第二話 出会い
「ここか…。」
No.2がある小さな家にたどり着いた。その家は木に囲まれた森の中に建てられており、二階建てのかなりの大きさの家だった。
(豪邸…とまではいかないが、なかなか立派な家だな。)
そしてドアの前に立つ。
(それじゃ、さっそく入ってみるか。)
No.2は中に入ろうとするが、その手はドアノブではなく壁に向かってのばされた。
死神は人間界の物質を通り抜けることができる。この能力を使って簡単に中に入ることができるのだ。
さっそく中に入ると、整理整頓された部屋が広がっていた。
(病気だから寝室か…?)
二階に上がると、ドアに可愛く装飾されているドアプレートがかけられている部屋があった。そのプレートの真ん中には「あかね」と書かれていた。
(ここか…。)
そしてNo.2は部屋の中に足を踏み入れた。中に入るとNo.2は思わず歩みを止めた。先程と同じように広い部屋だが、そこには図書館のようにたくさんの本棚が置かれていた。
(すごい数だな…。読書家なのか?)
本棚の間の通りをキョロキョロしながら歩くと、一番奥にベッドが見えた。
(あれは…。)
ベッドには1人の少女が寝息をたてていた。
(こいつが八木紅音か。)
近くにいくと可愛らしい…いや、美しいと言ったほうが正しいだろうか。少し青白い顔色をしているが、綺麗に整った顔立ちに光るような紅い髪。思わずNo.2は見とれてしまっていた。
(はっ、俺は何を…。)
首を軽く横に振り、近くの本棚を見る。本は物語だけではなく、伝記や図鑑、神話、詩集、参考書などたくさんのジャンルが並んでいた。No.2は一冊の本を手にとりページを何枚かめくる。
(本人寝てるし、一旦帰るか。)
そう思い本を戻そうとした時。No.2は誤って本を落としてしまった。
「うーん…。」
(あっ…。)
落ちた音に反応したのか、紅音が目を覚ましゆっくりと体を起こした。
(起きたか…。まぁいい。何かの拍子で落ちたことにすれば問題ないだろう。)
死神の姿は人間には見ることができない。壁を通り抜けることもできるし、ここは二階だが鎌に乗れば落ちることもない。No.2は動じることもなくベッドの前を横切り、壁に手を当てようとした。その時にNo.2はチラリと紅音のほうを向いた。足が勝手に止まる。髪と同じ色をした紅い瞳がこちらを見つめており、その美しくも力強い目に吸い込まれるような感覚がNo.2の足を止めた。その瞬間にはNo.2は気がつくことが出来なかった。なぜ姿が見えないはずの自分と目が合っているのかを。
「綺麗だ………。」
少しの沈黙…。見つめ合う形となっている二人の間に声が響く。
「誰…?」
その声に正気に戻るNo.2。今のは自分の声ではない。透き通るような消えてしまいそうなか細い声。目の前の少女、紅音の声。そして、No.2はようやく気がついた。
「俺が…見える…のか?」