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偽聖女改めまして、魔物です。

作者: moira

手枷をつけられ歩かされる。

私は罪人なのだと、胸が締め付けられる気持ちだ。

何故、こんな風になってしまったんだろう。

やはり私は聖女などでは無かった。


正しくない、偽物の聖女ではいつしか国が脅かされてしまう。

異世界から来たという女性は、不思議な力を持っていた。皆奇跡だと褒め称えた。

対する私は、奇跡なんておこせない。

ただ毎日神に祈るだけ。

それしかしていない。

それだけしか出来ない。


では何故そんな私が聖女と呼ばれるようになってしまったんだろう。

それは、私の生まれにある。元々神官を輩出していた家柄なのだから、そうなる流れだった。

けど、その血も今は正しいかわからない。


本物の聖女様が現れた。

彼女は私を偽物とはおっしゃらない。こんな私にもお優しい人だった。

けれど、周囲が。


悪しき力で皆を、騙し、聖女になり替わったと、そう言っていた。前の聖女様は私が食べてしまったのではとも言われている。

私には自分が魔物だなんて自覚は無い。

だけどそれが本当でないとも言えなかった。

親さえも、私の事を魔物なのだと声だかに訴えるのだから。

一人娘をどこにやったのとお母様に叫ばれた時を思い出して胸が痛む。



「ここが国境だ。あとはどこへでも行くがいい。くれぐれもこちらに戻ってくるような事はするなよ。国王様のご厚意でお前は生かされているんだからな。化け物め」

「はい、わかっております」


国王様は私が魔物ではないと思っている言ってくれた。

だから生かされている。それだけで、救われる気がした。

けれど国境を越えても手枷は外されない。

無力な私だ。

このまま放っておけば勝手に死ぬと、思っているのだ。


私の処刑を強く望んだのが、家族であった事はとてもつらいけれど、国王様の恩情に感謝しなくては。


私達を連れて歩いていた兵士たちが引き返していく。

ああ、これで2人きりだ。


「今日は野宿になりそうだね」

「本当にいいのですか、わたくしに付いてきて。今からでも遅くはないから帰った方がよいのでは?」


話しかけて来たのは、美しい金髪の少年リーファ。

昔、私が買った奴隷だ。

買った時はこんなに見目麗しい姿をしているとは思わなかった。

薄汚れていてみすぼらしい姿をしていたのに、連れて帰って風呂に入れてみれば今のようにあっと驚くような光り輝く容姿をしていた。


聖女と言われていた私よりもずっと、神に近しい容姿をしていると思う。

自分も金髪ではあるが、リーファの隣に立てば霞んでしまうほど、素晴らしく輝かしい。

本物の聖女様は黒髪だったから比べようもない。


「ううん、僕は国を出るの嫌じゃないし」


軽く首を横に振るリーファ。

一応私が主人という立場であったけれど敬語ではないのは、同じ人間なのだから気を使う事はないと私が言ったから。

それを言った時、彼は笑っていた。

そして今も笑ってくれる。

彼の優しい笑顔だけが、今の私を慰める。

一緒に来てくれた。

私は1人じゃない。帰ったらどうと言ったものの、本当は帰って欲しくなかった。

1人にしないで、口には出せないけれど、そう思っている。



「それに僕、セシリアの国の生まれじゃないから」


そうだ。

リーファは他国の出身だと言っていた。私の国のには奴隷として売られてきたと聞いていたはずじゃない

私よりもずっと、辛い思いをして生きて来たリーファは私よりもずっと強い。

見習って私も強く生きなくては。

いくら偽りの聖女であろうと、ここで野垂れ死ぬつもりはない。

今までは人に頼って生き過ぎていた。何をするにも、周囲の手伝いが必要だった。

本物の聖女ならば、1人で何事もこなし困難に立ち向かっていくはずだったのに。

だから強くならなくちゃ。

一緒に来てくれたリーファのためにも。


「リーファはどこの国の出身なの?帰りたいとは思わない?」

「僕は帝国の生まれだよ」

「帝国?まさか」


この世界に帝国と名乗る国は一つしかない。

魔法大帝国、魑魅魍魎が跋扈する魔王が治まる国。

私達の国はいつも怯えているのだ、何時襲われるのではないかと。

だから聖女と呼ばれる特別な乙女は毎日神に祈り、国民と今日の平和を分かち合う。


他の国だってそう。

魔物に襲われる事を恐れ、毎年生贄を出したり、国の防衛を高めたり、必死に民を守りながら過ごしている。

帝国にしか魔物はいないけれど、時折人間の国にもやってくる。1体来ただけでも空恐ろしい事なのに。


帝国にも人間はいると聞く。

だけどその環境は劣悪、筆舌しがたいものらしい。

リーファはそんな国に生まれたというの?


「泣くなんて、変なセシリア」


何てことの無いように、リーファは言う。

だけれど、これが泣かないでいられるだろうか。いいえ、泣いてはいけないのだわ。

私にはそんな資格など無い。

辛い思いをして生きて来たリーファが笑っているのだから、私はそれを見習わなければ。

強く気持ちを引き締めて、涙を止める。


リーファが近くにあった倒木に腰掛ける。

そんな所に座ったら服が汚れてしまうと思ったけれど、気にならないようだ。

これからはこんな事にも耐えないといけないのだ。

私も、隣に腰掛けた。



「国境を越えてしまったね」

「ええ」

「聖女様が居なくなって、あの国も大変だろうね」

「何を言っているの?聖女様ならいらっしゃるでしょう」


突然リーファが笑いだす。


「ふふふ、何を言っているの?聖女は君だろ」

「わたくしは、偽物よ。魔物かも、しれない……貴方は怖くない?」

「怖くないと言えばウソになるかな」

「そう、そうよね」


何を期待していたんだろう。

心の中でリーファは私を恐れる事なく、慕っているから付いてきてくれたのだと期待していた。

だけど実際はやはり怖いと思われているのだ。


それでも、付いてきてくれた事に感謝しなくちゃ。

手枷のついた私はこの先生きにくい。


「手枷がついたままで生きていけるのは魔物くらいだろうね」

「え?」

「別に。これからの事を考えようよ。僕は2、3日食べなくても平気だけど、セシリアは違うだろ?」


奴隷として生きて来た過去があるからだろうか。

リーファは2、3日食べなくてもいいだなんて。そんな事実を知り驚いてしまう。

自分は目の前の彼の事を何も知らずに生きて来たという事が恥ずかしい。


「それとも、セシリアも食べなくても平気?」


私が答えないからだろう。リーファがさらに続けた。

食べない、というのはどういう感じなんだろう。

毎日決まった時間に3食食べて来た私にはよくわからない。

空腹、というのを感じたことが無い事に気付いた。


「わかんないんだ。そうだよね、セシリアはお腹がすくなんて感じた事ないんだもんね」


馬鹿にしたような感じではない。

それよりもむしろ優し気、そんな声色だったけれど、私はなんだか貶されたような気分になる。

今の言葉よりももっと激しい罵倒を、両親や王子から浴びせられたというのに。

唯一の味方となってくれたリーファから受けた言葉は、それ以上に私を傷つける。


「きっと、食べなくても平気です」

「そう?じゃあ帝国に行こうよ」

「それは……」

「大丈夫だよ、僕の生まれた所だからね。ねえ、セシリア。僕と結婚しよう」

「え?」


何を言われたのか理解できなかった。

リーファはあまりに気安く、それを言った。


正直な所、リーファを異性として見た事はなかった。

けれど突然告げられたプロポーズに顔が熱くなるのを感じる。


「僕じゃ嫌かな?」

「そんな事は、ありませんけれど」


嬉しい、はずだ。

だけど突然の事に飲み込めない気持ちもある。

ここで頷いてもいいのだろうか。

リーファはそれは、いい少年だけれど私でいいの?


「セシリアがいい。僕と夫婦になって」


まるで私の心を見透かしたかのように、リーファがまっすぐ私を見つめながら言う。


「ずっと、君は主人だったから言えなかったけど、もう違うでしょう?だから、言ったんだ」

「リーファ……」


ずっと、という事はリーファは随分前から私の事を好いていてくれたという事だろうか。

全然気づかなかった。

日が落ちかけているせいだろうか、リーファの瞳に夕日が注ぐ。

まるでリーファの瞳が赤く輝いているように見えた。

私は吸い込まれるように、それに見入る。


「わ、わたくしでよければ」

「本当!わぁ、すっごく嬉しいよ!」


答えれば、すぐにリーファが抱き付いてきた。

そして唇を奪われる。

身体に電流のような物が走るのを感じた。

ビリビリと痛いくらいの衝動。

気が遠くなる。


霞む視界の中、そして私は知った、夕日でリーファの瞳が赤くなっていた訳ではないと。

日が完全に落ちなお爛々と赤く輝くリーファの瞳は、人ではない。


目はすぐ覚め、リーファに抱きかかえられていた。


「ふふ、がっついちゃった」

「……リーファ、貴方は……」


天使様なの?と問う前に、嫌な気配を感じて言葉を切る。


空が騒がしい。

あれは、鳥?

私の国側ではない空に、大量の群が飛んでくる。

どんどん近づいてきてその姿が、徐々に見えて来た。


暗い空を飛ぶそれは、魔物の群だった。


「ど、どうして……あんなに沢山なんて、見たことがない」

「国に向かっているね」


リーファはそれほど驚いていない。

ただ事実を告げるだけの声色だ。


国境を越え、国に入っていく魔物の姿にいてもたってもいられなくなって、私は走り出す。

追放された事なんて忘れて、そのまま先ほど追い出された国に踏み入れる。



いくつもの煙が立ち上っている事を不思議に思って、小高い丘にかけ上る。

長い距離など走った事も無いのに。必死に。


目の前の光景は本当なのか。

信じられずに、目を擦る。

頬を抓ってみても、自分で叩いてみても、全然変わらない。


鼻に突くような何かが焼ける匂い。

人々の阿鼻叫喚。

あんなに美しかった私の国は、もうそこには無かった。


一体どうしてこんな事に?

そう思わずには居られない。

私はこの国のために、この国の平和を願っていたのに。


「あああ、どうしてこんな事に?」


現実を受け止めきれずに涙があふれ出てくる。

私は立っている事も出来ず、その場に足を付いた。

頭の中ではどうして、どうして、と同じことが浮かぶだけで、まるで駄目。


そんな私にハンカチを差し出される。


「セシリア、これを使いなよ」


にっこりと微笑むリーファ。


「……ありがとう」


私の言葉に機嫌を良くしたのか、より一層笑顔になる。

その姿はまるで聖画に描かれた天使様のようだ。

慈悲深い笑み。

聖女、という役割を果たせなくなった私よりもずっと、彼は尊い存在のように思えた。

先ほども瞳が赤く輝いていたし、リーファはこんな私にも優しくしてくれる、本当に天使様なのかもしれない。


「よく燃えてるね。あの偽聖女も死んだかな?」

「そうだわ!助けに行かなくちゃ!」


リーファの言葉に、はっとする。

こんな所で膝をついて泣いている場合では無かった。

国王様や王妃様、聖女様も、それ以外にもたくさん、お救いしなくていけない人達がいる。

涙を拭って立ち上がり走り出す。


行かなくては、私の大切人達を守らないと。


「あんなに苛められたのに変わってるね」


その時のリーファの言葉は私には聞こえなかった。



………



見たこと無いほどの数の、魔物が蔓延っていた。

神殿に魔物が入り込むなんて信じられない。

数多くいる魔物に不思議と襲われる事なく、深部にたどり着くことが出来た。


血なまぐさい。

あちこちで見知った神官達の亡骸が転がっている。

魔物もいたる所にいる。

私は身を隠しながら、両親達を探した。


お父様やお母様は無事だろうか。


「ひぃいいい、聖女様!お助けください!」

「ば、馬鹿言わないで、アンタ達こそ私を守るべきでしょ?!」

「何をおっしゃいます!聖女なんだから魔物を追い払うくらい当然だろう!」


悲痛な叫び声と罵声が聞こえる。

聖女様とお父様達だ。

今にも、魔物に襲われそう。


「ねぇ、貴方。私は見逃してよ、ね。何なら貴方の女になってもいいのよ」

「はあ?魔物に色目を使うなど、それでも聖女か!」

「馬鹿言わないで、私は聖女なんてもんじゃないのよ!フッツーの旅芸者だったんだから、こんな目にあっていい迷惑してんのよ!」

「何だ、私達を騙したのか!?」

「知らないわよ、勝手にアンタ達が勘違いしたんでしょ。」

「御業は?」

「あんなもの簡単な手品よ、それで聖女とかアンタ達、馬鹿にも程があるわ」


吐き捨てるように言った聖女様。

信じられない。

聖女様が私達に見せた奇跡は、単なる手品だったというの?

お優しかった聖女様が言葉を崩して、あの慈悲に満ちたお顔がまるで悪鬼のようで……。


「愚かな人間どもめ、皇帝の命だ。全員死ね」


それでも、聞き捨てならない事を聞いて、我に返る。


「待って!」


急いでお父様達の前に飛び出す。

魔物から守るように。


「お、お前はセシリア!」

「そうだわ、聖女はコイツよ。さっさとコイツを殺せばいいじゃない!私は聖女なんてものなんかじゃないんだから。魔物はコイツの存在が気に食わないんでしょ!!」

「なんて事を!セシリア、お前こそ本物の聖女だ。お前が国境を超えてから魔物が大群で襲ってきたのだからそうに違いない。私を守っておくれ!!!」


「わ、わたくしはどうなっても構いません。どうか、どうか皆をお助けください……」


もうすでに亡くなってしまった人も沢山いるけど、それでもまだ生きている人達が救いたい。

それがかつて聖女と言われた私の使命だ!


「ほお、国を追い出されてもなお民を思うか。見上げた根性だな。だがお前はもう聖女ではない」

「それは分かっております。けれど、けれど、お願いいたします!」


たとえ偽物でも、私は聖女として生きて来た。

だから、許されるならば悔いのように終わりたい。


私の懇願を、目の前の黒い魔物は受け入れてくれない。

仕方ないのかもしれない。

私は神様に祈る事くらいしか出来ないのだから。


そうだ、神様!


何時ものように祈りを捧げる。

きっと答えてくださるはず。

だって神様は、この国を守護してくれているのだから。


(お願いです、どうか、どうか、皆をお救いください)


神様のお声が聞こえた事は今まで一度もない。

こちらから祈るばかりだった。

けれど、この時ばかりは聞こえた気がした。

神様のお声が。


(魔物のくせに)


「えっ?」


今、なんと?

神様は何ておっしゃったのだろう。

魔物。

やはり私は魔物だったのでしょうか。

聖女様の奇跡が本当ではなくとも、私が魔物であるという事は本当だった?

という事なのですか。


「死ね」


神様からのお言葉に困惑しているうちに、黒い魔物は聖女様に手をかけた。

続いて聖女様も。

悲しいはずなのに涙は出ない。

どうして。



でも次は、私。


それは受け入れよう。

だって、聖女様も両親も、多くの民を見殺しにしてしまったのだから。

私だけ助かるなんて無理な話。


ああ、でもリーファは?

こんな魔物かもしれない私を好いてくれて、プロポーズまでしてくれた彼だけは死なせたくない。


「お願いです。私の夫だけは助けてくださいませ」


地面に頭をつけて黒い魔物に懇願する。

リーファだけは守りたい。

お願い、殺さないで。

その気持ちを魔物に必死に伝える。


どこにいるんだろう、リーファ。

置いてきてしまった。

魔物だらけになってしまって、心細く震えているのかしら。

もしかしたら、もう既に。


「顔を上げろ。こんな姿を見られたら罰せられる」


黒い魔物が私の腕をつかみ、強引に立たせて来る。


「で、でも……」

「安心しろ、お前は殺さない」

「リーファは!」

「その名を口にするな」

「ッ」


リーファの名を出せば恫喝される。

甲冑のような物に身を包んだ、恐ろしい魔物は背も高く、酷い威圧を感じる。

怖い。

でも、リーファを守れるのは私だけ。

助けに行かなくては。


「セシリアが僕の名を呼んだって問題無いだろう?むしろ何度だって呼ばれたいな」

「リーファ!来ちゃだめ!!」


この凄惨な場に相応しくない、明るい声でリーファがこちらにやってくる。

殺されてしまう!

この黒い魔物に。

?黒い魔物が膝をついて頭を下げた。


「お前、セシリアに何したんだよ。ひどく怯えちゃって可哀想。よしよし、セシリア。夫である僕が迎えに来たよ」

「……?」


私の元に来ると抱きしめられて、頭をなでられる。

それは不思議ではないけれど、どういう事なの。


「陛下、私は任務を全うしたまでです」

「嘘付け。セシリアの事怖がらせて。もう一週間飯抜きだぞ」


まるで友人のように、いえ、黒い魔物はリーファに敬意を払っているようにも見える。


「言ったろう?僕は帝国出身だって。ついでにいえば、帝国で一番偉いんだ」

「え?」


リーファの言葉が理解できない。

どういう事なの?


「セシリアは聖女として本物さ。よくあの良心から生まれたよね、不思議。似なくてよかったよ。僕そうじゃなかったらセシリアの事好きになってなかったもん」

「人間風情が陛下の目に留まるなど本来はあり得ない事だ。その意味よく理解するんだぞ」

「もうセシリアは人間じゃないよ。だってさっき夫婦になったんだからね。そりゃあ人間のままでもいいけど、それだと寿命が短すぎて僕が悲しいから」

「どういう事、なの?」


もう人間じゃないって。


「さっきキスしただろ?あの時、セシリアは生まれ変わったんだよ、人間たちの言葉を借りれば魔物に。ちんけな神とか言う奴からもそう言われたでしょ」


「そ、そんな……」

嘘だと言って、リーファ!

でもそんな私の心情などわからないかのように、リーファは上機嫌らしく、破顔して笑っている。

何がそんなに楽しいというの。


「この国も帝国の一部にしよー、そんで領主はお前だ」

「ありがたき幸せ」

「何てったって、僕の妻の出身地だもんな。派手な城建てよう」

「わかりました」

「あ、セシリア。セシリアはどんな城がいい?」


無邪気に相談してくる、リーファ。

でもその内容は酷い物だ。


「国王様は、どうなさったの」

「初めに殺した」


黒い魔物が即答する。


「どうして」

「僕が君に恋したからだよ」


全部邪魔だったとリーファは言う。

悪い事をしたつもりなんて、まるで無いように。

あの、奴隷として買った時からリーファはそのつもりだったの?

私のどこが良かったの。

色々思うところはあったけれど、声にはならなかった。


「あ、泣くほど嬉しいんだ!素敵な城にしようね。僕の城もうんと豪華できっとセシリアも気にいるよ!」


そうはしゃぎながらハンカチを渡してくるリーファ。

さっきまでは天使様ではないかと思っていたのに。

それなのに、本当は全然違ったのね。






結果として私はリーファの妻になった。

本当に魔物になってしまった私はもうどこにも行けない事はわかっていたから。

リーファは私を好いていてくれる。

決して裏切らないと言ってくれる。

それだけで、幸せだった。




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