神様が与えたいらない能力
始まるかどうかわからないプロローグ
俺、磯崎京介はどうやら他の人とはちょっと違うみたいなのだ。
外見も、声も、髪型も、着ている服も同じだがほかの人にできないことができてしまう。
それは妄想、想像、偶像に干渉する能力である。
そのせいで俺はいらない声が丸聞こえなので困っている。
「おい、京介! 何を寝ているか!」
俺は先生の怒声で飛び起きる。
「いいい、いや、寝てなんかないですよ!」
「嘘をつくな! いびきが聴こえたぞ!」
「げっ」
まさか、そこまで熟睡だったのか?
「その反応は寝ていたな!」
「そんなぁ!」
まさか嘘なのか! ウソだったのか!?
先生がそんなしょうもない嘘ついていいんですか!
俺は項垂れ頭をかかえる。
「後で、職員室に来るように」
「行かなかったら――」
「退学だ」
「是非行かせてもらいます!」
俺は敬礼までして席に座る。
うっわー! なにしちゃってんですか俺は!
行っても結局退学だよ!
学校のチャイムがなり今は放課後だ。
俺の目の前には職員室というプレートが付いている部屋の前にいた。
「避けられない未来なんてないんだよって誰か言ってくれよ」
俺は感念してドアを開けた。
そこにはたくさんの鎌を持った死神が……
「はいぃぃぃぃいいい!?」
驚いた。職員室ってそんな人たちの集ま――って違うよ! 少なくてもこんな人たちの溜まり場じゃないよ!
「あなた、見えてるの!?」
少女の声が俺に届く。
「え? えっと、な、何が?」
俺は口笛を吹きながら状況を判断……できないよ! なんだよこれ!
「こっち来て!」
俺は少女に手を引かれ職員室を出た。
少し走ると少女は立ち止まり俺の方に向き直る。
「あなた、ナンバーと所有能力を言いなさい」
俺は振り返った少女に見とれていて声が届かない。
柔らかそうな長い金髪、目は綺麗なブルー、ほどよく育った体に俺は見とれていたのだ。
「聞いてるの? おーい」
「へ? ああ、えっと、何?」
「だから、能力を――」
少女は言いきる前に驚いた顔をして俺の背中を背後に押し出し背後に回った。
俺は何がなんだかわからず少女の方を見る。
そこには大きな鎌で切られていた少女が目に入った。
「う、うわっ、だだ、大丈夫!?」
俺が駆け寄るが少女が息が荒く血の量も半端じゃない。
このままじゃ死んじゃうよ!
そこで俺は気づいた。少女を切ったのは誰だ?
死神じゃないか。
俺は目の前の黒いローブを着たものを見る。
鎌を振り上げ俺を狙っていた。
「あ、ああ」
俺は咄嗟に両手で頭を守る。鎌を手でガードしようなんて誰が思うだろうか。
俺は案外馬鹿なのかもしれない。
だが、一向に鎌は俺に飛んでこなかった。
俺は恐る恐る見るとそこには砕けた鎌を持った死神が立っていた。
砕けた?
なんで?
「あ、なた、何をしたの?」
下を見ると少女が俺を見上げていた。
「だ、ダメだよ。傷が……」
「傷なんてないじゃない。あなたがやったんでしょ?」
少女は立ち上がり俺を見る。
俺がやった?
何をだよ。
俺は何もしちゃいない。
「なんで存在しないものを砕く力を持ってるのよ」
存在しないものを砕く?
「あなた、何者よ」
「え? いや、京介だけど」
少女はふーんと鼻を鳴らして鎌を手にした。
「私は花美菜麻耶、よろしくね。それと……」
「まず、この状況をどうにかしましょうか」
麻耶は鎌を振り回し死神を一掃した。
それが俺と麻耶の出会いだった。