過ち
(なんで見えてるんだ?姿は消してるはずだが!?)
「あのー、どちら様ですか?」
(こんなこと初めてだぞ!!基本、人に姿を見せないのに…。)
「お母さんの知り合いの人ですか?」
「………。」
「きゃぁぁぁぁ!!不審者ぁぁぁ!!」
「!?」
No.2は紅音の下に駆け寄り手で口を塞いだ。
「ムグッ!!」
「静かにしろ!!殺されたいのか!?俺は不審者じゃない!!」
とっさに否定するが殺すという単語が出てきて紅音は冷や汗をかく。そんなことにはまったく気づかないNo.2はどうするべきかと頭を巡らせる。
「俺は…俺はその…貴様の父親の知り合いだ!!仕事が落ち着いたらぜひ来てくれとこの前電話がきたんだ。」
なんとか冷静に答える。紅音は少し不審そうに見つめたが、それを聞くとホッとした笑顔になり顔を緩ませた。
「そうだったんだ。お父さんの知り合いの割には若い人に見えるけど…。」
「あぁ、大学の後輩なんだ。」
(よかった、なんとか切り抜けたな。)
「それじゃそろそろ帰る。せっかくだから父親と話がしたいが…いないなら仕方がない。よろしく伝えてくれ。」
「………うん。また来てください。」
紅音は優しい笑みを浮かべた。しかし、No.2にはどこか悲しげな笑みにも思えた。
「あぁ、近いうちにくる。」
そう言ってNo.2は部屋を出た。ふぅっと小さなため息を吐くとまだ家の中だが鎌を出して足を乗っける。そして左手首の腕時計に向けて小さく呟いた。
「No.2、帰ります。」
するとNo.2を光の筒のような壁が囲いそのまま消えていった。
「No.2、帰りました。」
死神界のゲートに着き、受付嬢に一言だけ言うとそのままゲートをあとにした。
(それにしても、なんで俺が見えたんだ?)
ファイルに貼ってある紅音の写真を見つめながら考えるNo.2。
(あとで文献でも読んでみ……。)
「ウッウェーイ!!」
後ろから聞こえた声と同時にNo.2は一歩右にずれる。
「え?…ぐふっ!!」
声の主、アーテルが勢いのあまり床に叩きつけられる。
「おいお前!!なによけてんだ!!」
「なにかが飛んでくる気配がしたからな。飛んでくるものは普通よけるだろ。お前はナイフが飛んできたら受け止めるのか?」
「あーはいはい。いててて…。」
自分の腹をさするアーテル。そしてそのままもう片方の腕をNo.2の肩に乗せる。
「おい、邪魔だ。自分の仕事に戻れ。」
「とっくに終わったわ。今はお前のかわい子ちゃんのほうが気になんのっと!!」
アーテルはNo.2が持ってたファイルを横取りした。
「なっ、きさ…っ!!」
「本当に可愛いなぁ。今までで一番好きかも。どれどれ〜。」
No.2はため息をつく。
「へぇー、この子本当にかわいそうだね。」
「若いうちに死ぬなんてよくあるだろ。」
「いや、それもなんだけど。だってこの子母親しかいないしさ。」
「…………は?」
No.2は動きを止めた。
「貴様、今なんて言った!?」
「読んでねぇの?この子の父親は同じ病気で亡くなってるってよ。この子…紅音ちゃんがまだ3歳のころだって。父親の顔なんて覚えてないだろうね。」
「な…はぁ!?」
「病気もきっと遺伝だねぇ、怖い怖い。」
「おい見せろ!!」
「あ、おい!!まだ見てんだろ!!」
No.2は慌てて横から奪い取る。No.2にとってその事実は信じ難いことだった。なぜなら先程父親の後輩だと言って信用されたばかりなのだから。No.2は父親がいる前提で話をしてしまったのだ。
(なんでいないって言わなかったんだ?俺が知り合いじゃないって分かったはずだろ?)
「なぁなぁ、何があったん……。」
「どけ、出かける。」
No.2はアーテルを突き飛ばし反対方向に走り出した。
「お、おい!!どこ行くんだ!!」
アーテルの言葉を無視して全速力で駆け抜けた。そしてゲートに着くと受付もせずに鎌に乗った。受付嬢が何か言っているがそんなことも気にせず大声で言った。
「No.2、行きます!!」
そして再び少女の下へと向かう。