第一章〜実戦前の休息〜
この作品はフィクションです。
この学校の昼休みはなかなか独特なものとなっている。何が独特なのかというと、昼休みの時間の長さだ。
公立高校でありながら2時間以上もの昼休みがあるのは全国どこを探してもここだけだろう。
いや、私立の学校を含めてもきっと見つからないはずだ。
何故2時間もの長時間の休みがとれるのかはやはり全寮制だというのが一番の理由だろう。
朝8時までに登校した生徒たちはSHRなどを終えて8時30分時から一時間目が始まる。
授業50分、休み時間10分の四限を行い12時20分から14時30分までが昼休み。
そしてそこから三限授業を受け、17時30分にようやく学校は終わりとなる。
本来ならそんな遅くまで授業など出来るわけがないのだが、全寮制というシステムがそれを可能にしているのだ。
しかし2時間もある昼休み。
生徒はいつどこで昼食をとろうか悩むことになる。
昼食は学校にある食堂でとってもよし。はたまた寮に帰るもよし。とにかく自由なのだ。
学校内には一応コンビニらしきものもあるのだが、そこで昼食を買うようなバカはいないので論外としよう。
だがその選択肢の多さゆえに新入生だけでなく在校生ですら悩みに悩むのだった。
「うーん…困った」
そしてもちろん結城もその内の1人である。
「なあお前さん。昼飯はどうすんだ?」
「ん?もちろん食べるけど?」
4限目が終わったばかりの教室で、薫は教科書を片付けながら結城に返事した。
「んなこと分かってる。どこで食べるかを聞いてんだよ」
「あー…確かにそうだなぁ。どっかお勧めはないか?」
「ねぇよ。んな場所があったら今頃誘ってるっつーの」
「それもそうだな」
薫は苦笑しつつ小さく答えた。
しかしこの選択肢の多さはナンセンスだ。
もう少し限定した方が悩まなくて助かるというのに。
「ねぇ、とりあえず食堂に行ってみない?で、寮のご飯とどっちが美味しいか比べてみようよ」
「そうだな、北川の言う通りだ。味を見比べてみるのも悪くはない」
ということで3人は仲良く雑談しながら食堂へと向かった。
食堂はかなり広く豪華なものとなっており、全生徒が座っても席があまるんじゃないかと思うぐらいだった。
さすが国立。と言っていいのかは分からないがとにかく立派だった。
「いやぁ立派なこってぇ。こんだけ無駄に金を使ってるとは思わなかったな」
「そうだね。これも未来の魔法使いのためって言えばできちゃうんだからスゴいことだよね」
「まあ魔法使いが強大な戦力になることはいまや周知の事実だからな。反論もできないんだろう」
「反論したら売国奴ってか。やなご時世だねぇ」
結城は自分で言いながら「うんうん」と大きな相槌をうった。
さすがにその言い方は大袈裟じゃないかと思った薫だったが、それもあながち間違いではないので反論できないでいた。
この時代、魔法使いがいかに重要な存在であるか。それは今を生きる人間なら誰しもが分かりきっていた。
魔法の前では核兵器すらも借りてきた猫のように無力と化してしまうからだ。
「ま、その期待に応えられるように頑張んないとな」
「ああ。そのためには目標が必要だ。とりあえず俺の目標はあの先生をぶっ飛ばすことだ」
結城は「シュッ、シュッ」とその場に座りながらシャドーボクシングを始めた。
そんなに戦いがしたいのか、この戦闘中毒野郎が。
薫は呆れた表情で結城を眺めながら、静かに昼食をとるのだった。
ΞΞΞΞΞΞΞΞΞΞ
薫たちが3人仲良く昼食をとる4時間前、つまり1時間目の授業を受けているころ、1年A組では何やらよからぬ計画を立てようとしているやつらがいた。
「よし、決めたわ。私薫ちゃんに勝負を挑んでみるわ」
「ダメだよ。そんなこと私が許しません」
もちろん詩織と桐埜である。
「何で詩織の許可がいるのよ。必要なのは先生の許可よ」
「だ、だって薫ちゃんはそういうの嫌いだから絶対にやるって言わないもん」
「それは彼に聞いてみないと分からないわ。それに安心して。別に殺すとか言ってるわけじゃないのよ?」
電子黒板の前では先生がクラスの役員をポンポンと決めていた。どうやら生徒に意見を聞く気がないみたいで、生徒の顔を見ては「はい、あなたこれね」と言っていた。
「当たり前だよ。薫ちゃんにケガさせたら許さないんだからね」
「任せて。とは言ってもさすがに無傷とはいかないかもしれないけどね。それでも薫ちゃんの勇姿が見れることにはかわりないわ」
「そっか!そうだよね!薫ちゃんの勇姿が見れるならそれでもいいかも」
桐埜は思惑通りに動く詩織を見て、小さく吹き出した。
なんというか純粋というか、薫のことになるとすぐに周りが見えなくなってしまうのは詩織の悪い癖だ。
詩織は昔からそうであり、薫が中学の時に先輩から袋叩きにあった時には、薫の制止もふりきり魔法でボコボコにしたことがあった。
それ以来詩織に余計なことは報告しないようにしようと、薫は心に決めていたのだった。
「そうと決まればあとは説得するだけよ」
桐埜はそう言ったものの、詩織はどうやって薫と勝負の約束をとりつけるのか検討もついていなかった。
だが桐埜は検討がついているのか詩織の顔を見て、にっこりと微笑むのだった。




