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Le commencement de l'amour  作者: 篠宮 英
1/5

♪×1 恋なんかしない

新しい主役は小西先生。

 恋なんてしない。

 したくなんかないって、ずっと、そう思っていた。





 2007年2月14日。


 街は恋人達で溢れ、甘い香りが漂っているのではないかと疑えるほど、甘い空気が充満し、賑わっている。 でも、そんなのは私には関係ない。


 世の中が、某有名製菓会社が仕掛けたイベントに入れ込んでいて、浮かれていたとしても、私は私。

 浮かれる必要もなければ、浮かれる暇もない。


 ケホケホと咳き込みながら、それでも元気に庭園を駆け回る園児達を、もう若くない身体に鞭打ち、全力で追い掛ける。


 髪が乱れようが、化粧が剥がれようが、そんな事には一々構ってはいられない。


「待ちなさーーーい!!」

 

 声を腹の底から出し、腕白坊主共を追いかけ回し、次々と捕獲していく。


 いくら大都会東京とはいえど、今はまだ肌寒い2月。

 風邪を引いてから、モンスターの様な保護者達から、謂れのない診察料やら治療費を請求されては困る。


「捕まえたわよッ!!この悪ガキども!!」


「うわぁーん、ごめんなさい。」


「謝るんなら、すみれ先生に直接謝りなさい。すみれ先生困ってたわよ」


 冷たい風で頬をリンゴのように真っ赤に染め、肩で呼吸を整えつつ、捕獲した園児達を半ば強引に引き摺り、保育所の保育ルームに連行する。


 事の発端は、女の子と男の子達の些細な喧嘩だ。


 玩具で遊ぶ順番を最初はジャンケンで決めていたのだが、どうやらこの子がそのジャンケンで負けた事で、それに納得がいかなく、女の子を転ばせてしまったらしい。


 その時私は(あ、自己紹介は未だだったよね?私は小西こにし 初花ういか、28歳の気楽な独身!!)、別の場所にいて、その場にはいなかったけど、女の子達の泣き声で、すぐにその場に駆けつけた。


 そしてそこで見たのは、泣き喚く女の子達を慰めつつ、男の子達に謝る様に、困り顔で促していたすみれ先生の姿。


 すみれ先生の本名は、平 吉乃(今は復縁して綾橋 吉乃だけど。)と言って、中々の優秀な保育士だが、如何せん。彼女は保育歴2年位のまだまだ新人だ。しかも、年末に出産を終えたばかりで、まだまだ彼女本来の本調子に戻ってはいない。


 それでも、彼女は彼女なりに毎日頑張っている。

 

 で。


「・・・ごめんなさい。」


「・・・、本当にそう思ってる?」


 静かな彼女の問い掛けに、ついさっきまで庭園を元気に逃げ回っていた腕白な悪ガキ坊主共が、潮を掛けられた青菜のようにみるみる項垂れた。


 彼女は怒ると怖い。

 怒らせたらここの保育所の中では二番目に怖いらしい。

 因みに一番は不服ながら私らしい。(本当に不愉快で堪らないけど。)


「ごめんなさい」


 謝罪の声に涙が混じり始めた時、すみれ先生は溜息を吐いて、悪ガキ共の頭を優しく撫でた。


 どうやら、彼らは本当に反省し、すみれ先生はそれを悟ったらしい。



 

 悪い事をしたら謝る。

 それは当然のことだけど、中々実行できるヒトはいない。

 そんな人達を少しでも減らせるように、私達は毎日必死で戦っている。


 だから、私には恋に現をぬかしている暇はない。



 でも、本当はもう既にあの人に心を奪われていたのかもしれない。

 初めて逢った、あの日から。





 でも、それに気付くのは、まだまだ先の事。

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