を作る故に両親の魂の影響を受け両親に似た受け皿を作る、それが肉体。それすなわち「デウス・エクス・マキナ」と呼ばれる程の存在であった魂は、それに相応しかった肉体を構成する。
「つまり、全く同じ細胞が作られる。」
まぁ仕方ないわよね、と溜息をつく。
「気持ちを切り替えましょう。アレが私に貢いでくれるのだから、その分私にも恩恵があるわ。」
終わりが来るなら、それはそれで受け止めよう。きちんとサポートをして、嫌われずにいて。
最悪でも、世界は崩壊しないだろう。今度は少なくともアレが神に成る迄は。
携帯で投稿しているのですが、空白が何故か空けられません、どなたかお教えくださいm(_ _)m