第一話 仕事
ここは死神界のとある建物のとあるフロア。
そこには黒いマントを身にまとった死神たちがいた。
「今日はいるかしら?」
「あぁ、あの方たち?来てるといいわよね〜!!」
すると扉がガチャリと開かれた。それと同時に響くのは叫びに近い声。
「来た!!トップ3よ!!」
「今日は三人揃ってるわ!!すっごーい!!」
「あらあら、すごい人気ねー。」
そうい言うのはトップ3のファムール。
「俺らが大好きなんだね〜。いや、俺らじゃなくて俺様がかな?」
トップ1のアーテルが得意気に答える。
「………。」
無言を貫くのはNo.2。彼だけが名前がない。
「相変わらず冷たいなぁー。俺様泣いちゃうぜ〜。」
アーテルは腕をNo.2の肩に乗せ、もう片方の手で周りの女性に手を振っている。振られた方は甲高い叫び声をあげていた。
「貴様のその不埒な態度が気に入らないのだ。邪魔だ、どけろ。」
「はいはい、さーせんね。たく、No.2もたまにはノってくれよ。てか、名前も考えろ!!」
死神の名前は普通はない。しかし、ほとんどの死神が自分で名前を考えて名乗っている。No.2は名前がなかった。そして、彼自身作ろうとも思っていないのだ。
「呼びにくいんだよNo.2って。お前も思うだろ、ファムール。」
「ちょっと!!今はその名前で呼ばないで!!」
ファムールは小さい声で言った。
「お前も、なんで女だってこと隠してんだ?」
「なんでもいいでしょ!!ほら、仕事仕事!!」
そう言うと、三人で受付の方に向かった。
ここは死神界の仕事を受け付ける場所。名前を言うと、その死神の狩る人間の情報が書かれたファイルをもらう。そのファイルに書かれている人間を期限までに魂を狩るのが死神の仕事である。やり方はたくさんあるが、願いを叶えてあげる優しい死神もいるが、仕事のためと無理矢理狩りとる場合もある。
「こちらがファイルになります。」
受付係がトップ3に会えた喜びで興奮気味になりながらファイルを渡した。
「わた…僕は50代の女性だ。事故死だって。」
ファムールが低めの声で言った。
No.2がファイルを開いた。
(……少女?まだ若いな…。)
「お、若いな。珍しいじゃねぇか。どれどれ…まだ18歳じゃん。可哀想に、病気かぁ。てか、超可愛いじゃん!!なんで俺様じゃなくてお前なんだよ!!ずるいぞー!!」
アーテルがNo.2の耳元で駄々をこねる。それをNo.2がうんざりした顔で睨む。そして、アーテルの、ファイルを奪うと素早くページを開いた。
「あ、もしかしたら俺様も可愛い子羊ちゃんかもしれない!!どうだ、No.2!!」
一人で舞い上がるアーテルに、No.2は開いたままアーテルの顔面にファイルを押し当てた。
「痛って!!」
「貴様にはお似合いの相手だ。あと、どんな人間だろうと俺の前ではただの仕事道具だ。」
そう言うと、No.2は一人でフロアを出ていった。残された二人がアーテルのファイルを見ると、そこには90代くらいの白髪のおじいさんの写真が貼られていた。
「な…!!ち、ちくしょーー!!」
No.2は微かにアーテルの叫びを聞きながら、もう一度ファイルを見た。写真に写ってる少女は燃えるような紅い髪と瞳をしていた。
(八木紅音、18歳。名前を付けた親も安易な考えだな〜。そのまんまじゃないか。そして、死因は病気…か…。)
そして、No.2は人間界に行くためのゲートへと向かった。
誰もが人間界には行けず、魂を狩る選ばれた死神だけが通ることができるのだ。
そして、死神は一人一つ鎌を持っている。実力が高いほどいつも持ち歩かずに、出したい時に手に現れるようになっている。その鎌を人間に振りかざすと魂を狩ることができる。また、本物の武器になったり移動に使用したりすることができる。
ゲートに着いたNo.2。そして、暗闇のトンネルの入り口の前に立ち
「No.2、行きます。」
と言うと、No.2の鎌が自身の右手に握られる。そして、鎌に乗るとトンネルの中に入っていった。
(病気だろうが若かろうが、俺はただ俺の仕事をするだけだ。)
そして、人間界へと足を踏みいれる。