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2人花火

作者: 藤姫空

「明日花火を見に行こう」


 それは、彼氏からの突然なお誘い。

 いつもは花火大会とか人の多い所を嫌がって

 私が誘っても行ってくれた例がないのに

 

「うん!」


 でも、嬉しかったから即答で決定。

 じゃあ明日の夕方、と別れ際


「あ、動きやすい格好にしろよ?」

「…? うん」


 不思議な付けたし。

 なんで動きやすい格好??

 人ごみだから、かな?

 まぁいっか!


 私の住む町は田舎町。

 近所に川と山とが並んでる。

 花火は川辺の土手でやる。

 明日はそこの花火大会だった。


 田舎町でも頑張って、出店とかたくさん出て

 いつもの1.5倍は賑やかになる。


 1.5倍であって、2倍じゃないあたりが

 田舎な証拠なんだけどね


 動きやすい服、か。

 半端丈のGパンに、キャミで良いかな?

 さすがに足元が動きやすければ良いだろう

 じゃぁサンダルじゃなくてシューズの方が良いかな?


 服に合わせて

 長い髪もカジュアルに。

 でも、やっぱり可愛く見えて欲しい乙女心。

 ガーリーに、でもカジュアルに。


 うきうきと準備をして

 待ちに待った花火大会当日


「ごめんね、待った?」

「いや? 時間通りだろ」


 時間の5分前には来る彼に

 時間の5分後に来る私

 それはいつもの事だから

 5分の遅刻は『時間通り』って事。

 

 笑って歩き出した彼の手に

 自分の手をそっと重ねてついて行く


 んだけど……


「ねぇ…どこ行くの?」

「花火見に」

「花火大会の会場こっちだよ?」

「知ってる」

「逆向かってるじゃん」

「こっちで合ってるんだよ」

「???」


 機嫌よさそうにニコニコして

 花火大会とは真逆の方向にスタスタ歩く。

 

 そんな彼を怪訝に思いながらも脳内妄想。


(もしかしたら、大会じゃなくて小さく友達と花火やるんだったりとか?)

(花火を今から買いに行く、とか?)

(……まさか、花火師の所に行くとかじゃないでしょうね?)


 向かう方向にお店なんかないと気がついて

 さすがに不安になって見上げれば

 ご機嫌な笑顔


 なんだよ、もー……


 笑顔に何もいえなくなって

 テクテクついて行けば



「なにそれ?!」

「どうしたー? 早く来いよ」

「来いって……ばっかじゃないの?!?!」



 彼が手を振るのは木の上で

 ここは花火大会の会場とは川を挟んで反対側の山の中で


「お前子供の頃木登り得意だったじゃないか」

「子供の頃と一緒にしないで!!」


 これだから幼馴染は!!


「花火じゃないじゃん!」

「花火だよ。いいから、登って来いって」


 少しだけ降りてきて

 にっこりと

 ご機嫌笑顔で手を差し伸べてくる


 それを


「帰る」


 って

 払いのけられないのが、私だ……


 シューズにして良かったと思いながら

 何年ぶりかの木登りをした

 力強く引き上げてくれる

 彼の腕に助けられながら


「お。間に合ったな」


 やっとの事で彼の最初にいた場所まで登ると

 そこにはちょうどいい具合に

 椅子とテーブルになるように二本

 しっかりとした枝が生えていて


 座るように言われて腰掛けたら



   ドンッ!



 ひときわ大きな音と

 見た事もない大きさで

 降り注ぐ

 花火


「わぁ……!」

「綺麗だろ?」

「うん!」


 どこに持っていたのか

 彼がペットボトルのお茶と

 少しのお菓子を差し出してくれて


「ここさ、実は打ち上げ所の裏っ側なんだ」

「あ、だからこんなに花火が近いんだ」

「そう言う事」


 秘密だぞ、と笑う

 私の大好きな彼の顔を

 打ちあがった花火が

 キラキラと照らしていた

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